第二章 第八十五話 〜鉱山の決着〜
「ギシャアアア!!」
体液を流しながら後ろに逃げる巨大蜘蛛。
「逃すか!」
僕はすかさず走って追いかける。
ブシュー! ブシュー!
顔と尻から糸を吐き出す。しかし、さっきまでと違って『ダーク=ヴィジョン』のおかげで丸見えだ。そうなると排出方向を読むのは容易い。僕は右斜め前に飛び込み前転をしながら、敵目掛けて左手で『アロー』を連射した。
ギィンギィンギィンギィン!
またも両前脚で全ての矢を落とす――が、その間に糸は射出しないだろうということも僕は読んでいた。そのまま左手の『アロー』で動きを封じながら、敵に突っ込みながら右手をかざした――
「うおおおお! 『グラスプ』!」
光る縛鎖が蜘蛛の頭に巻きついた。これで引き寄せることができる。矢の連射で牽制しつつ、一気に『グラスプ』で自分の体を手繰り寄せた。
「キシャアアア!!」
『アロー』に対する両前脚で防戦一方の巨大蜘蛛。その隙間からようやく至近距離に到達し、左手を口元に向けた――
「『スティング』!」
ギシャアガゴゴゴ――!
光の槍が蜘蛛の口内を貫いた。
「『ダブルスパイダー』! クソが! 奴を何としても殺せ!」
ゴゴアアア!!
最後の悪あがきで巨体が僕に突進してきた。まだ『スティング』は刺さったままだ。失った鋏角から黄色や青色の体液が飛び散る。微妙に進路が曲がっている――壁で挟む気か!
僕は『スティング』を解除し、まだ頭に巻いたままの『グラスプ』をさらに巻き戻し、どうにか頭の上に乗った。そのまま全速力で右斜め前に駆けて跳んだ――
ドゴゴオオオオン!!!
恐ろしい轟音と共に振動が発生した。足を取られる。
ふと上を見上げた。するといくつかの岩がひび割れ、落ちてきている。このままだとこの洞窟も僕自身も危ない――と思った矢先。
ズズズ……
巨大蜘蛛が後退し、こちらに振り返った。十六あった目は潰れ、もはや四つしか残っていない。
一切の防御を捨てて僕に向かって特攻する。しかし、そこは僕の独壇場だった。
「まだ……動けたのか。だが最早虫の息なはずだ。トドメを刺してやる――喰らえ! 『パラライズポイズンアロー』!!」
ドドドドド!!
紫と緑の禍々しい光を帯びた無数の矢が、無防備な蜘蛛の顔面を容赦なく穿つ。
ズジャアアアアア――!
やがて全ての動きが止まった。口からはドロドロとした体液が溢れ出す。
「キィィイッ! よくも『ダブルスパイダー』をやってくれたな! 覚えておけよ――!」
そう言い残してカラスは姿を消した。
「あっ、もっと情報が欲しかったのに……いや、そんなことを言っている場合じゃない。残ったクモを全て駆除しないと、また他の被害が出るかもしれない。だけどさすがに疲れたな――」
僕は『アロー』や『グラスプ』を用い、光る矢と縄で絡め取りながら、この洞窟内を徹底的に片付けた。滝を下って洞窟内をあとにすると、坑道には明かりが戻っていた――改めて惨状を確認できたほどに。
「リベル――リベル――いますか――」
「リベル――リベル――返事をしろ――」
『グラスプ』で縦穴を地下五階まで上がると、ギルドのみんなの声が聞こえた。おそらく視界が確保できたことで、探索に来てくれたのだろう。
「おーい! みんな! 僕はここだよ!」
「リベル! 無事でしたか!?」
「リベル! 良かった……よくやったな!」
壊されたエレベーターの扉の前で、みんなに抱きしめられてもみくちゃにされた。




