ミオの強さ②
村が見えた瞬間目が見開かれる。
村の人が馬車に集まっていた。
「あれは!!」
「どうしたの?」
行・商・人!!
走るスピードを上げ一気に距離を詰める。
こちらに気づいた皆が悲鳴を上げ馬車から距離を開ける。
「ガルム目!」
ミオの声に少し冷静になり目を見せないように下を向き行商人と向き合う。
「ひいいいいい!!」
「ガルムの炎、怖がられてるよ?」
「あ、ああ…………。あいつじゃないのか」
声が違う。
あの時も顔を見てないから声だけで判断をしないといけない。
「はぁ、そうだよな、戻ってくるわけもないよな…………、
なぁあんたに聞きたいことがあるんだけど?」
「殺される~!!」
「逃げたら本当に死ぬ事になっちゃうよ?」
逃げようとした行商人にミオが脅しをかけ動きを止めてくれる。
僕は目と鼻の先まで行商人に近づき止まる。
「ガルムその人熱くて苦しそうにしてる」
「お?そうなのか、ちょっと離れてくれるか?」
「は、はい!!ひぃ!ーー」
「あんたに言ってないから」
イグニスに離れてもらい、下がろうとする行商人の襟首を掴んで止める。
「前にここに来た行商人に小金貨1枚分奪われたんだよね、僕」
「は、はぁ」
「王国の方に向かったのは知ってるんだけどどこに行くかとか知らないかな?」
「え、えっと分かりません、情報がなさすぎます!」
「なんでもいいんだ、なんでもさ」
若い男の声が震えてるのに申し訳なく思うが、
あのクソ野郎だけは絶対に許さん!
「ぎょ、行商人は必ず人がいる場所には通ります!でかい街にいれば定期的には訪れるかと!」
「ありがと………最後に聞きたいんだけどどこから来たの?」
「ベルシアの街からコンストロの国に行く途中です」
頭の地図を思い出す。
ベルシアは櫓から真っすぐの街だったな。
「その街で何か慌ただしい事とかなかった?」
「えっと、最近までは何やら兵が動きまくっていましたけど、ここ最近は…………」
「気になることがあるなら何でもいいんだ!教えてくれ」
「全然どうでもいい事ですけど、
ごろつきのような連中が集まってるのを見かけるなと、それだけです」
「…………ありがと、驚かせてすいませんでした」
頭を下げて村の枠を通り抜ける。
目の前にある巨大な火の球を通り抜けると驚いた顔の皆がいた。
「あ、買い物の邪魔しちゃってごめんなさい!
どうぞ続けてください」
「い、いやそれよりもガルムは魔法が使えたのか?」
ウィリアムさんの声にハッとなる。
(………いや、別に隠す事でもないよな?)
「ラインに教わって火の玉だけ出せるようになったところです」
「え?!昨日教わったばかりなんだろ?」
「嘘?!」
トーマスさんとエリザベスさんの声に驚きが混じる。
アルフレッド一家も驚愕をしてるがクララの両親だけは苦笑いをしていた。
うーん、
クララもだよって言うべきなのか?
ラインは親に言わなかったんだな。
「クララも出せるようになってるよ?」
「いやいや、そんな馬鹿な」
トーマスさんの否定にムッとしたクララが何か口を動かす。
それと同時に水の球がトーマスさんの周りに浮かぶ。
「うわ!」
「ほら!クララもできるもん!」
「どうなってるのよこの子達は…………」
エリザベスさんからそんな言葉が聞こえる。
収拾がつかなくなりそうだな。
パンパン!
手を叩く音で皆が村長を見る。
「ガルムとクララにも魔法の才能があると言うのは何ともめでたい事じゃ!
村長としても鼻が高い!!これからが楽しみじゃ、のう皆?」
「そ、それはもちろんそうなんですけど、あまりにーー」
「細かい事はええじゃろ?いい事なんじゃから素直に褒めればいいんじゃよ、
ほれほれ早くしないと行商人も行ってしまうぞ?」
その言葉にエリザベスさんを除く女性陣がいち早く反応して馬車へと向かう。
因みにミオが行商人の前に立っていて動けずにいたのは確認済みだ。
「ほら、クララもトーマスさん解放してあげなよ」
「む~、出せるもん」
「ご、ごめんね!あまりにも信じられない事だったからつい、」
「クララ買いたい物があったんだろ?早くしないと他の人にとられちゃうぞ?」
「そうだった!」
エド―ワードさんの言葉にスイレンを引っ込め馬車へと走り出す。
「トーマスさん娘がすいません!」
「いやいや気にしなくていいよ、私が悪いんだしね、
エド―ワードさんは知っていたみたいですね」
「そうですね、昨日妻と一緒にお披露目されたもので」
「この村には神様でもいるのだろうか?」
僕の後ろの炎を見てそんな言葉を吐くトーマスさんに肩を竦めるしかできなかった。
「ガルム君大丈夫なの?」
「はい?なにがですか」
エリザベスさんが心配そうに見つめてくるが言ってる意味が分からない。
「そんな大きい魔法だと魔力が尽きちゃわないのか心配で」
「うーん今の所大丈夫ですよ?特に何も感じないですし」
「そう?ガルム君は魔力量が多いのね」
「そう、なんですかね?」
そんな話をしているとヘンリーが僕に近づいてきた。
「ねぇ、昨日ガルムは夜にどこにいたの?」
「え?なんでそんなこと聞くんだ?」
「母ちゃんがガルムがいないって言ってたから、
それに東の方から走って来てたじゃん…………」
何でこいつはこんな暗い顔をしてるんだ?
てかなんて言おう、本当の事は言いたくないしな。
「魔法の練習をしてたの?」
「あーうん、そんな感じだな」
それを聞いた瞬間ヘンリーが森の方へ走り出してしまう。
ウィリアムさんの方を向くが苦笑いをしていた。
(なんなんだ?)
「さぁさぁ買い物しないなら屋根の修理を始めてくれ」
村長の号令で皆が動き始める。
「村長、1日でどんな感じ?」
「さすがに1日だとあまり進まんの、いずれバレるのは明白じゃからな」
「貴重品を集めるって事にすれば?うまい言い訳は思いつかないけど」
「ふむ、その方がよさそうじゃな、言い訳はこちらで何とかしよう」
頷きで返し村長の家の方まで歩く。
そっちは村長に任せるとして、木の板の山の方を見つめる。
村長が村にいないほうがやりやすいんだよな~。
Uターンして村長の元まで戻る。
「んどうしたんじゃ?」
「西の迷いの森の近辺に穴でも掘って隠すっていうのはどう?
理由は村長に任せるけど」
「そう…………じゃな、その方がいいのかもしれん」
「じゃあ村長は穴掘りよろしくね!」
「任されたわい」
「肉体労働が~とか言わないんだね」
「自分でするって言った手前そんな事は言えんじゃろ?」
笑顔で村長に託し今度こそ屋根の修理に向かう。
◇ ◇ ◇
「ガルム、お主には何処まで見えているのであろうな?
直感だとしても、頭で分かっているとしても大したものじゃがな」
アストレアちゃんがお主を特別に思う理由が分かってきたよ。




