表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/57

第一章 第七話 〜新たな変化〜

「リベル!  そっちに行ったぞ!」

「任せて!」

 ズドン、と重い手応え。

 モリで大きな魚を突く。『スティング』を使えば一瞬だが、あれは対象を内側から破壊しすぎて食糧を台無しにしてしまう。今の僕には、こうした道具を使いこなすだけの『肉体的な余裕』ができていた。

 サメが血の匂いに誘われて寄ってきた。

 僕は『スウィム』を起動し、加速を乗せた膝蹴りを叩き込む。たじろぐサメの側頭部へ回り込み、さらに渾身の正拳突き。

 ドン、という水の振動と共に、サメは絶命した。

 

「ずいぶんと様になったな」

「ブレブのおかげだよ」

「いや、俺はそんなに格闘技は上手くない。お前の努力の賜物だ」

 僕は四歳になっていた。

 この二年間、僕はあらゆることを試した。

 水中で打撃を放てば、抵抗で威力は減衰する。それを逆手に取り、『スウィム』による爆発的な推進力を拳に乗せることにした。

 当然、そんな速度で物体を殴れば、作用反作用で僕の小さな拳や脚はズタボロに砕ける。

 だけど、それを『リカヴァー』で即座に完治させ、再び打ち込む。

 その狂気じみた反復を続けた結果、僕の肉体は、水中でも地上以上の質量を持つ衝撃を放つまでになった。

「前から一番の戦士ではあったが、さらに磨きがかかった感じだな。向かうところ敵無しか?」

「いや、ブレブと初めて会った時に油断は捨てたよ。たまたま色々上手くいっただけで、僕もブレブもやられるところだったし」

「そうだな。いい姿勢だ」

 

 

「ただいま」

「おかえりなさい! パパ!」

 ブレブは二年前に結婚し、今や三人の子の父だ。 魚人の子供の成長はすごく早い。

 奥さんも含め村のみんなは、僕を本当の家族のように扱ってくれた。

 前世で生命維持装置に繋がれ、指一本動かせなかった頃に比べれば、この自由な深海はあまりに『生きている』実感が持てる場所だった。

 

 僕は村で『養殖』も始めた。

 海藻を植え、牡蠣を吊るして育てる。換水口の仕組みを応用して強制的に水流を起こし、栄養を循環させる。そんな前世の知識を教えると、村の食糧事情は安定し、僕は村の発展に欠かせない存在として喜ばれた。

 

 そんな凪のような生活の中、門の辺りが騒がしくなった。

 そこにいたのは、腰から下が魚の——人魚だった。

「どうした? 何かあったのか?」

「あ、ブレブの旦那! 実は大変なことが……

え? 人間!? なんでここに人間が!?」

 まさか僕の方が驚かれるとは思わなかった。言語が通じているのも『コンフォート』のおかげなのだろうけど、向こうのリアクションが強すぎて、僕が抱いた人魚への感動は十分の一以下になった。 泣きたい時に相手に引くほど泣かれると泣けない、アレだ。

「ええと、お前ら頭を冷やせ。結局何があったんだ?」

「旦那、それが城下町の近くの洞窟に巨大な蟹が住み着いてしまったんだ。今までにない巨体で、とてつもなく素早くて――兵士も次々とやられ、その中には王も含まれていて……」

「なんだって!? 王が……女王はどうなった!?」

「気丈に振る舞っているけど、女王もそろそろ限界だ。恥を忍んで、この村に助けを求めに来たんだ」

「事情は分かった。だがこの村も戦力を割けるほど多くはない……」

「――僕が行くよ」

「!? 君が?」

「リベル、お前大丈夫なのか?」

「いや、旦那、冗談じゃないよ。こんな小さい子供に何ができるって」

「気持ちは分かるが落ち着け。このリベルは村一番の戦士だ。もはや俺が数十人いても敵わない」

「はあ!?」

「僕がやらないと、その洞窟から被害が広がるでしょ。早いほうがいい」

「リベル、すまない。行ってくれるか?」

「うん、分かった。ブレブは奥さんと子供を頼んだよ」

 

村のみんなと挨拶を交わし、唖然とする人魚と共に、僕は城下町へと向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ