第二章 第九十三話 〜港町の巨大牛〜
「ええと……ギルド長と……神父様!?」
僕は二人のあまりの変わりように頭が混乱している。
「そうだぜリベル。俺は力を発揮する時はこの姿なんだ」
「そ、そうなんですか……神父様は?」
「私の場合はこちらが本来の姿です。普段は結界法術で作った眼鏡で体格なども抑え込んでいるんです」
「あ! だからお風呂でも眼鏡取らないんですね!?」
「そういうことです。体積が増えるとお湯ももったいないですから……」
そういうことではない気がする。しかし、確かに大きすぎると別の問題もあるだろうから、合理的なのかもしれない。
「因みに二人きりの時はどうしているんですか?」
「え!? そ、それはどういう意味ですか……?」
「いや、大きすぎると困ると思って」
「リ、リベル。お前何言っているか分かってんのか……?」
「だって、寝る時とか困るじゃないですか? ベッドが壊れますよ」
「「そこまで激しくない!!」」
ただ体が大きいと重いから、支えるのが大変だと思って言っているのに、何故二人は顔を真っ赤にして焦っているのだろうか? まあ僕には分からない事情もあるのかもしれない。
そんなことを言いながら、敵を片付けていく。僕らは第五の穴までやって来た。振り返ると味方たちも第三から第五の穴手前まで広く応戦している。
「行くわよ! アンジェラ! エリザベス!」
「「おう!」」
そこにはキャサリンたちや――
「エルマ! モカ! 無茶すんなよ!」
「「そっちこそ!」」
アルトたちもいた。
それぞれが連携を駆使し各個撃破や複数体を一網打尽にしている。
「ぐあああ!」
「大丈夫か!? 今回復する!」
膨大な数と種類の会話や音を拾っていくが、まだ致命傷などで命を落とした人員はいないようだ。
だが、まだびっしりとモンスターで埋め尽くされている。
「一体どこまでいるんですか! この敵たちは!」
「キリがないぜ! そもそもこんなにたくさんのモンスターが山にいるのか?」
確かにおかしい。近隣の山々を全部合わせたとしても、こんなに大量の敵がいるわけがない。やはり、あのカラスマスクが何かやったのか――そう言えば、肝心のあいつはどこに行った?
コウモリなどをかいくぐってあたりを見渡しても、どこにも見当たらない――! しまった! ウシはどこに行った!?
「神父様! ウシが見当たりません! 気をつけて!」
「何ですと! ……前にはいない――となると! 上です! 『結界法術・天』!」
ヴン――!
頭上に光輝く『盾』が広がった瞬間――
ドガンンン!!
巨大な四本のツノを持つウシが太い蹄で踏みつけてきた。
「これは――耐えきれません!」
バリィィィン!
神父様の結界法術が砕け散った。
ズシン!!
「ブモオオオ!!」
巨大牛が猛りながら右前脚で地面を蹴った。そして次の瞬間――
ズドドドド!
第五の穴近くまで猛然と突進してきた。そこにはキャサリンたちを含めた冒険者と兵士が大勢いる――
「させません! 『結界法術・壁』!」
ヴン――!
彼らの前に『盾』が立ちはだかった――が。
ズドドドド……!
大きく弧を描き、神父様とギルド長に向かって行った。
「神父様! ギルド長!」
「ちいっ! 『結界法術・壁』!」
ヴン――!
二人の間に再び『盾』で防ごうとする――しかし、さらに弧を描いてあり得ない速度で加速した。
「なっ! まさか、最初から僕を狙って……!」
反射的に両手を交差し、光の刃で受け止めようとする。だが、物理的な質量と加速した衝撃はそんなものを容易く踏み潰し――
グシャアアッ!!
僕の体は凄まじい勢いで飛散した。




