第二章 第八十一話 〜鉱山の行方〜
ドドドドドド――!
壁や床、天井に至るまで、片っ端から『アロー』を叩き込む。赤色の目が消え失せるまで。小さな雑魚は走りながら靴で潰した。
こんなに短期間でこの量のクモが出てくるなんて、いくらなんでもあり得ない。
僕は初心者クエストを思い出していた。あの時、キャサリンは敵が多いと言っていたし、カエルについては予想外という様子だった。
つまり『さらに奥の何者かに締め出されてきた』のだ。
「やはり――『川』か」
自分の拳を握りしめた。あそこで徹底的に調査をしていたなら、今回のような事態は防げたかもしれない。脂汗が止まらない。心臓も押し潰されそうだ。だが先に進むしかない。
一通り地下十階のクモを片付けた僕はエレベーターの縦穴を警戒しながら確認する。左右、次は上、最後に下。かごは――地下十二階のちょっと下で止まっている。これに関しては幸運だ。ロープもまだかごの方にぶら下がっていた。
さっきの一番大きなクモの脚を『シザー』で切断して、縦穴からロープをたぐり寄せる――よし、届いた。そこからかごまで引っ張っていって――うん、これが先端だね。
次は入口まで延びているロープを引っ張って――うわっ、摩擦の抵抗で重い――ふう、こんなもんかな。
僕は二重のロープを数字の『8』のような形にして縦穴の支柱に引っかけた。先端をわざわざ通すの時間がかかるからだ。さらに強度を上げるために、同じ場所で何度も結ぶ。
同じ要領で何箇所もコブを作る。その方があとで上って奥底から出やすいからだ――まあ、地下十階から地上に戻ることまでは考えてなかったけど……後回しにしよう。
僕は最下層への探索を進めた。
地下十一階――気配がない。
あるいは奥まで探したらいるのかもしれない。だけど、エレベーターの前まで引きずられた跡が放射状に広がっているから、その確率は低そうだ。
――ん? じゃあ、さっきまでのクモどもは、最下層からわざわざここまで上がってきたってことなのか……?
地下十二階――
僕は半分まで下がったエレベーターのかごの天井に立つ。そしてそこを伝い、その階層に降りた。やはり、気配はなかった。
地下十三階――気配がない。
地下十四階――気配がない。
地下十五階――気配がない。
地下十六階――気配がない。
地下十七階――気配がない。
地下十八階――気配がない。
地下十九階――気配がない。
だが、嫌な予感はどんどん募る。
坑夫たちはどこに行った? この規模なら上階が稼働していないとしても、三桁くらいの人数がいるはずだ。しかし、一人も痕跡がない。
地下二十階――気配はない。
最下層に降り立った僕は茫然と立ち尽くした。
そこにはヘッドランプ、カンテラなどの装備が壁一面に積まれていたからだ。
そして、その装備の山の中には――坑夫たちの衣服も含まれていた。しかもズタボロで血だらけだった。
「うっ……おえええ!」
素早くマスクを外して嘔吐した。間違いない。坑夫たちは全て――クモによって『喰われた』!
すると赤色の満天の星空が現れた。見渡す限りの悍ましさだ。次の瞬間、一斉に襲いかかってきた。
「坑夫たちの仇だ! 『アロー』!」
僕は泣きながら全ての赤色の目が消えるまで叩き潰した。




