??歳・52
第一次事務官選抜試験は、ミドリ国の五つの主要都市にて同時開催される運びとなった。
受験資格は満六十歳以下で大病がないことのみであり、経歴、生まれ、相似値(容姿)、犯罪歴などは一切不問。
費用は基本無料だが、ひやかしや記念受験防止のため、一次の筆記試験で一問も正答がなかった場合は民の平均月収程度の受験料を徴収するとした。
ゆえに、今回作成したテストに選択肢はない。すべての問題が、筆記によって答えを書き込む方式となっている。半数は計算問題だが、長文による回答を求める問いも数多くあるため、採点はすべて私が行う。
さすがに相当な時間がかかるだろうが、それも未来のための投資のひとつだ。仕方ない。
また筆記試験は、満点を取るのがほぼ不可能な構成となっている。問題数が大量にあるため、どうやっても制限時間以内にはすべて解けないのだ。世紀の天才を探すことが目的の試験なのだから、あえて上限を高く設定させてもらった。
ゆえに問題処理能力だけでなく、取捨選択の判断力さえテストでは問われる。
身内に前もってこの試験を受けてもらったが、最高得点はレイランの352点だった。満点は500点なので、その結果が試験の難解さを物語っていると言えよう。正直、私がテスト作成の記憶を消して挑んだとしても、450点以上を取れるかどうかは怪しい。
――そんな超難関テストに挑み、高い結果を残せる者がいるのか。
楽しみでもあり、実のところ不安でもあった。
例題として事前配布した問いが難しかったためか、集まった受験者は全国で三百名弱だった。その九割ほどが大府在住の人間であり、ミドリ国の知識層の一極集中振りが伺える。
送られてきた大量の答案を、私は空き時間を使って手早く採点していった。ひとつを終わらせるのに平均十分ほどかかったので、単純計算だと合計五十時間を費やしたことになる。
まあ、私は睡眠がいらないので、時間のやりくりはさして難しくなかったが。
一次試験の合格ラインは300点だが、それをクリアしたのはたった三名のみだった。それぞれの点数の内訳は303点、316点、そして443点。
つまり、私に匹敵しうるほどの天才が、一人だけいたのである。
採点時の私はそれだけで喜んだが、しかし秀でた頭脳だけでは私の側近は務まらない。二次試験では面接によって人格などを測るので、その結果次第では300点台の二人を選ぶ可能性も十分あるだろう。
というわけで、一次試験を通った三名を万象院に呼び、私の仕事部屋にて面接を行う運びとなった。
面接の内容は、簡単な質疑応答や雑談、そしてサファとの対面だ。
サファには前もって用意した挑発のセリフを、受験者に言い放ってもらう流れになっている。ティレあたりだと、それだけで殺意が沸いてサファに襲い掛かる――というレベルのことを。
無論、サファの隣には私がいるので危険はない(たぶん)。
面接は点数の低い順に実施したのだが、最初の二人は現在進行形で大府の局に勤める文官だった。
一人目は選民思想が強く、相似値や能力の低い者を人間扱いしない人格だったので、除外。
二人目は無難な性格だったものの、サファの悪口にすぐさま激昂したため、こちらも落選。
というわけで、あとはずば抜けた高得点を取った本命を残すのみとなった。彼女もダメなら、妥協して一次試験の合格ラインを引き下げるしかないだろう。
部屋には、私とルミレイがソファに隣り合って座っている。その対面に受験者が座り、基本的にルミレイが色々問いただしていく形で面接は進行していく。
で、それが済んだ後にサファに来てもらって、アケミ族への対面テストを課すのだ。
――この流れで、すでに二人落とした。
私並みの頭脳を持つ三人目がいい性格であればいいのだが……さて、どうなることやら。
部屋の引き戸が開けられ、オボロがぼそりと言う。
「……受験者をお連れしました」
その脇を通り、メガネをかけた女がガチガチな動きで入室してきた。彼女は頭を深々と下げ、緊張した様子で軽く自己紹介をする。
「お、お目にかかれて光栄です、始祖様。私はソルノル・メノウと申しまして、その、普天屋にて写本の仕事をしている者です」
事前に忍に調べさせたので、受験者に対しては個人情報はもちろん、人間関係すらもほぼ把握している。
しかしメノウの特徴的な容姿を見て、そうしたことは一旦頭から消えた。見覚えのある人間だったのだ。
「……ルミレイ、覚えてるか?」
「ええ、記憶に残っておりまする。確か、レイ様と初めて大府にやってきた日に、道で……」
こちらの妙な反応に、メノウはきょとんとしている。
「とにかく、座るがよい」とルミレイが言ったため、彼女は慌ててソファに腰を下ろした。
――彼女の顔は、明らかに私と違った。
目じりの下がった垂れ目で、瞳は青っぽく、唇はぽってりしており、輪郭もやや柔らかい。レイ族にしては、私にあまりにも似ていないのだ(とはいえ全体的には似通っているので、私の母や姉ほどにはそっくりだが)
ルミレイが言ったとおり、私は最初に大府に来た日にメノウと会った。いや、見かけたと表現したほうがいいか。
――レイ族の美醜の基準がわからず、すれ違った人々を適当に指名して、美人か否かをルミレイと警邏隊のセセナに判定してもらっていたとき。
そんな無礼極まりない行為をしながら道を歩いていた最中に、私たちはメノウを発見したのだった。
当時ルミレイは、「人生で出会った中でも、一、二を争うほどの不細工」みたいな評をメノウにつけた。が、私の感覚だとメノウの顔は相当に美人であり、そうした齟齬に戸惑ったのをよく覚えている。
だからこそ、再開した直後に半年以上前の出会いをすぐ思い出したのだ。
「実は、私たちは一度会ったことがある。わかるか?」
あえて問いかけると、メノウは控えめに頷いた。
「は、はい……。その、お山の始祖様の像が、お光りになった日ですよね。当時は普通の巫女様の仮面をつけておられたので、ここで触れていいものかどうか迷ったのですが……」
やはり記憶力がいいし、洞察力もある。そしてメノウは、やや苦笑気味に笑った。
「私なんかとの出会いを始祖様に覚えていただいて、とても恐縮です。醜い顔で生まれて、こんなに良かったって思ったことはないです」
「……ふむ」
私には普通に色っぽい美人に見えるので忘れそうになるが、レイ族の感覚だと彼女は凄まじく不細工なのだ。おそらく、相当に辛い人生を歩んできたはずであり、それが自己評価の低さに繋がっているように思える。
ともあれ、話を聞いてみるとしよう。
事前情報から鑑みるに彼女に決めて大丈夫だと思うが、人格に致命的な欠陥がないとも限らない。
私はルミレイに目配りし、ソファの背もたれに背を預ける。
「では、メノウよ。始祖様と我、ルミレイが、おぬしをこれより見定める。様々な質問をするゆえ、心の赴くままに答えるように」
「はい、わかりました」
半年前の初対面時はメノウの顔に不快感を露わにしていたルミレイだが、今はそうした様子は見られない。私と行動を共にして、成長したのだろう。
ゆえに、私は安心してルミレイに面接を任せ、成り行きを横から見守ることにした。
「――で、母が言ったんです。『お前はあまりにも酷い顔だから、普通には生きられない。だから欠点を補って余りある長所を身につけなければ、悲惨な人生を送ることになる』って。そんなわけで、学業に力を入れたんです。幸い物覚えはよく、新しい知識を得るのが好きだったので、勉強は苦ではありませんでした。蓉書院にいい先生がいて、私に親身になって色々教えてくれたのも、幸運だったかもしれません。――というのが、これまで勉学に打ち込んできた経緯と理由です」
……思ったとおり、メノウの容姿は相当なハンディキャップだったらしい。
母親に「普通に生きられないほどの酷い顔」と言われて、幼い彼女はどれだけ絶望したか……察するに余りある。
だが、境遇に腐らずに自分の道を見つけ、それに邁進してきたのは立派だ。
それはひとつの成功体験であり、マイナスをプラスである程度帳消しにできたからこそ、メノウは捻くれずにここまでやってこれたのだろう。
「ふむ、おぬしの幼少期のことはわかった。で、なにゆえ今の職業に就いたのじゃ? 写本など、その豊富な学力と知識をいかせる仕事ではあるまい」
「実は、最初は普通に役所に就職する気だったんです。当時もそちらには学科試験があって、それに合格さえすれば雇用されるという話でしたから。……でも、結局は容姿のせいでダメになっちゃって。『その顔は周りを不快にさせ、やる気を損なわせる。だから学力を満たしていようとも雇えない』――というのが、採用担当者の方の言い分でした」
「……なんとも狭量な連中じゃな。採用条件を後出しで追加したのも、けしからん」
「……そうかもしれません。でもなんであれ、その人たちが私に強い拒否感を抱いていたのは事実です。無理にごねてそんな職場に入ったところで、辛くなるのは私自身だし……だから、割とあっさり諦められました」
そういう気持ちの切り替えは大事だ。
世の中には他人を極限まで恨んで、自分の人生をぶち壊してでも復讐しようとするやつがいる。考えるまでもなく、そういう人間の行き着く先は悲惨で、誰も幸せにならない。
私みたいなケースは極めて稀であり、だからあっさり恨みを捨てられたメノウは、それだけで立派と言えよう。
「それに、運良くその後、大商人兼発明家のサイノ先生に拾ってもらったんです。『自分も容姿で苦労したから、君の気持ちはよくわかる』、って言っていただけて」
「大商会普天屋のサイノか。なかなか手広く商売をしておるようじゃな。事業規模が大きくなりすぎて、近年は帝に睨まれていたとのことじゃが」
「……レイカン様は、身分を重視される政策を推進されていました。なので、世紀の天才であるにも関わらず相似値の低いサイノ様を、よく思われていなかったのでしょう」
「ついでに聞かせてくりゃれ。おぬし、レイカンをどう思っておる? 身分差を推し進めたとして、憎んでおるのか?」
「……憎んでない、と言ったら嘘になるかもしれません。でも、それよりも敬意のほうが大きいです」
「それは何故じゃ」
「レイ族の社会は先代の失政で大きく荒れましたが、レイカン様はそれを十数年で回復させました。……これは、本当に凄いことです。卓越した政治手腕と、厳しい人民統制がなければ不可能であり、並大抵の為政者にできることではありません。私は冷遇される側でしたが、今の平和で安定した社会の恩恵を大いに受けています。総合すれば益を得ているわけであり、ゆえに……レイカン様には感謝と敬意を向けるのが筋かと」
メノウの話を聞き、ルミレイは「殊勝なやつじゃのう」と感心している。
私も同じだ。相手の心を読み取る力があるから、メノウが偽りのない本心を語っていると理解できるし、だから本当に偉いと思う。
酷い境遇にありながら、その元凶の一端でもある相手を認めるというのは、よほど性格が良くなきゃできない。昔の私がメノウの立場だったら、高確率でレイカンをぶっ殺しにいってただろう。
「話を戻すが、サイノとやらに雇われた後、おぬしはどんな仕事を任されたのじゃ?」
「一応、写本の仕事が主ではあります。けど、実質的にはサイノ様の助手みたいな立場で、会社の経理計算や化学実験の統計と分析、さらには初学者向けの学術書執筆など、多種多様な仕事を任されてきました。私の能力を十二分に発揮できる職場であり、おかげで毎日が充実してて、だからサイノ先生には本当に感謝してるんです。今回のことも、先生に背中を押されければ応募できなかったかもしれません」
なるほど、いい出会いがあったらしい。
メノウは一度深呼吸を挟み、続ける。
「なので……この場で訴えるのは筋違いなのですが、サイノ先生の事業を国としても支援して頂ければ、幸いです。本当に、始祖様の国作りに多大な貢献ができると思いますので」
興味深い話なので、私は口を開いた。
「いいだろう。これまでは開発を私が主導するばかりで、民間のそういう動きには目を向けてこなかった。しかし、サイノとやらの活動はなかなか面白そうだ。良ければ、面接が終わった後に引き続きお前から話を聞きたい」
そう言うと、メノウはパッと顔を輝かせた。
「ほ、本当ですか!? ありがとうございます、始祖様! そう言っていただけるだけでも、苦労が報われたような思いです……!」
――彼女は本当に、心から感謝を述べている。
よくもまあ、酷い境遇で育ちながら、ここまで真っ直ぐな心根を持てたものだ。
『誰にも負けない武器がある』というだけでは、こうはならない。むしろ他人を見下す方向にいってしまうだろう。
察するに、おそらくは学校の先生やサイノといった良識ある人間との出会いが、メノウに人を信じることを教えたのだ。それが持ち前の性格の良さと連動し、今の素直で誠実な彼女の人格を形成したのだと思われる。
ともあれ、そのようにして質疑応答はおよそ四十分ほど続いた。
メノウの性格や思想を推し量るため、色々な角度からの質問をぶつけ、答えてもらった。
――結果、問題なし。
真面目で誠実で、他者に対して労わりと慈しみを持ち、特に問題点も見当たらない。手放しで一緒に仕事がしたいと思える人間だったのだ。
が、まだもうひとつ、肝心のテストが残っている。
というわけで、私はオボロに合図してサファを呼んでもらった。
「いやぁ、どーもどーも。私はアケミ族のサファです」
部屋に入ってきて私とルミレイの間に座ると同時に、サファは緩い口調で挨拶をした。
その顔を見て、メノウは目を見開く。レイ族の美醜感覚だとアケミ族は不細工の極みであり、つまりメノウは自分より醜い人間を始めて見たのかもしれない。
目の前の相手の動揺など気にせず、サファは話を続けた。
「さて、突然ですがメノウさん。あなたは始祖様が大事ですね?」
「え? ああ、はい、もちろんです。尊いお方ですから、それはもう自分の身よりも……」
「いい答えです。ふー……よしっ」
気合を込め、サファは一世一代の演技を披露した。真横を向き、正面の私に向かって、獣のように襲い掛かる仕草をして見せたのである。
「ガオー! 始祖様を食べちゃうぞーっ」
幼稚園児並の演技だが、前の候補者はこれでブチ切れた。爆発的に殺意が膨れ上がり、鬼のような形相でサファへと飛び掛ったのである。
オボロが瞬時に体を拘束したため、誰も怪我することなく済んだが、あの豹変っぷりはサファのみならず私も怖かった。控えめに見てもティレクラスの殺意であり、どんなに優れた人格と能力を持っていても、あれでは私のそばにおけない。
そして肝心のメノウの反応は――ない。
サファを見て口をあんぐり開けているが、強い殺意は抱いていないようだ。
サファは恐る恐るメノウを見るが、襲い掛かってこないことを確認して、さらに私に抱きついてきた。前もって言い含めていたとおりの動きであり、ついには私の首筋に噛み付こうとする。
しかし、それでもメノウは反応しなかった。彼女はサファではなく私を見ており、ゆえに視線が私とがっちり合う。
一見すると、始祖と、それに危害を加えようとしているアケミ族。
しかしその実体は、まったく無反応の前者と、子供のように滑稽な動きと表情の後者。
そうした状況を鑑みれば、目の前で行われているのが微塵も危険性のない演技だと、すぐにわかるだろう。
メノウは本能に乱されることなく、その事実を理性的に見抜いたのである。
自分の何が試されているのかを理解し、メノウはじっとし続けた。
――合格だ。
アケミ族への殺意は極めて薄く、頭の回転も速い。彼女になら、私の側近として重要な仕事を任せられるだろう
……と、サファが本気で私の首に噛み付いているのに気づいた。普通の人間なら激痛を感じるレベルであり、私は彼女の首を掴んで押しのける。
「おい、お前が本能にやられてどうする」
「ガブガブ……ガ……はっ! わ、私はなにを……」
こちらに思いっきり噛み付いてた事実を理解し、サファは平身低頭で陳謝した。
「す、すいません、レイさん。あまりにおいしそうだったんで、つい……」
「……やれやれ。ま、今日は頑張ってくれたから、ご褒美に晩飯でふりかけを出してやる。それで我慢しろ」
「ふりかけ!? やったーっ!」
私の髪の毛をすりつぶし、それを白米などに振り掛ける。これだけでアケミ族は涙を流すほどに感動し、メシを貪り食うのだ。
かつては明美がやっていたことであり、エメやサファにはちょいちょい提供してやっていた。とはいえ、あんまり味を覚えられても怖いので、たまにしかやらないようにしているが。
まあ、サファのことはいい。今重要なのは、メノウに結果を言い渡すことである。
なので私は彼女に向き合い、さらりと言った。
「メノウよ。単刀直入に言うが、お前で決まりだ。これからよろしく」
「えっ」
心の準備ができていなかったようで、彼女は驚愕の表情を浮かべる。
「あ、あの、候補者は三名のはずで、他の方は……」
「先に面接をしたが、どちらも問題ありでダメだった。で、お前にはずば抜けた頭脳があるし、一方で欠点はまったく見当たらない。アケミ族への適性もある。というわけで、文句なしで合格だ」
呆気に取られているメノウに、ルミレイも声をかける。
「自信を持つがよい。おぬしはレイ様に認められたのじゃ。これ以上名誉なことはなく、ゆえに卑屈な態度を取るのは許さんぞ」
強い口調で言われ、メノウは仰け反るように怯んだ。
「……す、すいません。その、まさか私が選ばれるとは思ってなかったので。それに、始祖様やルミレイ様のようなお美しい方と並んで仕事をするというのが、なんというか……引け目を感じてしまって……」
「はぁーっ」とルミレイはあからさまな溜め息を吐いた。
「おぬしの目は節穴か? 正面に座る、アホ面をしているアケミ族を見よ。こやつとて、ある意味ではレイ様の側近。その醜さに比べれば、人間の顔をしているだけおぬしは遥かにマシじゃ。なのに、引け目を感じるなどと抜かすか」
「ひっどい言い草だなぁ、ルミレイちゃん」
アホ面と言われたサファが、腕組みをして抗議する。
「アケミ族の私からすりゃあ、君ら全員ブサイクだからね。ジャガイモ同然。神々しいジャガイモがひとつと、後は小汚いジャガイモが三つ。それが私から見た、君らレイ族四人の顔」
サファからすれば、私は例外として、ルミレイ、オボロ、メノウの三人は同じ顔に見えるらしい。そして、その事実はメノウには衝撃的だったようだ。
「わ、私とルミレイ様が同格なのですかっ!?」
「そうだよ~」
メノウの切実な問いかけに、サファはのほほんと答える。ついでだから私も続いた。
「一応言っておくが、私の美醜の価値観はレイ族ともアケミ族とも違う。信じられないかもしれないが、私にとってメノウはかなりの美人だ。少なくとも、この世界で出会った人間の中では一番のように思える」
もはや、メノウは開いた口が塞がらない様子だった。
これまでの常識が百八十度ひっくり返るようなことを次々と言われ、思考が限界に達してしまったらしい。
なので私はメノウに近づき、その肩に手を置いて、伝えたい事実をストレートに言った。
「お前の顔を見ていると、気分が良くなる。だから、これからはずっと私のそばにいろ。そうすればもう、二度と容姿に引け目を感じることなどない」
メノウは眼を見開いてこちらを見つめ、唇をわななかせ、やがて涙を流した。
そして綺麗な顔をぐちゃぐちゃにし、深々と頭を下げる。
「……こ……こちらこそ、よろしくお願いします。ぜひあなた様のそばに、ずっと置いてください……」
そうして、私の新たな側近が決まったのだった。




