第二章 第五十四話 〜教会の決定〜
みんな、まだ固まっている。
僕は細く穿った『スティング』でタイとカツオの脳天を串刺しにして、『スウィム』で神経ごと洗い流したから、鮮度は抜群ですよ! とか言いたいが、とてもそんな雰囲気ではない。
「す、凄すぎる」
「魔法力要らないじゃん」
「また漏れるところだった……」
なんというか、悲喜交交だなあ……ところでまたって何?
「確かにリベル君には魔法力がなくても問題なさそうですね……でも何故そんなことができるのです?」
「それは僕にもよくわかりません。とりあえず教会に行きませんか? 魚が悪くなってももったいないですし」
「そ、そうですね。皆さん、行きましょう」
道中、白熊の獣人の漁師さんにスカウトされたが、先を急ぐからその話はまたのちの機会にと言っておいた。
教会の中で僕らは椅子とテーブルについた。タイとカツオは冷蔵庫に入れておいてくれるらしい。そうか、地上にはそんな便利なものもあるのか。
「――リベル君、つかぬことをお聞きしますが、君は一体何者なのです?」
「いやあ、一応人間なんですけど……」
「普通の人間がスイスイ泳げるわけがないでしょう。最後はトビウオかと思いましたよ」
「まあ神父様、リベルはよく分からないけど、悪い人ではないと思うよ。吐くけど」
セイクルに『ルナティック=リバース』を見られていたとは――
「それは久しぶりの陸地だったから勝手が分からなくて……」
「どうやら本当に海中に住んでいたようですね。いや、疑うような真似をしてしまい、申しわけありませんでした」
「いえ、仕方ないです」
「産まれてからずっと海中にいたの?」
「いや、違う。陸地に産まれて二年後に、悪い奴らに攫われて、棺桶ごと川に捨てられたんだ」
「……はあ!?」
「それで、奇跡的に水中でも息ができるようになって、深海で暮らしていたんだよ」
「暮らしていたって、一人でですか?」
「いえ、色んな仲間たちと」
「――もしや、人魚や魚人たちですか?」
「え!? そんなのいるわけないでしょ!?」
「しかし、船乗りがたまに見かけたことがあるとか、漁師が溺れた時に助けてくれたとか――」
「だったらなんでお父さんは助けてくれなかったのよ!」
セイクルがテーブルを叩いて立ち上がった。椅子が転がる。
「あ……ごめんなさい――」
彼女の隣に座っていた僕は椅子を直して、着席するよう、どうぞと促した。
「あ、ありがとう……」
着席したセイクルがうつむく。僕はミレーナの時のように頭をなでた。
「――僕はこの港町の存在を知らなかったし、海はみんなが思っているより遥かに広いんだ。住んでいたところはここよりもっともっと遠くて――深い。おおよそ、地上とは全く関わりのない場所なんだ」
「ごめんなさい――って、いつまでなでてんのよ!」
「あ、ごめん。ミレーナにやっているように『よしよし』しちゃった」
「セイクル、顔真っ赤」
「うるさい!!」
「――なるほど。それで、海中からこの陸地に来てみた、というわけですか」
「そうです。遠いといっても、一番近かったのがここなので」
「ふむふむなるほど。因みにどこか住む『アテ』はあるのですか?」
「いえ、まだ何もないです。来たばかりなので。いざとなったら野宿や海に潜ろうと思っていました」
「危ないわよ!」
「まあ、確かにリベル君であれば問題ない気もしますが――もし良ければ、ここに住みますか?」
「え!? いいんですか?」
「攫われて捨てられた、ということは孤児ということです。ここにいるみんなと一緒でしょう。みんなはどうです?」
「私は別にいいわよ」
「フィオもいいよ」
「チロも賛成!」
「ネネも賛成。お魚食べたい」
「というわけで、今日からここがリベル君の家です。よろしくお願いします」
「「「「よろしく」」」」
「あ、ありがとうございます!」
神父様とみんなのご厚意で、僕の住む場所も決まった。




