第二章 第五十七話 〜港町の冒険者ギルド〜
「ここが冒険者ギルドです」
「うわあ……」
僕と孤児のみんなは神父様に連れられて、冒険者ギルドに来ていた――と言っても、意外に人が少ない。
「大概の冒険者は何かしらのクエストを受けていますからね。休んでいる人もいるでしょうし」
「他のみんなは来たことあるの?」
「神父様に連れられて一回だけ」
「社会見学だ、って」
「では受付に行きましょうか」
僕にとっては初めてで、他のみんなには珍しい場所。キョロキョロしてしまうのは仕方がない。
「――ごめんください」
「あら! 神父様! 珍しいですね。本日はどのようなご用でしょうか?」
受付のお姉さんがにこやかに応対する。
「この子のギルドカードを作ろうと思いまして」
「この子……?」
お姉さんが目線を落とす。それを見た僕は神父様に顔を向ける。目線が合ったので、僕は自分で自分を指さした。すると神父様はコクリと頷いた。
「――と神父様が言っています」
「いや! 神父様! こんなかわいらしい少年がギルドカードを作れるわけがないでしょう!」
その場にいた職員も冒険者たちも、一斉にこちらを見た。
「いえ、私も詳しくは見ていないですが、おそらくとてつもない実力の持ち主です。ぜひ登録をお願いいたします」
「でも神父様――」
「――なんだ? どうしたってんだ?」
二階から大剣を持った赤髪の女性が、ゆっくりと階段を下りてきた。鍛え上げられた体――ドラゴンの尻尾? 装備は軽装で、ピチピチのタンクトップとデニムのようなショートパンツを履いている。かなり刺激的だ――とまじまじと見ていたら、セイクルにデコピンされた……なんで――
「おや、ヴォル。お前だったのか」
「ギルド長、ごきげんよう」
「……レティアって呼んでくれていいんだぜ?」
「――ごきげんよう、スカーレティア」
僕はセイクルに耳打ちする。
(二人とも知り合いなの?)
(そうみたい。詳しくは知らないけど)
「――それで? 用件はなんなんだ?」
「このリベルのギルドカードを作りたいのでお願いいたします」
「正気か?」
「はい」
ふう、とギルド長が溜息をついた。
「ヴォルが冗談を言うわけがない。よし、俺が直々に手合わせしてやろう。リベルと言ったか? 裏に来い」
「て、手合わせですか?」
「そうだ。ここは冒険者ギルドだからな。冒険に適した実力がないと、すぐに死ぬぞ。ヴォルが勧めたのなら、何らかの素質があるんだろう」
僕たちは裏に通された。と言っても、普通の空き地だ。ステージがあるわけではない。
「リベル、武器はあるか?」
「いえ、ないです」
「? 素手か?」
「そうです。あ、槍やモリなら使ったことがあります」
よくよく考えると、戦闘は全て水中で行なってきた。地上では生まれて初めてなんだ。上手くできるかな?
「え、り、リベルが戦うの?」
「そうです。彼の実力を測るにはちょうどいいでしょう」
セイクルたちがあわあわしている。神父様は後ろに腕を回して静観している。
「――まあ素手で構わん。それより、落ち着いているのだな。お前、歳はいくつだ?」
「ええと、七歳くらいです」
「そうか。若いな。ではまず、俺も素手で行くぞ!」
ギルド長がステップインから右フックを繰り出した。僕は内側に滑り込み、右ストレートを打った。パン! という音で左手で受け止められた。
「……ふむ。なかなか様になっている。因みに、回復法術で回復するし、結界法術で地面や俺自身も防御してある。遠慮はいらない。かかってこい」
なるほど、向こうの心配はいらないと。問題は僕自身には他人の回復法術が効くのかは分からないということか。まあ『リカヴァー』もあるから、やるだけやってみよう。
「――では行きます。『アロー』!」
ギルド長目掛けて無数の矢を飛ばす。
「!!」
彼女は身軽に躱していく。
「……驚いたな――!?」
僕はすかさず、懐に飛び込んで叫んだ。
「『テア』!」
僕の腕から光る刃が出た。
「ちょっ!!」
ガンッ!!
ギルド長の体の前に、金色に光る六角形の『盾』が立ちはだかった。ふと目をやると、神父様が右手をかざしていた。
「――まあもういいでしょう。どうやらリベルは全身で武器を生成できるようです。一方、ギルド長は手加減していたとはいえ、武器を置き、防具も持たずに相手してくれました。不公平とは言いませんが、大切なのは『冒険に適した実力がある』ことです。どうですか? リベルの実力は?」
ギルド長は髪をかき上げた。
「合格だ、合格。おそらく、他にも実力を隠し持っているだろうしな。ギルドカードも発行するぜ。説明するから、受付まで来てくれ」
「やった!」
どうやらギルド長に認められたらしかった。




