第二章 第五十六話 〜教会の日常〜
夕飯を食べて食器などを片付けたあと、僕は神父様とチロと一緒にお風呂に入った。結構大きな浴槽だ。『コンフォート』があるから常に清潔ではあるけど、なんというか、お風呂は別格だ。海の中とも違う。
でも、お母さんにタライで僕の体を洗ってもらっていた時を思い出した――あたたかかったな……。
不思議だったのが、神父様はお風呂に入っている時ですら眼鏡を外さないということだ。真っ白に曇っているのに。そもそも『つる』がない。どうやって浮いているのだろう?
そんな神父様とチロはこまめに金魚すくいのポイのような網で毛を取っている。確かに、毛がたくさんあると大変だよね……僕はシャワーで自分の体を洗い流した。
自分の体をタオルで拭き、神父様が用意してくれた着替えを着て脱衣場をあとにすると、女子たちが入ってきた。因みに浴槽はもうキレイになっていて、お湯も取り替えているらしい。生活魔法ってすごい。いや、独りなら僕の『コンフォート』の方がすごいか。
「ちょっと、リベル。私たちの裸、覗かないでよ?」
セイクルとフィオがいたずらっぽく笑う。真似したネネも不器用ながら、にへっと笑う。
「いや、覗かないよ。覗いたとしてもよく裸になる人がいたし、ある程度見慣れているよ」
「え!? ああ、そうなんだ……って、誰のこと!?」
「――えっぷし!! ……ん? 『酩酊クラゲ』食べて、服脱いだまま寝てたの? 私? そして鼻がムズムズする……サンゴの卵でも入ったかしら――」
――なんかどっかで酒乱の第一王女が脳裏によぎった気がするが、確実に気のせいだろう――
僕らは二階で布団を敷いて、五人で寝た。寝室はだいぶ広かった。真ん中でカーテンが仕切られていて、階段から上がって右側が男子用、左側は女子用だ。神父様は地下で一人で寝るらしい。因みにカーテンはある程度、防音と遮音になっているという優れものだ。
「狭くなってごめんね、チロ」
「ううん。リベルが来てくれて良かったよ。二階では僕の寝る場所は広すぎたし、一方で男は一人だけで肩身は狭かったから……」
「……苦労してきたんだね」
ふとカーテンの向こうを思いながら、僕は眠りに就いた――
(ちょっと! リベルのことどう思ってんのよ!)
(まだ今日会ったばかりって言ってんでしょ!)
(『セイクルお姉ちゃん』って言われて顔真っ赤にしてたでしょ! もう好きなんでしょ!)
(だ、だからまだ分からないって!)
(ZZZ……)
「神父様、おはようございます」
「神父様、おはよう」
「おや、リベル、チロ。おはようございます。よく眠れましたか? 顔を洗って来なさい」
「あ、僕は大丈夫です。『コンフォート』」
「「え?」」
僕は顔も歯も磨いていないが、『スキル』を使って自分の体を完璧な状態にした。寝癖も整っている。
「な、何ですと……?」
「リベルすごい……」
「というわけで、僕はそういうのがいらないんです」
「ふむ、なるほど……ですが、リベル、軽くでもいいので他の人と同じことをしなさい」
「え? 何でですか?」
「二つあります。一つは、もしその能力が何らかの理由で無くなったら、いきなり困ってしまうこと。もう一つは、一人だけ他の人と浮きすぎてしまうことです。もちろん、その能力は大変素晴らしいものです。しかし、他の人と合わせるためにも、集団行動ができるに越したことはないでしょう」
僕はハッとした。確かに僕は基本的にはずっと独りだったから良かったけど、誰かと一緒に過ごすにはそういうことも覚えていかなければならない。
「別に怒っているわけではありません。ただ、せっかくこの共に生活する場所ができたのですから、大いに学びましょう。因みに昨日と今日は休みですが、明日からは学校もあります。私も一緒に学校長に挨拶しますので、色々学べるはずですから」
「え、ええ!? 学校? そんなものがあるの?」
そういえばそんなものを考えたこともなかった。やっぱり僕は特殊だったのかな……?
「はい。明日の朝、一緒に行きましょう――ただ、今日はその前に、リベルと一緒に行く場所があります」
「え? どこですか?」
「冒険者ギルドです。他の子たちも来たがるでしょうから、みんな揃ってからにしましょうか」




