第一章 第四十九話 〜深海の二次会〜
「……すごかった」
「でしょう。私、頑張ったんだから」
「一番の功労者はラティナじゃろう」
「親方も頑張ってくれたじゃない」
僕らはそのまま玉座の間で、結婚式の二次会に参加していた。といっても、お祭り騒ぎの延長だ。人が多いのでバルコニーで立食している。
城から中央広場、城下町の正門まで、出店も開店し、思い思いにこのめでたい雰囲気を楽しんでいる。中でもやはり聞こえてくるのは――
「テティカ王女、綺麗だった」
「スキュアルド兵士長、男前だった」
「ああ、私も結婚したい」
「俺も結婚したい」
という声だった。それほど素敵な式だった。
当のご両人と女王は対応に追われていた。大変そうではあるものの、みんながみんな、心から喜び合っていた。
「ミレーナ、ウニ食べれそう?」
「ウニ?」
「見ての通り、殻はトゲトゲが付いているから痛いけど、中身は甘くて美味しいよ。はい、あーん」
「あーん」
僕はウニの殻を割った。そして匙で中身を取り出して、産まれたての第三王女に食べさせた。
「! おいしい!」
「本当? 良かったね」
もし僕にもまともな兄弟がいたら、こんなふうな会話もできたのだろうか。そう思いながらミレーナの頭をなでる。すると背後から声が聞こえた。
「おう、嬢ちゃんが新しく産まれた第三王女か? よろしくな。俺の名前はブレブだ」
「ブレブ! 来たんだね!」
「来たぜ。さっきご両人にも女王にも挨拶してきたからな」
「リベルー! 久しぶりー!」
「おお! みんなも来たんだね! 奥さんも!」
ブレブの三人の子供と奥さんもバルコニーまで来てくれた。さらに――
「ここに来るのは久しぶりじゃ」
「村長!」
「変わってなさそうで安心したわい」
親方と会話を交わす。同窓会とかがあれば、こんな雰囲気なのかな?
「しかし、城での結婚式は久しぶりじゃ。ただ、ここまで演出を凝っているものは初めて見たが」
「あの病弱なラティナがここまでやるとは思わなかったじゃろう?」
「何、今回の結婚式はラティナが仕掛けたのか?」
「そうじゃ」
照れて頭を掻く第一王女。
「久しぶりって、前回はいつぶり?」
「国王と女王の時以来じゃ」
「ああ、なるほど。その時はどんな感じだったの?」
「城下町の門から前の国王と女王が並んで進んで行っただけじゃ。ただ、その時も盛り上がったのは間違いない」
「昔はマイクも時計塔も、なんなら山車もなかったからのう」
「改めて親方すごいな……」
「しかし、まさか先にテティカが結婚するとはのう――」
老人二人が第一王女を同時に見た。
ブホッ!!
ラティナがエビを吹き出した。
「しょ、しょうがないじゃない! 機会がなかったんだから!」
「まあ蟹の一件で甚大な犠牲者が出てしまった。有能な男たちも数多く死んでもうたしな――」
「……」
「というわけでリベル、早く大人になれ」
ブハッ!!
今度は僕がホタテを吹き出した。
「やはりそれしかないのう」
「第三王女も、頼んだぞ。子種だけでもいいからな」
村長が笑顔でウインクした。この野郎。
「産まれたばかりの子供になんてこと言うんだ!」
ミレーナは老害どもには目もくれず、僕らが吹き出した浮遊物に寄ってきた魚を見ている。そのままの君でいてほしい。
「――ジジイどもは何の話をしてるんだ?」
「さあ? 種付けがどうとか」
「まあ、深刻な問題だな」
「お! 三人とも来たんだね!」
フィンリー、シード、ギルバートもやって来たと思った瞬間――
「「「リベル、諦めろ」」」
「揃えて言う言葉がそれかよ!」
もうダメだ。海底には味方がいない。
「そんな三人はどうなのさ?」
「いや、俺ら恋人いるし」
「……そうなの!? 今日も来ているの?」
「来ているぞ」
「え!? どこ?」
「踊ってただろう」
「……え、えええ!? 踊り子さんたち!? 三人とも!?」
「そうだぞ。機会がなかったから言わなかったが」
僕も驚いたが、傍から聴いていたラティナもびっくりしたらしく、彼女の近くの残飯処理魚は増えていた。ミレーナはそれを眺めるのに忙しそうだ。
すると何を血迷ったか第一王女が脱ぎ始めた。
「い、今すぐ私と子作りしましょう!!」
「教育に悪い!!」
僕はホタテの貝殻をラティナに投げつけた。




