【遥希】湊の葬儀、大勢の前で大泣きした「有名人」だった俺?
サウナ出入り口付近の椅子に、優芽がいた。
「あ、待っててくれたんだ?」
「うん、さっきまで少し凪くんと話してた」
「あー、そうなんだ」
「ひかりちゃんの世話で大変そうで」
代わりに抱っこしてたんだ。
その優芽、見たかったなー。
ちょっと残念。
先日、優芽のおばあちゃんから言われた「ひ孫」のことを意識してしまってる。
いつか俺たちも、そういう日が来るんだろうなって想像する。
「で、凪となに話してたんだ?」
聞くと、思いもしてなかった名前が出て驚き!
「ああ、湊の話か…って、え、あのとき葬儀場に優芽もいた!? 知らなかった」
「わたしははるくんがいたこと、知ってたよ」
「そうなの?」
「はるくんたち、有名人だったし」
「有名人って、なんだよそれ」
「有名人のはるくんが、あんなにめちゃくちゃ泣いてるんだもん、見るよ」
「知らなかったな、見られてたとは」
そして恥ずかしい。知ってたなら言ってくれたら良かったのに。
「凪くんが湊くんの弟って聞いてびっくりした」
「湊のことも凪のことも、優芽に言ってなかったな」
「湊くんに弟がいるのは知ってたけど、どんな子なのかは知らなかった」
「あーあのとき凪は確か、中1で…」
あれ? だったら優芽も中2だったし、知らないって変じゃね?
湊の弟だって言われて凪、かなり目立ってたよ?
湊のこと知ってるなら、当然知ってるものと思うだろ。
「だからバルで初めて凪くん見たとき、湊くんかと思ったよ!」
「似てるもんな」
「湊くんイケメンだったよね、凪くんもかっこいいし」
確かにスポーツ万能で、顔も良くて、いつも女の子にきゃーきゃー騒がれてたっけ。
だからあいつの葬式、すっげーたくさん、女子が集まってた。
その中に、優芽もいたってことか。
あー俺って、そんな大勢の女子の前で、目立つほど泣いてたなんてヤバい。
「でも、俺のこと良く覚えてたな」
「だって湊くんと、はるくんと、お兄ちゃん、いつも3人一緒いたじゃん?」
「そか、そうだったな、樹もいた」
「女の子たち、みんな見てたよ、目立ってたし、はるくんファンもたくさんいたよ?」
「えーそうなの?」
「みんなでさ、誰担にする? とか騒いでたよ、いまでいう”はるくん推し”とかそんな感じでね」
推されてたっていうわりに俺、彼女いなかったけどな。
あ、でもあのあと樹から紹介されて、優芽がそばにいたっけ。
そうか、あのときから優芽は俺のこと……
「そういや樹とはあれから連絡してんの?」
「お兄ちゃんとは全然だよ、はるくんに会えたし、もういらない、用なし」
「おま、用なしって……」
「いいんだって、あんなゴミ」
「まあ、ゴミ…言われても自業自得か」
そう、優芽に、あんなひどいことやったんだ。
もう許されてんのかと思ってたけど、やっぱりまだまだなんだな。
別にもう、会わなくていい。
義理なんだし。
それにしても、世間は狭いな。
ありきたりだけど、そう思う。
「たぶん、もともと縁があったんだよ、わたしたち」
だからこうして、再会できたのかもよ?
優芽にそう言われて納得する。
そか、縁か。
つながってんだな、昔からずっと。
そしてきっと、これからもつながり続ける?
切りたくないな、切れないように縁をつなげていこう。
そうしたいと本気で思っていた。




