第二章 第六十一話 〜テストと模擬戦〜
「ふむ、なるほど……」
学長が僕を分析していた。
「ど、どうです?」
「――正直なところ、ズバリと言います。頭が良すぎます。回転力が高すぎます。記憶力もいいです。しかし、この世界の知識はほとんどない。ですが、もっと根幹の深い部分の知識はある。リベル、あなたは一体何者ですか?」
僕はギクっとした。前世で別世界から来たなんて言うと、絶対ややこしいことになる――
「学長、まあいいじゃないですか。リベルはリベルです。私の教会の一員で、これからは学校の生徒にもなる。それだけです」
学長がハッとした。そして、小さく溜息をつきながら椅子に深く腰掛けた。
「……そうですね。いえ、ごめんなさいね、リベル。決して脅そうとしたわけではないのです」
「いえ、大丈夫です」
「――そうですか。ありがとうございます。では、本来であれば、今日は月の日――座学だけです。しかし裏を返せば、実技をしている人は誰もいない――邪魔にならないということです。実技のテストもしてしまいましょう。どうぞ、中庭へ」
僕と神父様は学長に連れられて中庭へとやって来た。どうやら学校は『コの字』になっていて、その内側を中庭。『コの字』の開口部の向こう側が校庭という作りらしい。
「ここでやるんですか?」
「そうです。ヴォルフレイグが」
「え、ええ? 神父様が!?」
「わ、私ですか?」
「白々しい。早くリベルの実力を見てみたいと心の中では思っていたのではないですか? だいいち、その方が教会でも教えやすいでしょうし」
「……バレていましたか」
「では、リベル。先にヴォルフレイグが、次に私が相手をします。あくまでもテストですが、あなたは存分にやって構いません」
「……ということです、リベル。よろしくお願いします」
「お、お願いします」
とんでもないことになった。学校で、学長と、さらにまさか神父様とも戦うことになるなんて。どうすればいいんだ?
「――リベル。遠慮はいりません。ギルド長にやったように、攻撃して来なさい。因みに私は結界法術を使いません」
「え? 使わなくても神父様は戦えるんですか?」
「ええ。普段はそんなイメージはないかもしれませんが、多少なりとも格闘技などの心得はあります」
お風呂場では見ているけど、神父様の体つきはそんなに強いイメージはなかった。だけどこの余裕――面白くなってきた。
「わかりました。行きますよ! 『アロー』!」
神父様に向かって右手で矢を連射する。すると、彼は後ろで手を組んだまま全て躱してしまった。
「ええ?」
「どうしました? リベル。因みにこの校舎にも結界法術がかかっているのでどれだけ派手なことをしても滅多なことではびくともしないはずです」
僕が学長に目をやると、玉ねぎ頭が軽く揺れた。
「……わかりました。どんどん行きます! 『アロー』!」
「むっ、さっきより……多い!」
僕はさらに矢を連射する。神父様はそれでも躱していく。
「まだまだ! 『アロー』!」
「何っ!」
僕は両手で『アロー』を連射した。神父様は大きく避けることになった。さすがにもう後ろで手は組んでいない。
「これならどう?」
僕は両手の『アロー』の射角を大きく開き、徐々に狭めて神父様を追い込んでいった。
「ちょ、ちょっと待って……ええい、仕方ない!」
彼がこちら目掛けて飛び出した。接近戦だ。僕も迎撃態勢に入る。
向こうの左ジャブ、こっちは頭で避ける――と思ったら、左の軌道が変わった? フックではなく、爪が襲いかかる。
僕は頭を前へ滑らせた――いや、違う! おそらく屈んだほうがいい! そう思った僕はそのまま肩を入れて前転した。
神父様は一連のフェイントをすり抜けて、最終的に僕の体を掴みにいったが、失敗に終わってしまった。
「……やりますね」
「……神父様こそ――って!?」
不意打ちで僕の顔に一直線に人より大きな火球が飛んでくる。学長がいた方向からだ。幸い速度はそこまでではない。僕はバックステップした――が、曲がった! 追いかけて来る! 必死に逃げる僕、しかし、どこまでもついてくる! どうすればいい? 結界法術とか使えないし、何かいい手段は……そうだ、一か八か! 立ち止まって振り返り、叫んだ――
「『バイト』!」
巨大な光の『顎』が出現する。
シュッ!
火球は跡形もなく消え去った。




