【優芽】はるくん……言えないことがあるよ
イケメンカウンセラーの本に
浮気について書いたページがあった。
「男の浮気は旅行みたいなもの」
なんだってさ。
つまり、非日常、刺激、帰るところがあるから旅(浮気)に出る。
それで女は? っていうと
「女の浮気は引越し」らしい。
浮気相手に乗り換えたい。
そう考えると、わたしのは浮気じゃないよね?
わたしも、旅行っぽい。
だって凪くんといろいろあったけど、凪くんに引越しするつもりはない。
凪くんは、話してるとき、遊んでるときは楽しいけど、将来はやっぱりイメージできない。
結菜ちゃん、本当に凪くんでいいのかな?
と、余計なことを考えてた。
ここ最近、凪くんははるくんちに来てない。
のんびりと、はるくんとふたり過ごせてる。
2人の家を借りるみたいだから、休みの日は全部、結菜ちゃんと不動産屋さん巡りしてるんだって、はるくんから聞いた。
「凪はめんどくさがって、ネットで決めれば早いのにって言ってるけど、結菜ちゃんが妥協しないんだってさ」
「ふーん、楽しそうで何より」
結菜ちゃんから、見せられないLINEするなって言われたみたいで、凪くんからLINE来なくなった。
凪くんのことは、はるくんから聞く範囲しかわからなくなった。
ようやくまともに、というかこれが当たり前なんだろうけど、落ち着いてきたのかもしれない。
わたしと凪くんのことは、はるくんはなにも言わないし聞いてもこない。
結菜ちゃんが行方不明になった件、はるくんだって事情わかってるくせに、なにも言わない。
凪くんだけじゃなく、わたしにも関係あることなのにね。
聞かれても、認める気はないんだけど。
それよりもこの先、はるくんに言えてないこと、誰にも言えてないことがある。
このままもし、はるくんと結婚するようなことがあれば、言わなきゃならないとき、来るんだろうな。
ずっとはるくんと、2人でいたい。
子どもなんかいらない、欲しくない。
はるくんは、子ども欲しいのかな?
欲しいって言われたら、結婚はしないほうがいいのかもしれない。
「あ、そういえば、タイルのことなんたけどね」
おばあちゃんちのお風呂場の欠けたタイル。
はるくんが壊した思い出。
「月曜日に山口くん、あの工務店の、持ってきてくれるんだって」
「え、わざわざカフェに?」
「こっちのほうにお客さんいるらしくって、ついでにランチ食べに来てくれるみたい」
「そか、俺が取りに行くって言ってたのにな」
あれ、わたし失敗した?
はるくんが行くからって、お断りしたほうが良かったのかな?
ランチ食べに来てくれるって言われたのが、少し嬉しくてつい……
はるくんの気持ち、考えてなかった。
「結局、色はそのままにしたんだっけ?」
「うん、上から薄いブルーのレジンで固めるって言ってた」
はるくんにも作れそうだったけど、サービスでやってくれるって言うから、山口くんにお任せしたんだよね。
ベッド脇に置ける感じの、かわいいミニテーブル。
「楽しみだな」
少しがっかりさせたかと思ったけど、良かった、いつものはるくんだ。
明日の日曜日は、このまえお散歩した公園で、ボートに乗って、公園内にある美術館にも、行ってみようかって約束をしてる。
ここから徒歩で行けるし、お散歩の延長みたいな感じだけど、その分ゆっくりのんびりできるよね?
「明日楽しみだね」
うん、楽しみ。
だよね?




