第二章 第六十二話 〜模擬戦と観客〜
「ほお……」
「やりますね、リベル」
学長と神父様がパチパチと拍手した――空気中は音が出る。
僕はというと、必死に火球に対応したので、汗だくだ。
「これは――修練を積めばさらに輝くでしょう。ねえ、ヴォルフレイグ」
「はい。家でも無理のない程度に鍛えましょうか」
「はあ、はあ……他の生徒にもこんなテストするんですか?」
「――やるわけないでしょう」
「危険すぎますから」
「……僕は!?」
「まあ、見ててください」
そう言うと、学長は頭上に右手をかざした。するとさっきよりさらに巨大な火球が出現する。そしてそのまま神父様目掛けて飛ばした。
彼は身動きひとつしない。
「危ない――」
と僕が言った瞬間、学長は開いた手のひらを握りしめて、火球を消した。辺りには熱気だけが残った。
「――というわけで、いつでも消せます」
「学長はこの町一番の魔術使いです。こんなことは朝飯前なんですよ」
すごい……魔術ってそんなこともできるんだ。
「しかしリベル、あなたは不思議な技を使いますね。私が知っている技ともまた違う。もしかしてですが――魔法力がないのですか?」
「はい、そうです。その代わり『スキル』があります。僕が勝手にそう呼んでいるだけですが」
「それであのような戦術を。通常であれば水魔術でかき消したり、結界法術で防いだりするのですが、あなたは普段から攻撃魔法をそうやって防ぐのですか?」
「いえ、初めてやりました」
「……素晴らしい。まれに見る適応力ですね。とても大切なことです。これは将来が楽しみですね――皆さんもそう思いませんか?」
「……皆さん?」
学長がパチンと指を鳴らすと、それまで誰もいないと思っていた校舎の窓が徐々に明らかになっていき、ぎっしりと生徒が僕たちを見つめていたことが分かった。
「え、えええ!? ずっと見られていたの!?」
「そうです。おそらく面白い――いえ、生徒のためになると思って、魔術で見えないようにしていました。さらに、途中から声も校舎中に聞こえた方がいいと思って工夫しました」
「……もしかして神父様もグルだったの!?」
「いえ、私はどうせあの学長のことだから、こんな展開になるだろうと思って黙っていました――」
ガラガラッガラッ!!
教室の窓が一斉に開き始めた。
「すっげえ! あの小さいのやるなあ!」
「あんな動きできるんだ!」
「(リベルぅ! 抱いてぇ!)」
ガアンッ!!
「フィオ! アンタは裏声まで使って何やってんのよ! 私の声マネのつもり!?」
中庭の三人が白い目で音の聞こえた方を見た。
一瞬長くて大きな耳が見えたが、すぐに見えなくなった。
一方、その隣で両手で椅子を持ち上げているオレンジの三角巾が見えた。
「うおっほん――えーと、とりあえず、リベルの戦闘の実技は相当高いレベルにあります。もっと数をこなせば、ひょっとすると私やヴォルフレイグを凌駕するほどに。ある意味ではもう超えているかもしれませんね。
まずは有事の際にどれだけ備えられるかということで戦闘系だけでしたが、明日以降は芸術の実技もあります。楽しみにしておいてください」
僕と神父様はいそいそと中庭を後にした。




