第一章 第四十四話 〜海底の外堀〜
「うーむ。後継者の問題はどこも深刻じゃな」
親方が腕組みと触手組(?)をする。どうなってんのそれ?
「それもそうだろうけど、親方頑張りすぎだから外部委託しようよ。たぶん真っ裸の人が得意だよ」
「誰のことじゃ?」
「ラティナ。さっき起きたら裸族が僕の部屋に進入していた」
親方は頭を抱え、テティカは顔を覆った。
「何を考えとんのじゃあいつは」
「昨日の晩『酩酊クラゲ』を食べたらしいから、たぶん何も考えてない」
二人はさっきと同じポーズを取った。
「そういえばテティカ、結婚式の準備は順調?」
「順調。なんだけど、先にお母さんの赤ちゃんが産まれてからになるかも」
「あ、そうか。そっちの方が先だね」
「逆だと大変なことになるかもしれないし」
「……それもそうだね。そういえば、テティカも妊娠したんだっけ?」
「そう。うれしい」
「おめでとう! そういえば、こういう時って何をあげたらいいんだろう……?」
「リベル」
「……は?」
「リベルと私たちの赤ちゃんが結婚すればいい」
「な、何言ってんの! まだ早いよ」
「大丈夫、問題ない」
「あるよ! まだ男か女か分からないんだから」
「大丈夫。呪いをかけておいた」
「海底に呪いって概念あったんだ……」
「モテる男はつらいのう」
「親方まで……」
「でも普通のことじゃぞ? 強くて優秀な男だ。何度城下町と魚人の村を救ったと思っとる」
「ママって呼んで」
「だから気が早いって!」
工房からげっそりしながら家路に就いた。なんだか今日も疲れた気がする。自分の部屋で油時計の油滴でもボーッと眺めていれば、時間も忘れられるかもしれない。時計なのに。
なんてことを思っていると、城の庭に兵士が集まっているのが見えた。
よく見るとマリィとエリィが戦っている――あれ? 一対一じゃない。更に誰かが相手をしている。
二本の槍を所持している――フィンリーだ!
マリィとエリィが両側から高速で迫り、槍を繰り出す。しかしそれよりも早く、遠くへゴム槍を射出し、喉元に寸止めする。彼はこんなに強かったのか。
「まあ力ならお嬢さん方のほうが強いけどな」
スキュアルドを含め、兵士たちが拍手している。だが水中なので音は鳴らない。意味あるのかそれ。
ドシュドシュドシュ!
「こういうものも、場合によっては役に立つだろう」
ギルバートが網のカプセルを射出する。敵役の兵士が身動きが取れなくなった。やはり拍手はしているが鳴り響かない。
「どれが本物か分かるかな?」
今度はシードが囮の中に紛れ込み、本物を指さし多数決で当てるゲームが始まった。ついでに僕も解答者側で参加してしまった。
「模擬戦じゃなかったの?」
スキュアルドに尋ねた。
「いや、俺もその予定だったんだが、三人とも特性が違うから、気づいたらこうなっていた。というか目を覚ましたんだな、リベル」
兵士たちと戦士たちは楽しそうだった。
「……ヒトデを投げられるくらいなら、こういうお祭りがあってもいいのに」
「……それは俺も同感だ」
被害者二人が同情した。あれはひどかった。
「そういえば、三叉槍ってああやって作るんだね。知らなかったよ」
「ああ、すごいよな。親方のあの技術は俺も訳が分からねえ……」
「それはそうと、女王はもう産まれそうなの?」
「ああ、二、三日したら産まれると思うぜ。国を挙げての久々の吉報だ。盛り上がるぜ」
「そのあと、結婚式?」
「そうだな。ようやくだ」
「結婚式って何やるの?」
「ああ……まあほとんどパレードと一緒だな。ただ最後に玉座の間で女王に対して宣誓する感じだ。しかし、感慨深いなあ。リベルと出会ってまだそんなに経ってないのに、もうこんなに馴染んでいるんだぜ?」
「まあ、色々あったからね――」
「リベルのことを息子と呼ぶ日が来るとはな」
「だから気が早いって!!」




