1人目に出会ってしまった
記憶を整理しよう。
乙女ゲームの世界に転生した。しかもそこにでてくる悪役令嬢として。
ん、ちょっとまった。たしかこのゲームって妹が「それでね。このゲームの良いところは、最初攻略対象ってすごく紳士で優しいんだけど、仲が深まっていくとヤンデレの本性を出してくるの。その束縛感とちょっとした恐怖感?がいいの。普通の乙女ゲーにはない感じ!」とかいっていたような。
ゲームとしてならヤンデレもいい(?)のかもしれないけど、現実世界でそれをやられたら怖すぎるし、そもそも前世の男として過ごしてきた記憶があるのに、男性相手に恋愛とか考えただけで気持ちが悪い・・・。
とりあえず、武術を学ぼう。何かあっても自分の身を守れるように。
そして、攻略対象とは距離をおいて、静かに生きよう。
こちらから接近しなければ何も問題はないはず。
そう思っていた時期が私にもありました・・・・。
私の生まれた高柳家は日本を代表する名家の一つであり、上流階級同士のパーティにも子供ながら参加させられる。その中で、愛想良く挨拶するのにさすがに疲れたので、メイン会場から廊下に抜け出して、周りを歩いていると、一人の子を複数人の子供で囲んでいじめているのが見えてしまった。
さらに、いじめられている子が、こちらの方を助けて欲しそうな目で見てきました。うん、これは無視すると自分の中で後味が悪いと思い、走って近づき、中心の子を殴ろうとしていた子を合気道の技で投げ飛ばし、こう言った。
「一人を複数人でいじめるとか、それでも男なの?」
すると、投げ飛ばされた子が、
「いや、だってそいつからいじめてくれって頼まれたから・・・。」
というと、周りの子たちも口々に
「よくわからないけど、そうしてって頼まれた。」
「いうことを聞かないとダメって何故か本能的(!?)に感じた。」
といった。
ん・・・?
何かおかしい・・・・。これは一体どういうこと・・・。
と考えていると、いじめられていた(はずの)方から
「どうして邪魔するの?こうしないと母様が僕のこと見てくれないのに・・・。」
と言われ、気がついた。
たしか、この子は攻略キャラの一人で、「鏑木 蓮」。
両親が政略結婚で互いに愛情がなく、母親が子供のことをあまりみないような人だったため、常に寂しい思いをしていた。しかし、自分が怪我や大変なことがあったときだけ、母親が自分のことを見てくれると気がつき、自分を傷つけることを繰り返してきた。
高校に入ってからは、自分のことだけを見てくれたとおもった主人公に母親の影を重ね、主人公が他の男に挨拶したりするだけで、自分を傷つけ主人公に「他の人のことをみるから・・・」といってくる感じだったはず・・・。
たしか妹は「鏑木様は、自分のことをみてくれないと、すぐに拗ねて自分を傷つけて、かまってかまって〜ってやってくるところが可愛いの。母性本能くすぐる><」といっていたけど、いやリアルでみると怖いから、目がいまでも病んでるよ。
まさか、幼稚園の時からこの調子だったとは・・・。そしてあれは私を見ていたんじゃなくて、母様を探していたのね。
何だろう・・・。こちらを見てくる目が怖い・・・。
うん、逃げよう。と考えていると、
「もしかして僕のことが気になるの?僕のことを想ってくれるの?」
と上目遣いでいってきた。
なんだろう・・・。とても可愛いのに怖い。
近づいては危険と頭の中で警告がガンガンなっているので、
「き、きのせいです。お邪魔しました」
といって逃げだしたのだった。