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第一章 第四十六話 〜第三王女のお披露目〜

「だから勝手に外堀を埋めんなっつうの!!」

 

ガミガミガミガミガミガミ

 

 僕は女王と第一、第二王女、兵士長とメイド長を正座させて説教した。何故かそれを見て第三王女まで正座している。

 

「だってえ、良かれと思って……」

「やかましい!」

「じゃあ私とする? 人魚だから老けないよ」

「黙れ酒乱!」

「ママと呼ばれたかったのに」

「だから早いって!」

「パパと呼ばれたかったのに」

「黙れスッきゅん!」

「何故私まで……」

「止めようと思えば止められるはずなのに毎回止めないからでしょ!」

「バレてた……」

 ミレーナはきょとんとしている。僕も別に新生児の前で説教したくはない。


 僕は大きく溜息をついて語り出す。

「……僕の名前は知ってる?」

「……リベル(ちゃん様)」

「……なんか変なものが混ざった気もするけど、名前の意味、知ってる?」

「知らない」

「いいかい。実はね? 僕のリベル、って名前は『自由』って意味なんだよ。この世界の本当のお母さんが付けてくれた、大切な名前なんだ。前世では、あらゆる意味で縛られていたからね。もちろん、この海底世界、城下町も魚人の村も大好きだけど、僕は地上も含めて世界を体感したいんだ。そして、お母さんを探しに行きたい。それが僕の目標であり、夢、すなわち『自由』。だから僕は何にも縛られたくはないんだ」

 

 みんながハッとし、うつむいた。別に暗い気持ちにさせたかったわけじゃない。反省してもらいたかっただけで。

 すると、ミレーナが僕の頭をなでなでしてくれた。僕はそれを見て笑いかけたあと、彼女の頭もなでた。

「なので僕は、スキュアルドとテティカの結婚式が終わったら、地上に向かおうと思う。理由はさっき言ったことだよ。みんなにはすごくお世話になったけど、色々なことが落ち着いたから、ちょうどいいかな、って」

「リベルちゃん――!!」

 泣き顔の女王が迫ってきた。そこにミレーナが立ちはだかった。

「ミレーナちゃん……」

「おかあさん、めっ」

「あああ、うううわあああ――」

 女王はミレーナをハグした。

「分かったわ、リベルちゃん。そこまで言われたら、もう止めないわ」

「僕もこんなお祝いの場面で言いたくはなかったんだけど、あまりにも一同の奇行が酷すぎて――」

 一同は全員顔を背けた。ミレーナを除いて。

 

 次の日の朝、イルカの通信兵が女王に第三王女が産まれたことを城下町に報せて回った。正午に城のバルコニーでお披露目をするらしい。歓喜のニュースに町中が沸いた。

 正午の銅鑼が鳴り響く。すると女王が第三王女を抱きかかえて出てきた。第一王女と第二王女はそのすぐ後ろに控えている。僕はバルコニーの袖でそれを見ている。


わああああ――!!

 

 大歓声が巻き起こる。

「女王ーー!!」

「王女ーー!!」

 今まで悲しい事件ばかりだったから、王女誕生の喜びようは相当なものだ。全国民が心から祝っている。

 拡声器ではなく、マイクを口元に近づけられる女王。よくよく見ると、スタンドとアンプを支えているのは親方だ。本当になんでもできるなあの人。残りの触手でケーブルまで捌いている。

「お集まりいただいている全国民の皆さん。女王ベラルーナです。私はここに第三王女、ミレーナが誕生したことをお報せいたします」

 

うわああああ――!!

 

 また歓声が挙がる。ヒトデ祭りよりも平和だ。「ではここで、第三王女の声を皆さんに届けたいと思います」

 ミレーナ、できる? と小さな声で問いかけると、彼女はコクンと頷いた。親方がマイクの位置を調節する。

「こんにちは。はじめまして。ミレーナです」

 

うおおおおおお――!! 

 

 怒号にも似た響きが城下町に轟く。すごい人気だ。そして賢い。昨日の今日とは思えないほどしっかり喋っている。どっかの酒乱をすぐに追い越すんじゃないか?

 

「わたしはおとうさんとおかあさんからうまれました。おとうさんのかおはしらないけど、こえはすこしだけおぼえています」

 

 僕はスキュアルドに向かって小声で話す。

(本当に人魚ってここまですぐに話せるものなの?)

(んなわけねえだろ、俺だってびっくりしてるわ!)

(アンタがさも当然のように言うからだろ!)

 もはや酒乱を超えた天才だ。いや、酒乱を引き合いに出すのはミレーナに対して失礼だ。因みにさっきから第一王女はくしゃみを連発している。

「リベル、スキュアルド、こっちにきて」

 僕とスキュアルドは呼ばれた気がするがピンと来ていない。するとミレーナが女王の肩越しに振り返り、目線を投げた。僕らは顔を見合わせ、自分で自分を指さし合った。そしてバルコニーに出ていき、女王が演説した場所に向かう。第三王女が話し始めた。

「くにのてきをたおしたリベルとスッきゅんに、もういちどおおきなせいえんを」

 僕と兵士長が大きく手を挙げると、この日一番の声量が押し寄せた。

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