第一章 第八話 〜異質な三叉槍〜
「お前さん、リベルと言ったっけ? 本当に強いのかよ。ブレブの旦那のことも疑うわけじゃないが、にわかに信じられなくてな」
「いや、仕方ないよ。僕が逆の立場ならそう思うもん」
「お前さん、素直だな」
「リベルでいいよ」
「そうか。リベル、よろしくな」
そう言った彼の名はスキュアルド。三叉槍を携えているが、ブレブの三叉槍とまた違う。柄も長いが刃の部分も長い。初めてみるタイプだ。
「ん? 俺の武器が珍しいのか? こう使うんだ」
スキュアルドは三叉槍を数回突き刺すような動きをした。そして次の瞬間、てこの原理で柄の右手を力点、刃のすぐ下の柄を握った左手を支点、刃を作用点として振るった。
「すごい! そうやって攻撃するんだ!」
「どうだ? 合理的だろ。こうすれば槍としても使えるし、剣のようにも使える。守りながら刺突も狙えるしな。自分を刺さないように、両側の刃は先端の切れる部分と下の切れない部分に分かれている。人間でいう剣の鍔みたいなもんだな」
「人間もいるの?」
「いると思うぜ。ただ離れているからな。船とかでこちら側に来ることはまずない。サメだとかヤクザなシャチだとか、もっとデカいバケモノもいる。危険を冒してまであえて来ようとはしないさ。でも、たまに漂流物が落ちてたりするから、剣を見たことがあるってだけさ。さすがに水中で呼吸ができる人間はリベル、お前さんが初めてだ」
「なるほど……」
「それより、俺の方は見せたんだから、お前の方も見せてくれ――というか、お前武器持ってねえじゃねえか!」
「大丈夫。あ、ちょうどいいところにサメがいたよ。ちょっと見ててね」
「はあ? おい!」
僕はサメの方めがけて泳ぎだした。するとサメの方も僕をエサだと思ったらしく近づいて来た。すかさず『スウィム』を起動する。
急加速するとサメが面食らったらしく全ての動作が遅れた。左拳に力を籠める。
ゴン!
僕はそのままの勢いでサメのザラザラのゴムのような鼻っ柱を殴った。
するとサメは怯みたじろいだあと、反射的に大きく口を開いてきた。
しかし、僕はその隙に『スウィム』で足先からサメの下に潜り込み、右拳を腹めがけて穿つ。
「『スティング』!」
ズドン!!
サメの体は背まで貫通した。
さらにその状態で左手を開き、フックのような動きをする。
「『テア』!」
ザン!!
サメの胴体は真っ二つになった。
「こんな感じ」
戻ってきた僕がスキュアルドに話すと、口を開けたまま泳がずにその場に固まってしまった。中性浮力を体現しているようだ。
「お前……すげえな」
「一応、ブレブにもお墨付きはもらったよ」
サメも最初は殺されかけたけど(実際ほぼ死んだし)、今では遊び道具になってしまった。生態系が心配だから手加減するようになった。シャチもこんな気持ちで獲物をいたぶるんだろうか? さすがにそこまでじゃないと信じたい。
「前に敵の魚人達と戦った時、五十体は斃したはずだよ。黒いもやになって消えてしまったからわからないけど」
スキュアルドは三叉槍を持ったまま身構えている。某ロールプレイングゲームの立ち絵の実写版みたいだ。ただ目だけ無意識に僕を追っている。
「あ、一応これも見せておこう」
コマンド入力待ちのスキュアルドを尻目に、僕は底の方に泳いで岩の壁の前まで来ると叫んだ。
「『バイト!』」
バクン!!
僕の顔の前に光の顎が現れ、そのまま岩を粉々に噛み砕いた。
彼の方を振り返ると、さっきのサメのように口をあんぐり開けていた。
そんなつもりはなかったけど、やりすぎたかな……




