第二章 第七十二話 〜初心者の実力〜
カサカサ――
やってきたのはゴキブリ、ゲジゲジ、カマドウマだが――
「おい、まあまあデカイな!」
「大きなフライパンくらいあるわね」
「攻撃通るのか……?」
本当にデカイ。犬や猫くらいと言えば聞こえはいいが見た目は最悪だ。
「やだわあ。この前も掃除したばかりなのに、もうそんなにいるのね。じゃあリベルちゃん以外、やってしまいなさい!」
「え? 僕は?」
「あとに取っておかないと他の子たちの経験にならないでしょ。様子見よ!」
「うおおおお!」
アルトがゴキブリに両手で剣を振り下ろした。
グワン!
「硬ってえ!」
大きすぎるので大したダメージにはなっていない。
ブビビビン――!
怒ったゴキブリがアルト目掛けて飛んで来た。
「うわあ!」
「させないわ! 『アイスニードル』!」
エルマが杖をかざす。光る魔法陣が現れ、冷気が迸る。
ザキン! ザキン!
氷柱が敵の顔と腹に刺さった。
「どうやら切るよりも、刺すほうが効くみたいね」
「なるほど! やってみるぜ!」
アルトは慌てて逃げ回るゴキブリの動きに合わせて――
ザクッ!
背の羽と羽の間を串刺しにした。
「ハアッ!」
ドゴン!!
金属の手甲をつけたモカが片手でカマドウマを粉砕した。軽く爆発したようにも見えたけど何だろう?
「モカ、今のは一体何?」
「うん? 魔術を込めて衝撃を与えたんだよ。火は使ってないぜ。武道家ではよくやる手段だ」
「そうなの!? すごい!」
「そ、そうか? そう褒められたことないから照れるな……」
「因みに、飛び道具も出せるの?」
「いや……飛び道具とまではいかないが、拳や掌底から衝撃波は出せるぜ」
「えええ!?」
「ただ……殴った方が強い」
「ああ……」
せっかく四分の一回転+Pや後ろ溜め前+Pで画面端まで届くと思ったのに、切ない――
その後も三人はコツを掴んだのか、次々と敵を斃しながら進んでいく。途中で危ない場面もあったが、なかなか回避も上手いみたいだ。
「みんなやるわね。でも、虫にばかり気を取られていると――?」
「? う、うわああ!」
バサバサバサッ!
三人にコウモリが襲いかかってきた。これも大きい。翼を広げると一メートルくらいはありそうだ。やつらは牙を剥き出しにして攻撃してくる。
「くそっ!」
アルトが剣を振り回すが飛んで避けてしまう。その間に別のコウモリが背後から掴みかかる。
「ぐわっ!」
「アルト! 避けて! 『アイスニードル』!」
バサバサバサ!
しかしエルマの攻撃魔術も当たらない。
「させるか!」
モカも殴ろうとするが、やはり躱される。
「ふざけんな!」
ブワッ!
拳から衝撃波が出てコウモリを掠めた。バランスを崩し底に落ちそうになるが、耐えてまた元の高度を保とうとする――しかし、隙はできた。
「ハアッ!!」
ドゴン!!
コウモリの体が地面にひらひらと落ちた。クリティカルな一撃だった。
飛び道具で飛ばして落とすとはこのことか――ちょっと違う気もする。しかし、ヒントにはなったようだ。
「『アイスニードル』!」
バサバサバサ!
やはり避けられるが、次の瞬間――
「『アイスグラップル』!」
ガシッ!
コウモリの足が氷で固められ、動きが制限された。必死に飛ぼうとするも――
「『アイスニードル』!」
グサッ!
もはや遅かった。地面に落ちたコウモリから「パーン」という氷塊が砕ける音が聞こえた。
一方のアルトは剣で切り裂こうとするも、やはり避けられて苦戦していた。コウモリたちも嘲笑っているようだ。
「クソが!」
またコウモリが躱そうとした刹那――
「『アクセラレート』!」
ザン!
彼の動作が加速した。他の敵たちは何が起きたか分からないようで、真っ二つになった仲間を見つめていた――勝機だ。
「うおおおお!」
ザンザンザンザン――!
残りのコウモリが花びらのように散っていった。




