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明美をぶっ殺す  作者: 麻青
第三部
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?歳・2(裏)

 ――どうやら宇宙人どもは、玲ちゃんへの干渉を浅い段階に留めたらしい。


 『彼女に極力手出ししないで』という私の要請は聞き入れられたようだ。無論、こちらの意識を自由に操れる以上、あちらを真に信用することなどできないが。


 しかし玲ちゃんに手を出さないのは、理屈としては不自然ではない。

 希少価値の高い研究材料が二つあるのだから、ひとつを徹底的に分析し、もう一方を手付かずのまま保管するのは、いたって自然なこと。理にかなった行動であり、だから玲ちゃんは当面無事なはず。……そう信じたい。



 だから……私はどうなってもいい。

 宇宙人どもは知能の高い私のほうに興味があるらしいし、すべての負荷を私が引き受ければ、玲ちゃんは無事なままでいられる。


 ――精神構造を分析するためか、私はありとあらゆる苦痛を受けている。

 単なる痛覚への刺激から始まり、喜怒哀楽の感情を強引に流し込まれ、先ほどは仮想空間で娘たちを惨殺されたりした。


 断言できる。これ以上の拷問などない。

 脳に直接苦痛を流し込まれているうえに、死んでそれから逃れることすらできないのだ。抗う術など皆無であり、おぞましいほどの肉体的、精神的苦痛をダイレクトに受け続けるしかない。


 想像を絶する責め苦だが、私には耐えられる理由が三つある。


 ひとつは、終わりが見えていること。

 聞けば色々答えてくれるので、連中の意図や目的、先の予定などは、おぼろげながら分かっている。時間の感覚がだいぶ違うらしく、聞き出すには苦労したが、連中はこれから一年間ほど検証を続けるつもりのようだ。

 だから、あと一年耐えればいい。少なくとも、終わりはあるのだ。

 事実かどうかはともかく、そう思い込めば多少は気が楽になる。


 二つ目は、私が苦痛を背負えば背負うぶん、玲ちゃんが楽になるということ。

 論理的に考えて宇宙人が嘘をついている可能性は小さいので、今の彼女は一切負荷のない状態にあるはず。つまり、私が苦痛に耐えることには意味があるのだ。


 私の心は、主に最後の理由によって支えられている。それは、死に際の記憶だ。

 宇宙の果てに放り投げられ、恐ろしいほどの絶望と孤独を味わっていた私のところに、玲ちゃんは来てくれた。彼女の存在は救いそのものであり、それによって脳がとろけるほどの幸福や安心感、そして底なしの愛を、私は体験したのだ。


 ――あの記憶があれば、私はどんな地獄にも耐えられる。


 宇宙人も私のそうした要素には着目しているようで、当面は記憶や人格を弄る予定はないらしい。いずれは検証のために手を加えるとのことだが、有用性が認められれば最終的には元に戻すつもりのようだ。

 ……信頼できるかどうかはともかく、ならば私は、玲ちゃんの記憶を支えに踏ん張るしかない。そうすればするほど、記憶の希少価値を高めることになるのだから。


 宇宙人たちは地球に赴くつもりのようだが、それは正直どうでもいい。

 死んでからどれだけ時間がたったのか不明だが、さすがにルウは生きていないだろうし、人類がどうなったところで私の知ったことではなかった。


 ただ、宇宙人は別の計画も持っており、そちらにはかなり興味がある。うまくいけば、私と玲ちゃんは新たな人生を始められるかもしれない。まだ不確かだが……それへの期待も、拷問を耐える原動力のひとつと言えるだろう。


 実験対象として生き返ったことは、今のところは不幸としか言いようがない。だが、これが第二の生に繋げられるのなら、この地獄にも十分すぎるほどの意味がある。



 ――待ってて、玲ちゃん。

 あなたは私を救ってくれた。今度は私が、あなたを救ってみせる。

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