第二章 第五十五話 〜教会の食卓〜
「ではまず『リベル』と呼んでもいいですか? 同じ家に住む以上、家族なので」
「もちろん大丈夫です」
いきなり家族と呼んでくれた。むず痒いが、嬉しい。
「ありがとうございます。それと敬語もなくて大丈夫ですよ」
「え、神父様は?」
「私の敬語は性分みたいなものです。気にしなくてもいいですので」
「わかりました、神父様」
「……まあ、お互いに徐々に慣れていきましょう。では、他のみんなの名前を覚えましょうね――セイクルは分かりますか?」
「大丈夫です。一番最初に話してくれましたし」
僕は彼女の方を向いた。
「そうよね、改めてよろしくね、リベル」
「よろしく、セイクルお姉ちゃん」
「ちょ、ちょっと! その呼び方はもういいの!」
「セイクル、顔赤いよ」
「フィオ! うるさい!」
「――次にフィオはウサギの獣人、元気な女の子です。大きな耳が特徴です。ただ、耳が垂れていることもあり、たまに聞こえにくいので注意しましょう」
「よろしくね、フィオ」
「よろしく! リベル!」
フィオはジャンプしてみせた。長い耳が揺れる。
「――続いては、チロです。ヤギの獣人、知的な男の子です。因みにフィオよりも高くジャンプできたり、高い崖なども平気です」
「チロ、よろしく」
「リベル、よろしく」
チロが手を差し出してくれたので、僕もそれにならって握手した。
「――最後に、ネネ。羊の獣人です。彼女は……常に眠そうです」
「そ、そうなんだ……ネネ、よろしくね」
「よろしく――」
「本当に眠そうだ……」
「ううん。今は眠くない。ツノが重くて疲れたの――」
……人によって色んな悩みがあるんだなあ。
その後、神父様によって、教会の他の部屋も案内された。一階は礼拝堂と台所、食堂、お風呂とトイレ。二階は寝室と物置。さらに地下室もあった。そこは神父様の仕事部屋になっているらしい。
「では、一通り案内したところで、食事の支度をしましょう。今日はリベルが獲ってきてくれたタイとカツオがありますので――焼いて、各種調味料でいただきましょうか」
「やった――」
「ネネ、お魚食べたいって言ってたもんね」
「――ところでみんなは、魚食べられるの?」
「? みんな好き嫌いはないよ」
一瞬、草食動物なんじゃあ……と思ったけど、この世界はそんなこともないのか?
「じゃあ、私が料理するね」
「あ、あ、せ、セイクルはお皿など、食器の用意をお願いします。こ、今回はリベル、君は初めてなので、手伝ってくれますね?」
「そ、そうだよ。セイクル! フィオと一緒に手伝おう!」
「え、ええ? じゃあ――」
セイクル以外のみんなが明らかに焦っている。何なんだろう? まあいいか。
神父様に言われるまま、僕は台所で鱗を取った。
「そういえば、僕、魚の鱗、取ったことないや」
「おや? そうなのですか? 海中ではどうしていたので?」
「食堂や城では、おばちゃんやシェフが作ってくれていたので」
「そ、そんな暮らしがあったんですね」
「あとは――」
「あとは……?」
「丸ごと食べていました」
「……今までよく無事でしたね」
そしてテーブルの上には焼きダイと焼きガツオが並んでいる。それと別にサラダとスープとパンもある。
「さあ、これがリベルに頂いた魚です。味付けは塩ですが、魚醤もあるのでそれをかけても美味しいでしょう。皆さん、いただきます」
「「「「「いただきます!」」」」」
「!! 美味しい!!」
「え!? タイもカツオも、こんなに美味しかったの!?」
「……なんで普段食べているはずのリベルが一番驚いているのよ」
「いやあ、空気中で焼くことも、食べることもないから新鮮で……」
僕以外の全員がドン引きしている。
「……苦労してきたのね――」




