第一章 第四十二話 〜海底の決着〜
僕らは上に百メートルほど垂直に進んで、辺りを見渡した。
「ここはどこだ?」
「ここは――蟹がいた場所の真上だ」
「……おい! 下を見てみろ!」
砂が舞い上がる中、六人が遺跡だと思っていたアンコウがのたうち回っているのがわかる。ただ、それを見て絶句した。全長は二百メートルほどあったのだ。
「こんなデカい化物と俺ら戦っていたのか?」
「もうちょっと上に行こう。ほぼないとは思うけど、万が一吸い込まれたら大変だ」
「確かにそうだな……ん? ちょっと待て。もがきながら少しずつ進んでないか?」
「何だと? というかこいつ、よく見たら歩いているぞ!」
「この巨体でカエルアンコウなのか! ん? もしかしてこの方向、また城下町を狙ってる!?」
「させるか! とはいえ、どうする? 俺のグローブはお釈迦になっちまった」
「俺の超高熱ユニットももうない」
「俺の二本のゴム槍はまだいけるぜ」
「よし。アンコウの移動はまだ遅い。僕とフィンリーはアンコウを狙う。他の四人は城下町に急いでくれ。もしかしたら親方が武器も用意してくれているかもしれない」
「わかった!」
城下町部隊は先を急ぎ、僕たちはアンコウを食い止めるために攻撃を仕掛ける。
「フィンリーはアンコウの背中か、側面を狙ってくれ。前方は口で吸い込まれるかもしれないし、後方は尾ビレで殴られても厄介だ。僕は吸い込まれないように注意しながら頭を狙う」
「任せとけ!」
フィンリーが背中と側面の間にスタンバイする。ちょうど僕らが穴を開けたすぐ隣だ。
「さて、どれくらい槍が通じるかは分からないが、やるだけやってみるか――ってああ!?」
フィンリーが伸びる槍を躱す。影兵士と影魚人だ。
「まだいやがったのか!」
一方、僕もアンコウの頭頂部付近でその二種類の敵と戦っていた。
「邪魔だ! 『アロー』!」
影魚人を仕留めつつ、アンコウにも仕掛ける。しかし、刺さりはするものの有効打にはならない。
だんだん城下町に近づいていく。
「くそっ! 早くトドメを刺さないとならないのに」
蟹の超スピードとは違い、アンコウは遅い。しかしヒドロ虫の疑似餌と、おそらく吸い込みがある。何より巨大すぎて攻撃がほぼ通らない。しかも国王たちという犠牲者の味と記憶を覚えてしまっている。時間をかけてしまえばしまうほど危険極まりない。
「何か……何か方法はないのか!」
僕は攻撃を躱しながら作戦を練る。すると。
ドシュドシュドシュ!
アンコウの頭におびただしい量のネットが広がった。しかもオニヒトデのオプション付きだ。
「ゴオオオウアアアア!!!」
アンコウが叫ぶ。しかし、口元にはネットがへばりついている。
遠くのギルバートが手を振った。
さらに、いつの間にかあちこちにシードダミーがたくさん浮かび上がる。影兵士と影魚人たちは完全に戸惑っている。
ボシュボシュボシュ!
ブレブがグローブで敵を次々と粉砕する。
「アツい夜の始まりだぜ! 本当に今は夜だぜ!」
一人ノリツッコミまで始めてしまった。まさに無敵の人だ。だが頼もしい。
「リベル、フィンリー、待たせたな!」
スキュアルドが戻ってきた。彼の後ろには、マリィやエリィ、そして多くの兵士たちの姿もあった。
「「国王と仲間たちの仇、思い知れ!!」」
兵士たちは次々に超高熱ユニット付きの槍で攻撃した。
ズドオン!スドン!ズドオオオン!!
さながら集中砲火だ。どんどん穴が開いていく遺跡アンコウ。
「ゴオオオウアアアア!!!」
もはや完全に虫の息だ。目玉や内臓も吹っ飛んだが、まだ動いている。
僕は『パラライズ』『アロー』『スティング』を限界まで叩き込む。やがて、巨体が激しく痙攣し始めた。
トドメを刺そうとした瞬間、呼び止められた。
「リベル。私たちにやらせてください」
振り向くと、第一王女ラティナ、第二王女テティカ、そして女王ベラルーナが揃っていた。親方もその隣に控えている。
「女王、こちらを」
スキュアルドがユニット付きの槍を女王に手渡した。三人がしっかりと槍の柄を握りしめる。親方がユニットのスイッチを押した。
「後は最期に槍を刺してくれ」
三人はコクリと頷いて槍を振りかぶった。
「「「ああああああ!!!」」」
アンコウの脳天にユニットが深く突き刺さり、全員が即座に離脱する。その直後。
ズドオオオオン……!!
王国の仇敵は完全に沈黙した。




