第二章 第六十五話 〜冒険者ギルドの初クエスト〜
「生意気言ってんじゃねえよ。まだオムツも取れてないんだろ?」
「ここはお前みたいなガキが来る場所じゃねえんだよ!」
「帰ってママのおっぱいでもしゃぶってな!」
「――という洗礼も受けるかもしれないので気をつけてください」
今日は学校がお休みだ。僕とセイクルは先に教会を出て、それぞれ別々に船着き場の先と冒険者ギルドに向かった。神父様を除く他の三人はたぶんまだ寝ている。カバンを持って目的地へと向かった。
ギルドでカードを見せて、受付のお姉さんに初回クエストの依頼を受けようと思ったら、いきなり三人組のパンクな方々に絡まれた――のがさっきの話だ。
「安心してください。彼らは常連のCランクの冒険者で、初心者を優しく手ほどきしてくれる親切な方々です。因みに彼らは男ですが、男性愛者です」
モヒカン頭と口紅を差した、ムキムキの三人組がポーズを決めた。
「ごめんなさいね、ボク」
「怖がらせちゃったでしょ?」
「でも、最初にある程度脅かさないとね」
――世紀末みたいな格好をしているが、恐ろしくいい人だった。しかもオネエだ。
「大丈夫です。ありがとうございます。これからこのギルドにお世話になると思うので、よろしくお願いします」
「……あらあ。アナタ、あと十年もすれば、ものすごくモテるわよ」
「たぶん特に女子が放っておかないわ」
「顔がかわいくて礼儀正しい。これで強ければ無敵よ。というか、もうモテてるんじゃないかしら」
「あ、アハハ……」
あらゆる意味でどう返せばいいか分からない。
別に僕は異性愛者、同性愛者、両性愛者、無性愛者に対しての偏見はない。ただ僕は女性が好きだというだけで。さらに子孫が残せればいいと思うだけで――何言ってんだ僕は。
「では、改めて。リベルさんはEランク、しかも初めてのクエストなので、受けられるのは掃除、ドブさらい、薬草採集ですね。もちろん、依頼に応じて報酬も払われます。地図なども渡しますので、やってみてください。全部、一度に受けますか?」
「やります!」
何事もやってみなければ始まらない。僕は町一帯の地図を広げた――文字はほとんど分からないけど、描かれている建物の絵や神父様たちの話を頼りにしばらく眺めていると、港や中央広場、教会、学校など、少しずつ地理が分かってきた。この時点で楽しい。深海には地図なかったからな……よく迷子にならなかったな。
まずは中央広場の掃除だ。ちりとりとほうきでせっせと集める――そうか、こんなこともやったことがなかったのか。海中にはあちこちに『掃除屋』がいたし。
落ちていた葉っぱや枝、砂などを渡された袋に入れた。こんな感じでいいのかな?
続いて、ドブさらい……っていっても、キレイするものがない。点検箇所を確認するだけだ。たぶんこれは報酬なしか、あっても安いだろう。
そして薬草採集の場所に向かった。地図によると学校の近くらしい。そこは校庭の向こう側で、原っぱになっていた。
別の紙を広げると絵が描いてあった。しかもカラーだ。ちゃんと、どこの部位が必要なのか描いてある。ふむふむ、この形の薬草は――これか。これは根だけ残して、それ以外を採るんだな。お次はこのキノコだ。表は焦茶色で裏は白い。そしてこれは芽だけ採る、と――
思わず夢中になってしまった。地上の植物なんて触ったことないから、全て珍しい。海ではワカメや昆布とかだしなあ……
「行ってきました」
「あ、リベルさん、お帰りなさい。どうでしたか?」
「ドブさらい以外は上手くいきました。こっちがちりとりのごみと、こっちが薬草採集物です」
「――なるほど。では今回のクエストは成功ですね。お疲れ様でした」
「いえ、ドブさらいは何もしていないですよ? キレイでしたし」
「でも、異常などは確認しましたよね? それが大事なんです。基本的にはドブさらいと言っても、魔法力がかけられているのでキレイなんです。これでどこかから汚い泥を無理やり持って来たとかであれば、それは『捏造』になります」
あ、だから『基礎』なんだ。プラスになることばかり考えていたけど、マイナスの足切りも見定めなければならないんだ。
「……もしかしてですけど、さっきの三人は――」
「ああ、そうです。冒険者でもありますが、『ギルドの職員』です。実は一人、気付かれないように後を尾けていました。さすが、リベルさん。あと一から二回で昇級でしょうね」
これはおそらくDランクになってからが本番だ。逆に燃えてきたぞ――




