第二章 第六十四話 〜実技の授業〜
「絶対に私の料理食べさせてやるんだから!」
「……リベル、ゴメン。私じゃセイクルを止められないわ――」
今日はみんなで登校している――といっても、先行する二人と後続する三人に分かれている。
一晩明けても、セイクルはプンスコ怒っていた。フィオと仲直りしたのはいいけど、矛先が完全に僕に向いていた。
つまりこれは『死刑宣告』だ――
「僕、死にたくないんだけど……」
チロとネネが背中を叩く。
「今までありがとう、リベル」
「永眠――」
とても悲しくなってきた。どうしよう泣きそうだ。
「まあまあ、今日はリベル、実技だから」
「戦闘以外もある――」
「え? あ、そうか。戦闘以外の実技もあるのか! 楽しみになってきた! 因みに二人は何をするの?」
「僕が一番好きなのは読書だけど、今日は絵を描くかな」
「ネネは歌う――」
「選択制なんだね」
「いや、ある程度自由。あまりにも不公平だとかわいそうになっちゃうから、調整する」
「そうなんだね……ん? そういえば僕は今日、一体何から始めればいいんだ……?」
「――そう言うと思ってたので、今日も私が案内します」
学長が校門の前に立っていた。
「学長、おはようございます」
「おはよう。リベル、皆さん」
「学長、おはよう!」
「さあ、リベル、一度学長室に行きましょうか」
「聞いているかもしれませんが、実技は自由選択制を採っています。ある程度基礎を学ばせたら、そこから先は個々人の能力を伸ばすことを重要視しています。因みに戦闘は基礎に入ります。敵が攻めて来たら困りますからね」
それはそうだ。危険がほぼない場所ならともかく、そうではないのなら優先順位の上位は戦闘になる。
「それ以外は色々な実技があります。主に芸術系ですね。絵画、彫刻、舞踏、音楽などです。あとは料理、技術、裁縫などもあります。戦闘は重要ですが、それ以外ももちろん重要です。大切なのは『底上げ』と『伸ばす』ことですから」
それは本当にそうだ。せっかく才能があっても学校が抑え込んでいるのなら無意味だ。それでいて、僕の文字みたいに救済もしなければならない。教育は大変だ。
「では、他の実技をしている場所を見て回りましょう」
「分かりました。よろしくお願いします」
僕と学長は体育館にやって来た。
「ここは格闘技などを鍛える場所となっています。魔法力を使う場所は広い校庭や中庭の方がいいですからね。そうでない戦い方も後々重要になってきます――」
「せいっ!」
「はあっ!」
ビシッ! ビシッ!
ちょうどセイクルとフィオが戦っていた。クッション性のある防具を格闘している。我流の僕が言うのもなんだが二人とも筋がいい……と思ったら、なんかブツクサ聞こえてきた。
「絶対に! 私の料理を! リベルの口に! ねじ込む!」
「その意気よ! セイクル! 私は! 関係ないから!」
――最悪だ。しばらく逃げたい。
「……まあ、そっとしておきましょう――」
見なかったことにしてその場所をあとにした。
「こちらは美術室です。絵画や彫刻などで力を発揮する部屋ですね」
シャッシャッシャッ――
チロは木炭とパンを使って絵を描いていた。モチーフはリンゴ、バナナ、ブドウだ。
「――いや、上手いな!」
「あ、リベル。ありがとう」
「チロは前から絵を描くのが得意なの?」
「いや? 全然」
「そうなの?」
「誰だって最初は下手でしょ。少しずつ改善していくから上手くなっていくだけであって」
「……そうだね」
「まあ、セイクルの料理みたいに、向き不向きはあるけどね。情熱や勢いはいいんだけど、そういう人たちって絶対に暴走して余計なことするんだよね……あと、レシピ見ないし」
「……そうだね」
「つ、次に行きましょうか」
「続いては音楽室です。今日は歌のようですね」
「歌か――お母さんの子守唄とイルカとシャチの歌しか聴いたことないや」
「そうなんですね……え? イルカとシャチ?」
ネネと他の生徒が合唱している。みんな上手だ――僕は果たして上手く歌えるんだろうか?
「はい、では次は全員で二小節ずつ、少人数で輪唱していきましょう」
お、次はネネの番かな? 指揮をする先生の合図で彼女は歌い出した。綺麗でかわいらしい歌声だ――ん? なんだか僕の体がちょっとふらついたような……おや? 他の生徒たちも少し様子がおかしい……
パァン!
歌が終わって、学長が両手で大きな音を立てた。僕とみんなはハッとして授業に戻った。
「何がどうなったのです?」
「ええと、どうやらネネは歌の才能と同時に、何かしら魔法力の才能もあるようです。おそらくこのままいけば、立派に催眠魔術を使いこなせるでしょう――私は効かなくて良かったです」
そんなことも起きるんだ……奥が深いなあ。その奥はあまり覗きたくないけど。
その後も様々な実技の授業を学長に見せてもらった。とてもためになったので参考にしたい。
「今日一日、色々な実技をを見てきてどうでしたか? 何か気に入ったもの、やってみたいものはありましたか?」
「そうですね……戦闘系はもちろんやりたいですが……とりあえず料理ができるようになりたいです」
「おや? それはどうしてです?」
「僕が作れるようになれば、救える命があるからです」




