第二章 第八十七話 〜冒険者ギルドの考察〜
「領主様……ですか!? 初めまして、リベルと言います」
僕は思わず手を引っ込めようとしたが、彼はしっかりと握り返した。
「そんなに縮こまらなくてもよいぞ。儂は堅苦しいのが嫌いじゃからな」
「そ、そう言われても……」
「大丈夫ですよ。バル爺はとても親しみやすい方です」
「俺らも子どもの頃から知っているからな」
神父様とギルド長が階段を下りながら語りかけてきた。
「ほっほっほ。この子らは特にやんちゃでな、いつもイタズラばかりしておった――」
「あの……余計なことは言わないでいただけると――」
「やめろジジイ!」
僕は二人をまじまじと見た。ギルド長は分かるけど、神父様もやんちゃだったのか……
僕と領主様は握手を解いて、すぐそこの丸いテーブルと椅子に腰掛けた。
「さて、英雄リベル殿。改めて礼を言おう。よくぞこの町の鉱山の脅威を退けてくれた」
彼はステッキを左手で支え、シルクハットを右手で胸に抱えながら、こちらに向かって深々とお辞儀をした。
「いえ、そんな、英雄だなんて……結局、誰も救えませんでしたし……」
僕が鉱山の奥底まで調べていたら、もしかして誰ひとりも犠牲者を出さずに済んだのかもしれないという後悔と自責の念だけが残る――
「たとえそうだったとしても、放っておけばもっと被害が出たじゃろうて。鉱山の被害者については誠に残念な結果になってしまったが、それだけで済んだことは不幸中の幸いじゃ」
領主様にそう言ってもらえると、少し心が軽くなった気がした。
「それでリベル、この前はあのあとすぐに倒れてしまって訊けなかったが、一体どんな状況だったんだ?」
「それが――」
僕は事の顛末を事細かに説明しだした。
「そんなことになっていたなんて……」
「リベル、よく無事に帰ってきましたね――」
話を聴いていた僕以外の全員の顔が曇る。僕としても今回は相当にヤバかった。クモだけでなく、カラスマスクという謎の敵まで出現してしまったのだから。毎回感じるが、もし何らかのスキルがひとつでも発動しなかったとしたら、その場で野垂れ死んでしまっていただろう……
「ううむ。何じゃその『カラスマスク』は? そんなもの聞いたこともないぞ?」
「『魔術』でも『法術』でもない……『召喚師』ということですか?」
「しかもただ喚んだだけではなく、『使役』していたんだろ? 恐ろしいことだぞ……」
テーブルを囲む四人のうち三人が考え込む。
「『召喚師』っていないんですか?」
僕が片手を小さく挙げて質問する。
「いない。さっき言った『魔術』や『法術』、それと固有の『スキル』のようなものしか確認されてない」
「じゃあ、その『スキル』で『召喚』したとか……」
「まあ、その可能性はあるな。ただ、現段階では聞いたことがない」
「うーん……」
僕も腕組みしてしまった。誰かや何かを喚ぶことはないって――
「あ! もしかして……!」
僕が立ち上がる。
「リベル、どうかしましたか?」
「どうした? 急にデカい声上げて」
「僕はその『召喚』ですでに戦ったことがあるのかもしれません」




