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明美をぶっ殺す  作者: 麻青
第三部
163/174

??歳・77

 数千人の兵たちは、天幕手前に集合していた。

 そして空から降りてきた私を見て、彼女たちは一斉に地面に膝をつく。おそらく、そんな感じに出迎えるよう、レイランが前もって指示していたのだろう。


 兵たちの正面に降り立つと、すかさずルミレイが駆け寄ってきた。


「レイ様、もう黒の御柱に向かわれますか?」


「ああ、すぐに行く」


 他に用はないし、こうも見送りのために集まられてちゃ、それを無碍にするわけにもいかない。

 側にレイランもいたので、顎でこちらに来るよう合図を送る。彼女は弾かれたように走り出し、私のそばにきた。


「レイラン。私はこれから塔に向かうが、正直なにがあるかわからん。もしかしたら、長期間帰れなくなる事態も起こりかねない。だから、私が明日の朝までに戻らなかった場合は、先に帰っててくれ。食糧にも限りがあるしな」

 そう指示を出すと、レイランは眉根を寄せつつ慇懃に返事をする。


「……あなた様を伴わず帰還するのは心苦しいですが……承知しました。そのときはミドリ国へと戻り、先んじて部隊を解散させておきます」


「頼んだ」


 すると、ルミレイが私の正面に回りこみ、あらためて膝をついた。こちらを見上げる顔には、晴れ渡った青空のごとく爽やかな笑顔を浮かべている。


「レイ様。ようやく黒の御柱へと赴かれるのですね。あなた様の大切なものがあるという、神の領域へ」


「……そうだな。一年もかかってしまったが」


 この世界で目覚め、ルミレイたちと出会い、本当に色々なことがあった。

 明美の待つ塔に行くために、遠回りや寄り道をしすぎてしまったかもしれない。だが……その苦労と手間が、ようやく報われる。


 イクマの態度からするに、ヤツはろくでもないことを企んでいるのかもしれない。

 だが、それでも、どんな形でも、明美に再会できるのは素直に嬉しかった。


「いってらっしゃいませ、レイ様! 我ら一同、あなた様の帰還を心よりお待ちしております!」


 ルミレイはにっかりと笑い、そう言った。後ろの兵たちも次々とそれに続く。


「いってらっしゃいませ!」

「お早いお帰りを!」

「始祖様に栄光あれ!」


 場は歓声と拍手に包まれ、ここにいる誰もが私を快く送り出そうとしてくれていた。


 ……まったく。一匹狼だった私が、こうも盛大な見送りをされるようになるとは。

 自らの数奇な人生にいまさらながら苦笑しつつ、私は軽く手を上げて一同に謝意を伝える。


「では、行ってくる!」


 それだけ言ってスーツのスラスターを噴射し、一気に上空へと飛び上がった。

 そして眼前に聳える黒い塔を眺め、あそこにいるであろうヤツに向けて呟く。


「――待ちくたびれたか? でもお前が言ったんだからな、子供たちを助けてあげてって。私はその約束を果たした。だからいい加減、お前が隠してることを教えてもらうぞ」


 瞬時に加速し、私は塔へと全速力で向かった。

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