??歳・21
屯所には例の隊長――ライリュウ・セセナがいて、私たちを大喜びで迎えてくれた。
聞けば彼女たち警邏隊は、さっきの私の「山の像について巫女に尋ねるな」という声明を街中に広め、その指示を厳守するよう民に命じていたらしい。
巫女の親密なイメージを崩しかねず、少々申し訳なくなったが、ルミレイ曰く「まったくもってお気になさらず」とのこと。
寝床の相談をしたら、建物内のどこを使ってもいいとすぐに快諾を貰った。なので、『建物の外壁から最も遠い場所』というリクエストをして、二階中央の資料室に案内され、そこに布団を持ち込んでもらう。
普段は施錠されている場所であり、人の出入りはほとんどないらしく、資料室はほこりだらけだった。セセナたちがざっと掃除をしてくれたのでだいぶマシになったが、窓がないこともあり、古紙独特の臭さはなかなか抜け切れない。
おかげで、ルミレイは相当不満そうだった。そこで寝るのを決めたのが私でなければ、きっと文句を言いまくっていただろう。
ルミレイに布団の用意をさせている間、私は部屋の外でセセナに忍についての話を聞いた。
彼女によれば、忍とは古来から帝の一族が用いてきた私兵集団で、公的な組織ではないらしい。だから国や始祖に忠誠を誓っている警邏隊(警察みたいな治安維持機関)とは、組織の存在目的が違う。帝が命じれば、民を不法に傷つけることも、始祖に不敬を働くことも、まったくもって厭わないらしい。
私が護衛の忍に感じている不穏さについては、あえて伝えなかった。
勘違いかもしれないし、正しかったとしても、セセナらに過度の対応をさせたら死人が出るかもしれないからだ。
もちろん、最優先すべきは自分の命だが……それについてはどうにかする自信がある。だから、いつもそばにいるルミレイの安全さえ確保できれば、襲撃されてもなんとかなるだろう。たぶん。
資料室に戻ると、すでにルミレイが布団の上で寝息を立てていた。
中途半端な姿勢で、毛布も被っていない。たぶん、力を抜いて横になったら、そのまま不意に眠ってしまったのだろう。
彼女の体を静かに動かし、しっかり毛布をかけて寝かせる。ふと、碧をこうやって寝かしつけたことを思い出した。
……ずいぶんとまあ、あのときから遠くに来てしまったものだ。いろいろな意味で。
私の布団は、ルミレイの布団とぴったりくっつけられていた。こちらのほうに余分に毛布が敷いてあったが、そのぶんをルミレイに被せ、音を立てないよう自分の布団へと入る。
眠気などまったくなかった。が、自分に眠れと命じたら意識はすとんと落ち、暗闇へとあっさり沈んでいった。




