??歳・62
巨人たちは私が入った箱を小走りで運び、四時間ほどかけて大陸中央の台地へと辿り着いた。
目の前には岩の絶壁が聳えていたが、正面前方の壁面は岩が削り取られたかのように真っ黒で平らだ。ちょっとしたビルほどの大きさの面積であり、おそらくあそこが内部への扉となっているのだろう。
巨人たちが近づくと案の定、その黒い壁面が真上へとスライドしていき、道が開けた。
事前に聞いた話だと、こうした入り口は台地外周に定間隔で存在しているらしい。だがステージセット所属の者以外を通すことはないから、普通の人間だけだと、どうやっても中へ入れないのだとか。
ちなみに、外の絶壁経由での侵入も無理だ。台地の上空――壁の終わり際から塔にかけては、結界のようなものが張られており、それに触れた者は一瞬で焼き尽くされるとのこと。
巨人たちの話を総合するに、おそらくステージセット上空は常にセンサーで監視されていて、それに引っかかった物体に高熱レーザーかなんかが照射されるのだと思われる。
私たちが台地の内部に入ると、すぐに門は閉じた。
正面はすぐに行き止まりだったが、外壁沿いに階段が上に続いている。巨人たちはそちらに進み、私の箱を水平を保ったまま上へと向かう。
――造化六花の中央部には、六角形の巨大な台地が聳え立っている。
その全域がステージセットの支配領域だが、施設のほとんどは北部に集中しているらしい。ピザカットのように扇形に区切られた範囲で、その内部は大きな壁によってさらに三つの区画に別れているのだとか。
外側から『外周区画』、『中央区画』、『中枢区画』と順に並んでいて、アマリリスたちは外周区画より奥には行けない。出発前に彼女が言っていたように、中央区画から先はゲートキーパーが派遣した人形兵によって私は運ばれることになるだろう。
暗い通路を延々登り続け、しばらくして屋外に到達する。階段を登り終え、台地の上――外周区画へと出たらしい。
箱の各面にある穴から覗くと、前方には平らで広大な空間が広がっていた。
地面はコンクリートかなんかで綺麗に整備されており、円筒状の一軒家ほど大きさの構造物が、定間隔で延々と並んでいる。あれらは巨人たちの家でもあり、武器や物資の貯蔵庫でもあるとのこと。
構造物群のはるか彼方には、高そうな壁が左右に広がっていた。おそらくあれが、外周区画と中央区画を区切る仕切りだろう。
上を見ると、赤い光線の網目が上空をくまなく覆っている。巨人たちが結界と認識しているものであり、あれに触れた瞬間、光学兵器によって攻撃されるのだと思われる。
明らかに文明レベルの変わった景色に圧倒されつつ、私は運ばれ続けた。
箱の穴から周囲を観察しながらも、一切気は抜かない。すでにステージセット内部に入り、ゲートキーパーのお膝元にいるのだ。次の瞬間攻撃を受けても、なんらおかしくないだろう。
私は激重バットを握り、体に力を込めつつ、臨戦体勢を維持し続けた。
それから三、四時間ほど移動し続け、巨人たちはようやく目的地に辿り着いた。外周区画と中央区画を仕切る壁、その唯一の出入り口である門の前だ。
アマリリスらは私が入った箱を地面に下ろすと、どこかに向かって大声を発した。
「レイ族の始祖を、ゲートキーパー様に献上するために連れてきた! 引き取っていただきたい!」
すると、中央区画への門はすぐに開いた。中から普通サイズのアケミ族たちが大勢出てきて、一糸乱れぬ動きで私の箱を取り囲む。異様に統率された動きからして、人形兵に違いない。
そいつらは箱を持ち上げ、移動を開始した。巨人たち以上に滑らかな動きだが、大勢に取り囲まれているためか、箱の真上以外の穴から周囲が見えない。
おかげで、しばしの別れとなる巨人たちの姿を目に納めることもできず、すぐに門は轟音とともに閉じてしまった。
もう、周りに味方はいない。
私の箱を運んでいるのも、この先で出会う相手も、すべてが敵だ。
……その事実を認識したからか、緊張感が一気に増してきた。なんだかんだで、私を運ぶ巨人たちの存在は心強かったと、いまさらになって気づいたのである。
まあいい。一人で戦うことは慣れている。
私は心を固め、そのまま不気味な人形兵たちに運ばれ続けた。




