第二章 第五十八話 〜初めてのギルドカード〜
「これがお前のギルドカードだ」
「わあ……」
金属のカードに紐を通す箇所がある。カッコいい。カードも賞状も受け取ったことのない人生だったから、なお嬉しい。
「冒険者ギルドにはランクというものがあって、最初は誰でもEランク、つまり一番下から始まる。理由は弱いからじゃなくて、冒険者同士の仕組み、基礎を知ってほしいからだ。
ランクは依頼――クエストというが、それをこなして総合的に上がっていく仕組みだ。ただ数が多ければいいってものじゃない。もちろん一考の余地はあるがな。だがひたすら激弱のモンスターを狩ったとしても、ボスクラスのモンスターがいきなり現れて太刀打ちできるか? ということだ。
協力クエストだって同じだ。素人同然だと協力にもならず、足手まといどころか命を奪う可能性だってあるからだ。なのでリベルほどの実力である程度の経験を積んだら、すぐに次の、その次のランクにいけるはずだ」
なるほど合理的だ。車の免許みたいなものだ。いくら自分の運転に自信があったって、氏素性の分からぬ有象無象を入れるわけにはいかない。
ギルド長とは出会ったばかりだけど、先ほどのやり取りで『コイツなら大丈夫そうだ』というものも判断してくれたのだろう。
「しかし、その『なり』なのに相当強そうだな。通常は魔法力を用いて魔術や法術を唱えたり、強く思い描いたりして何らかの効力を発揮するもんだが、リベルのそれはちょっと違う気がするな」
「あ、僕、魔法力がないんです」
「……何!? だとすると、さっきのそれはなんだ!? というか、今までどうしてたんだ!?」
「また話せば長くなるので要約すると、魔法力がなくて悪い奴らに攫われて捨てられて深海にいました」
「う!? ううん……頭が痛くなってきた……まあ、要するに、苦労してきたんだな――」
ギルド長は考えるのをやめた。賢明な判断だ。
「まあいい。ある程度の強さと知識があって、分別がつけば、初級からギルドクエストは始められるからな」
「――それで、僕、このギルドカードで何をどうすればいいんですか?」
「まずおそらく、ヴォルはリベルの強さが役に立つと思ったんだろう。それはギルドや社会としてもそうだが、何よりリベル自身がそうなるように。
このギルドカードは身分証にもなるからな、例えば他の国や地域に行っても、ギルドカードを提示すれば通れる場所も受けられるクエストも増えていく。可能性が早いうちから広がるから、若くても冒険者ギルドに来るべきだ、そう判断したはずだ」
ギルド長と僕が神父様を見ると、彼は軽く頷いた。
「このギルドカードは冒険者ギルドで受付に見せるのが主な使い方だが、さっき言った通り門番に見せれば通行証の役割も果たすからな」
「でも、僕、魔法力ないから使えないんじゃ……」
「大丈夫だ。ギルドカードの発行や照合、書き換えは受付がやる。特殊な方式と資格が必要だからな。そうじゃないと部外者が偽造し放題になってしまうだろ」
確かにそれはそうだ。偽造がまかり通るシステムであれば意味がない。
「――まあもう昼過ぎだから、今日はギルドのクエストはしない方がいいだろう。まだ慣れていないどころか、やったことがないんだ。うっかり夜になってしまったら大変だからな」
「なるほど」
「というわけで明日以降、時間があれば冒険者ギルドに寄ってみてくれ。明日は――学校か?」
ギルド長が神父様を見て頷いた。
「じゃあ、今後よろしくな、リベル」
「よろしくお願いします。ギルド長」
僕らは握手を交わした。




