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明美をぶっ殺す  作者: 麻青
第三部
111/174

??歳・25

 学校教師の家は、谷から少し東に進んだ山裾の中級住宅街にあった。


 歩いて十五分ほどで到着し、戸を叩くと、ちょうど本人が出迎えてくれた。八十二歳というかなりの高齢で、ちょっとショックを受けるくらい皺くちゃな顔をしている。私も寿命を全うしていれば、きっとあれくらいの皺やらたるみやらをこさえていたのだろう。


 始祖の身分は隠したまま「政治や行政の基礎知識を学びたい」と申し出ると、老女は二つ返事で快諾してくれた。そして家の中に入れてもらい、居間にて彼女の講義を受け始める。

 また、『ハナタ・シャン』という名前を教えてもらったが、明らかに年上の相手を呼び捨てにするのは少々抵抗があったので、その人のことはシャン先生と呼ぶことにした。



 授業が始まって十分もかからず、私はこの人を「当たりだ」と断定する。

 老齢とはいえ、シャン先生の口調は明確であり、説明も要点を捉えていて非常にわかりやすかったからだ。こちらの理解度を確認し、それに合わせたレベルと密度の教え方をしてくれるから、教師としての技量も申し分ないと言えるだろう。


 私はこの際だから、今後必要そうになる知識を全部シャン先生から仕入れることに決めた。知識が豊富で、教え方も抜群に上手いこの人に、今まとめて教わるのが最も効率がいい。


 なので、授業が始まってから一時間ほど経過したあたりで、授業を延長するべく家に泊めてほしい旨を先生に伝えた。彼女はまたも快く承諾してくれたので、ルミレイ共々、お世話になることが決まる。


 ただ、夜の警備に不安があったので、護衛の一人に屯所に戻って増員を呼んでもらった。少し懸念があったので、「少なくとも十人、多いければ多いほどいい」と注文をつけたため、二十三人もの兵士がシャン先生の家へとやってきてくれた。これだけの人数がいれば、敵も数人の手勢でこの家を攻めようとは思わないだろう。



 日が回って夜が訪れ、外では冷気の風が吹くようになっても、授業は続いた。

 眠気に襲われて夢の世界に旅立ったルミレイを横に寝かせ、私はシャン先生の講義を貪欲に聴き続ける。


 日付が変わったあたりで先生の体力に限界が訪れたため、そこで授業を一旦取りやめにした。だが先生に休んでもらいつつも、私はまだ寝る気はなかった。

 用意してもらった寝床でルミレイが熟睡していることを確認し、私は家の玄関へと向かう。


「む。謎巫女様、まさか外出される気で?」


 服のマントを広げている私を見て、玄関前を見張っていた兵士が問いかけてきた。


「ああ、所用があってな。でもって、極秘に動きたい案件だから護衛はいらない。居間にいる兵士には言ってきたが、もし私を追いかけようとするやつがいたら止めてくれ」


「りょ……了解しました。しかし、外は水が凍るほどの寒さになっています。お気をつけて」


「わかった、ありがとう」


 彼女が玄関の鍵を外し、ドアを開けてくれたので、私は流れ込んでくる寒気に逆らうように外へと出た。

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