表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
明美をぶっ殺す  作者: 麻青
第三部
112/174

??歳・26

 外に出ると、足元に銀色のもやもやが溜まっていた。驚いて周囲を見渡すと、家の庭や道の石畳も光り輝く霧で覆われており、地面が見えない。

 これは……風に吹かれていた銀の粒子が滞留しているのか。


 とりあえず、仮面を外して腰の帯に吊るした。この時間の屋外に人はいないはずだから、つける意味はないだろう。

 吐く息は真っ白で恐ろしく寒いが、風はまったく吹いていない。無風だ。だから粒子が流されずに留まり、こうして地面付近に溜まっているのだと思われる。


 試しに銀のもやに手を突っ込んでみるが、特に冷たさは感じない。

 よくわからない物質だ。質量があるんだかないんだか分からない妙な挙動も、私の物理や化学の知識では説明がつかない。

 ……まあ、今は深く考える必要はないか。害はないようだし、そういうもんだと思っておこう。


 時間は深夜だが、周辺の明るさは昼間とまったく変わらない。

 頭上には群青色の空が広がっていて、雲は白く輝き、太陽はさんさんと地上に光を投げかけている。空を横切っている惑星の輪がなければ、地球の昼と遜色ない光景と言えるだろう。

 『一日の半分は気温が急激に下がる』という現象がなければ、この世界の昼と夜は区別がつかないのではなかろうか。


 と、造化六花特有の夜をどうにか受け入れ、気を取り直して歩き出す。なにも、夜を体験するためだけに外に出てきたわけではないのだ。


「……さて、どうするかな」


 白い息とともに、心の内を吐き出す。

 クソ寒いというのに、やはり連中はいた。あちこちの方角、様々な物陰から、私がいた家を監視している。

 こちらから直接赴くか、それともあちらが仕掛けてくるのを待つか。

 私が今微妙に悩んでいたのは、その選択肢だった。



 ――六、七時間ほど前の、谷の闇市からシャン先生の家に向かっていたとき。


 忍たちは、当時ももちろん私を尾行していた。が、そのときの連中には、以前になかった明確な違いがあった。離れた場所に潜んでいたり、一般人を装って歩いている忍たちは、ほのかな殺意を私へ向けていたのである。


 連中はおそらく、私の決意表明を聞いていたのだと思う。帝に代わってレイ族を統治するという、野望とも言える意思表示を。

 帝を第一に動くという忍ならば、その時点で私を敵認定してもおかしくない。

 そのため、私は先生の家に向かっているときは周囲にあからさまに気を配って見せたし、寝込みを襲われないよう護衛も増やしもした。


 対策が功を奏したのか、忍が襲撃を仕掛けてくることはなかった。しかし、さすがに護衛なしで屋外にいれば、何かしらの接触はしてくるだろう。

 そんなわけで、一人でこんな時間に外へと出たのである。


 ――忍たちの動向は気になるが、それと同じくらい不思議なことがある。自分の感覚の、異様な鋭さだ。

 今の私は、目が合ったり肌が触れ合ったりしただけで相手の感情がわかるし、雑踏の足音ひとつひとつを明確に聞き分けられる。身を隠す忍たちの気配を探ることで、ようやくそうした五感の性能をつかめてきた。


 死角に無音で潜んでいる相手を直感で見つけられたりと、洞察力や感覚の鋭さでは説明つかないこともできるのだが……これはよくわからない。勘とか第六感が優れている、としか言いようがない。

 足元の銀色の霧のように、私の理解できない物理法則もある世界だから、魔法的な力でもあるのだろうか?


 まあ、なんでそんな超人になってるのかはともかく、色々役立つのは確かだ。そして自分で直に得た情報だから、信頼もおける。

 ゆえに、忍たちが抱いている私への殺意は、勘違いなどではなく本物なのだろう。



 私はとりあえず歩き出した。銀色の霧が垂れ込める無人の街を進み、谷の方へと向かう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ