ミオの強さ③
村長が村を出て少し、皆で一斉に木板を並べて作業に取り掛かる。
「そうだ!ヘンリーの分はどうするの?!」
「ヘンリーから聞いてはいるから、俺がやろう」
「そっか、それなら大丈夫か、僕もアストレアの分やるし同じか」
ウィリアムさんが頷きで返し、僕も作業に戻る。
「ほらミオもだぞ?」
「う~ん、じゃあこれで」
「…………ただの悪口じゃねぇーか」
皆が村長への感謝の言葉を板に書く光景を見つめる。
笑い合いながらする皆をみて村長が愛されてるのを実感する。
「お兄ちゃんもミオちゃんも書き終わった?」
「うんもう書き終わってるよ?」
「じゃあちょっとどいて、クララがひと手間加えるから!」
「ひと手間?分かった」
僕とミオが立ち上がり上からクララの様子を見つめる。
「はは!」
「うちだ」
クララが迷いのない動きで徐々に形を成していく。
そこには可愛らしい顔のミオが描かれていた。
横を見ると既に何人かの顔が文字の下に描かれてあった。
「クララは多彩だな~」
「母親譲りっぽいよ?」
ミオが前を指さし、反対方向のそちらに目を向ける。
マーガレットさんもクララと同じように可愛らしい顔を描いていた。
なるほどな。
最初に皆で書いた文字を見つめる。
【みんな大好き!お金持ちの村長の家!】
ウィリアムさんの方に近づき話しかける。
「ウィリアムさんがこれされたら…………やっぱり嫌かな?」
最初にウィリアムさんは乗り気じゃなかった、
村長もその可能性を考え不安になり問いかける。
「…………いや、そんな事はない、喜んでくれると思う、
どんな物よりも、価値がある贈り物だよこれは」
その言葉と笑顔に安心する。
「…………ウィリアムさん、一緒に見張りを手伝ってくれない?」
「見張り?」
「そう、アストレアが帰って来るまでの間、王国の方を一緒に警戒してほしいんだ」
「……詳しく聞かせてくれ」
正直僕も分からないことだらけ、
だけど僕なりの考えをウィリアムさんに伝える。
「なるほどな、そんな事をしていたのか、
それなら俺は日が出てる間見張りをしよう、夜目はきかないからな。
だが村長の家はどうしようか……」
「それなら僕が3人分働くよ!ミオも上で作業できるしさ」
「そうか、悪いな」
ウィリアムさんが東門へと歩き、慌てて止める。
「ウィリアムさんもしかして今から行くつもり?!」
「当然だろ?今問題が起こったらガルムは後悔するだろ?
その話を聞いた俺自身もな」
「…………お願いします」
「任せておけ!」
頭を下げてウィリアムさんを見送る。
あの人は本当に不器用で、本当に優しいな。
何かを見つけたら戻ってくるようにお願いしてある。
危険なのは変わらないが、
この村でこんなお願いを出来るのはウィリアムさんしかいない。
他に出来る事はあるだろうか?
考え続けるんだ。
罠でも作るか?、それとも街の近辺で見張るか?いや、でもそれは危険すぎる。
色々な考えが出てきては消えていく。
「ガルム君!この火の玉止めて!!」
エドワードさんの慌てる声。
声の方を向くとイグニスが木板に近づくところだった。
「イグニス!こっちに来い!」
僕の声に火が揺らめいてこちらに近寄ってくる。
「あの板燃やしたら本気で怒るからな?」
火が小さくなるのを見て反省はしてるのだと感じる。
「ごめんお兄ちゃん私のせいかも………」
クララが慌ててこちらに駆け寄りそんな事を言ってくる。
「どういう事?」
「スイレンもあの板に描いたの、
だからその子も描いてあげるって話しかけたら近くに寄ってきて………」
そう言う事か………。
僕はイグニスとの繋がりを断って火を小さくする。
「ごめんな、急に怒って、近くに寄らなければ見てていいぞ?
クララもありがと、イグニスも描いてあげてくれ」
「うん!行こ!」
クララについていく火の玉を見つめる。
本当に生き物だな……魔術との違いか。
「はぁ、難しい事がいっぱいだな」
「ガルムは充分よくやってるよ」
「うお!いつの間に」
「うちはガルムの影だから」
なにそれ、ちょっとかっこいいじゃん。
ドン!
ドン!
東の方向を睨みつける。
「なに……あれ?」
「ああ、あれは花火って言うんだよお祝い事で使うんだ、
方角的にベルシアの街で何か良い事があったんだと思うよ?」
ガルム
「え?」
今の…………。
分からない、分からないけど。
大事なものが消えてしまったような、
そんな感覚を覚える。




