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第一章 第四十七話 〜地上への準備〜

「そうか、地上に行くことを決めたのか」

「うん、スキュアルドとテティカの結婚式の後に出発しようと思うんだ」

「そうか、さみしくなるな」

「うん、そうだね――」

 

 女王の出産とミレーナのお披露目が終わったあと、僕は魚人の村でブレブと共に食堂に来ていた。おそらく最後になるであろう今回は、彼の好物の漬け魚を注文した。

 その前に村長や村のみんなとも、お別れを言ってきた。

「ああ、これは本当に美味いね。僕ももっと食べれば良かったよ」

「だろ? まあ、たぶんそういうもんさ。故郷の味は、後々食べたくなる」

 僕らは食堂のおばちゃん特製のタレを使った自慢の一品を堪能する。

「そういえば、子供たちは?」

「もう相当動けるし、戦えるようにもなったな。俺もグローブと推進器改を取り入れて、戦いの幅が広がったろ? 子供たちにはそういうものも徐々に教えているんだ」

「もう英才教育だね――三人衆は?」

「それぞれ漁に出ているぜ。今後は城の稽古も続けていくらしい。いい傾向だ。今回のことで未知の敵にたいしても想定しなければならないことが分かったからな――」

「……ねえブレブ」

「なんだ?」

「自分で海底から地上に行くって決めたのに、さみしいと感じることは、わがままなのかな?」

「――いや、普通のことだろ。この先何度も訪れるぜ、そんな瞬間が。決断の時は誰だって何だって、様々な感情が起こるものさ」

「……そっか。僕、ブレブと会えて良かったよ」

「おいおい。結婚式に俺も参列するんだぜ? そのセリフはまだ早くないか?――でもありがとよ、相棒」

 相棒同士、拳と拳をコツンと合わせた。

 

 

「お前さんには工房を継いでもらおうと思ったんだが」

「いや、光栄だけど無理だよ」

「ママと呼んで」

「だから無理だって!」

 魚人の村から工房にやって来た僕は二人と話していた。

「まあ、親方の超技術はすごいけど、僕は地上も見てみたいんだ」

「水中だと色々制限されるからのう」

「魔術レンジは無理だしね……」

「本当の意味で兵器になってしまったからのう」

「私もヤバかった」

「母体にも悪いよ。発生した塩素は猛毒ガスだから、アトピーや喘息になるよ――そう言えば、赤ちゃんは元気?」

「うん。まだ性別はハッキリしてないけど、リベルとつがいになるから」

「今、性別ハッキリしてない言うたやんか」

「根拠は?」

「女のカン」

 ――根拠はないはずなのに、何故か女のカンは当たるらしい。そういえば、男のカンってあまり言わないな。なんでだろう? まあいいや。

「それで親方にお願いがあるんだけど、僕の油時計、もらってくれない?」

「うん? なんでじゃ?」

「え? いや、だって、僕地上に行くからさ、邪魔になっちゃうよ」

「城にそのまま置いておけばよいじゃろ。メイドか誰かに校正してもらって」

「いや、悪いよ」

「置いておけ。誰かが通る度に思い出すかもせんぞ。あとで細工しておいてやる。『海底の脅威を退けた英雄リベル、ここに眠る』」

「まだ死んでない……」

「ここに眠るは冗談じゃが、それ以外は文字で彫って、のこしておく。巨大な像とかよりもええじゃろう」

「私も城で手入れしておくから」

「ありがとう」

「毎日その時計を見る度に娘に聴かせてあげる。英雄リベルの物語を。子守唄と共に」

「本当にやめて」

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