第二章 第五十九話 〜ギルドカードと日にちの関係〜
「むふー……!」
夕食後にギルドカードを眺める。金色に輝く光沢に僕はご満悦だ。
「リベル! ギルドカード見せて!」
「いいよー!」
「うわあ、やっぱりカッコいいなあ」
「僕も欲しいなあ」
「キラキラしてる――」
もちろん、冒険者ギルドから帰って来てすぐにみんなに見せたけど、何度でも見たいらしい。僕はカードの右下に軽く触れる。すると文字が浮かび上がってきた。
『リベル Eランク』と表示されているらしい。なんとなく読めるような気もするけど、いまいち分からない。
神父様はそんな僕らを見てニコニコしている。
「神父様、ありがとうございます!」
「いえいえ、私は何もしていませんよ」
「神父様が冒険者ギルドに連れて来てくれなかったら、ギルドカードも持てなかったと思います」
「いえ、遅かれ早かれ、リベルの実力であれば、すぐにギルドカードは持つことになったでしょう。私はギルド長に引き合わせただけです」
「そう言えば、神父様の金色の『盾』、格好良かったですね。あれも魔法ですか?」
「そうです。あの時のは『結界法術』といって、何かを守ったりする法術です。リベルは残念ながらできませんが、他の皆さんはそれができるように修練しているのです。法術では回復法術、補助法術がありますが、結界法術が一番難しいんです。前者二つは多少なりとも使える人が多いのですが」
「なるほど――え? みんなも回復法術と補助法術、使えるの?」
「できるよ。少ししか使えないけど」
「すり傷が治るくらい――でも時間はかかるよ」
「風邪が良くなる――気がする」
「……」
まあ、そんなもんか。そう考えると僕がどれだけ異常なのかが分かる。目が飛び出ても、胴体切断されても治ったもんな……死ぬほど痛いけど。
「私は回復、得意よ!」
セイクルが胸を叩いた。
「そうなの?」
「少し時間はかかるけど、打撲やたんこぶくらいなら治せるわね。たぶん骨折でもいけるわ」
「セイクルの法術の才能は素晴らしいです。おそらく、このままいくと稀代の法術師になるでしょう。解毒なども得意ですからね。因みに何でもそうですが、魔法においては『イメージ力』が大事になってきます。例えば結界法術を修得するには『誰かや何かを守りたい』と強く願う気持ちが大切なのです」
やっぱり『イメージ力』が大事なんだな。僕も足で『テア』を繰り出したように――
「……ん? じゃあ、セイクルは解毒するような目に遭ったってこと?」
ピタッ!
セイクル以外のみんなの動きが止まった。
「り、リベル。世の中には知らない方がいいこともあるんです」
「そ、そうよ。あ、セイクル、リベルに実験台になってもらいなさいよ!」
「怖い……」
「ブクブク――」
「みんな何よ! 失礼でしょ!」
何だかよく分からないけど、嫌な予感がする。何だよ実験台って。まだパンドラの箱は開けない方が良さそうだ――
「ところで、学校ってどんなところですか?」
神父様に尋ねた。
「ええと、勉強するところです。どこまでも」
「……どこまでも?」
「教室に教師がいますが、ほぼ補助のようなものです。一週間のうちに月の日と木の日は座学。火の日と金の日は実技と分かれています。水、土、陽の日はお休みです」
……!? え? そうか、曜日の呼び方が違うんだ!
「え、え、ちょっと待ってください。月とか季節ってどうなっているんですか?」
「うん? ああ、リベルはずっと海底にいたから、季節感も分からないんですよね。太陽が最も高くなる日と低くなる日――それらが夏至と冬至。その中間の日、つまり昼の長さと夜の長さが同じになる日――それが春分と秋分です。春、夏、秋、冬と四つの季節に分かれる。
さらに、空にたまたま月という存在があり、満ち欠けがほぼ三十日周期だったので、それに近い周期でそのまま『月』と言うようになった。一年は十二か月に五日足して、三百六十五日です。それに四年のうちに一日追加して誤差を修整する、と。冬至の日が一月一日、そこから一年が始まっていくようになっています。今月は五月ですね」
なるほど、公転周期が地球と一緒なのか。もしかしたら地軸の傾きも?――ひょっとしたら、ここは地球なのか……? ただ元日などは地球とはズレているけど。ある程度分かりやすいのは助かる。
「……因みにみんなは今の神父様の説明、分かった?」
「え!? あ、ああ! も、もちろんよ!」
「そ、そうよ! 常識じゃない!」
「僕は知ってる」
「ZZZ……」
神父様は頭を抱えた。




