【優芽】なぜか凪くんとデートをしてしまった結果
「1回、優芽と普通のデートがしてみたい」
凪くんがまた寝ぼけたこと言ってる。
「やだよ」
「お願い、1回だけ!」
「そんなのもう、やりたくない」
「頼むよ〜」
なんで?
「優芽が好きなんだよ…」
「凪くん、たぶん勘違い。それ執着とか依存っていうんだよ」
これまでどれだけ自由に女が手に入ってきたか知らないけどね?
わたしの心は、そんな簡単に手にはいらないよ。
「結菜ちゃんひとりじゃ足りないの?」
「そういうんじゃない」
もう!
そんな悲しそうな顔で見られたって知らない。
「遥希がいいっていったら、いい?」
「言うわけないじゃん」
もう来ないで。
玄関ドアあけたわたしも悪かった。
イライラしてきた。
ただのお出かけ、と思えばいいのかもしれない。
コーヒーミルの買い物だって行ったじゃん?
でもね、わたしの水曜休みに合わせて毎回仕事休むっていうのが、やっぱりやりすぎだなって思う。
「じゃあデートやめてカラオケ行こ」
「なに、どんぐりころころ歌う?」
「セカオワ歌う」
あ、ちょっと聞いてみたい…
って!
思っちゃだめなのに。
……結局、
わたしはいつも流される。
凪くんに、弱い。
カラオケ歌いに行って、散々セカオワ聞かされてる。
「Yume」という歌を一番最初に歌ってるんだけど、それ、わたしを意識しての選曲よね?
セカオワの歌って、聴くのは良くても歌うと「字余り?」しちゃう。
良くそんな難しいの歌えるなって思って聴き惚れる。
なんだろ?
「君」がいなくなるとかいなくなり系が多い。
いずれ終わりが来るのに…
目覚めると君はいないとか
でも、
それで良かったんだ?
…深いんだな、と感じた。
そうそう「深海魚」って歌まであるのね。
凪くんの人生、世界観?
こんな雰囲気なんだな。
引き込まれてしまう
凪くんの髪がブルーブラックになって、少し悪魔っぽい雰囲気を出してるんだけど、
やっぱりきれいだなって思って目が離せなくなる。
わたし、なにしてんのかな?
凪くん観察日記みたい。
このひと、しゃべらなきゃいいのに。
なんて思ってた。
見た目に似合わず、言葉遣いがなんていうか、雑というか…ね。
わたしも、ひとのこと言えないんだけど。
「ところで優芽、この後どうする?」
「帰るよ、明日仕事だもん」
流されちゃいけない。
「えー、もう少しいいじゃん」
流されないよ?
「…夜カフェでパフェ食べよっか?」
そういいつつ、提案してしまう。
「カフェといえばシーシャカフェ行ってみたい!」
凪くんが言ってるけどそれって、なに?
ミーシャならわかる。
シーシャカフェ?
カフェなの?
「水タバコ吸えるとこ」
「タバコ?」
なんだか良くわからないけどそこに行くことになる。
カフェというけど、ヤバイな…個室だった。
薄暗い照明、甘いフレーバーの煙、
「なんか、くらくらする」
「ふわふわするね?」
「ポコポコ言ってるよ?」
「うん、ポコポコ言うね」
「あのさ、優芽」
「なに?」
「やっぱり優芽のこと好き」
「また言ってる、やめてってば」
「好き」とか「つきあいたい」とか、そんな風に軽く言わないで。
はるくんが言えなかった言葉を、簡単に言わないで欲しかった。
「凪くんが本気でそういうならさ、わたし、はるくんと別れなきゃ、なんだよ? そして凪くんも、結菜ちゃんと別れるんだよ?」
凪くんがどうか知らないけど、わたしの恋愛価値観はお互いだけっていうのが、これまでの常識。
はるくんをキープして、なんていうのも絶対だめなんだ。
はるくんはキープされるような人じゃない。
そんな扱い、したくない。
「こんなことを続けるならほんとに、別れなきゃだめ」
「うん、そうだよね」
凪くんがうなずいてる。
ほんとにそう思ってる?
思ってるのはこの場でだけ、でしょ?
はるくんとは別れないよ、別れたくない。
なのになんでかな?
凪くんといると、とても気持ちいい。
「昔さ、遥希や樹と良く3人でタバコ吸って怒られてたんだよな」
「……え?」
「優芽ちゃん、ほんとのこと言うね?」
いま、優芽、ちゃんって言った?
「いま、湊くんなの?」
これは、なに? シーシャのせいで幻でも見てるの?
「凪の右目……俺のなんだ」
そういうと凪くん…たぶん湊くんが、カラコンを外して見せてくれた。
「あ、色が違う……」
右目、湊くんの目のほうが黒い?
「湊くん、そこにいたんだ」
その右目に、触れたくなった。
でも、触れたら……戻れなくなりそうで怖くて手を止めた。
「あれ、なんか、眠くなってきちゃった」
しばらくぼんやりと凪くんの中の湊くんの幻? を見つめてたけど、意識がふわふわしてきたんだ。
「いいよ、しばらく眠って」
俺の記憶が生きてるうちに、優芽ちゃんとこうしたかった。
と湊くん? が抱きしめてくれて、わたしはそのまま吸い込まれるように眠りに落ちたの。
「遥希、優芽を頼む。でもいまだけ、もう少し、こうしていてもいいかな?」
遠くの方で湊くんの声が聞こえた気がした。
これは夢?
俺の肩に寄りかかるようにして眠る、優芽。
あのときもっと大人だったら、もっと早くこうしてそばにいられたかもしれなかった。
ときどきでいいんだ。
月一回でも、年一回でもいいから、
優芽、また会いにきてもいい?
遥希、許してくれるか?
凪、勝手に体借りてごめん、出てきて悪いな。
でもな、凪、
優芽はもう…おまえを、見てるよ。




