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第一章 第四十一話 〜海底遺跡の正体〜

「やったな、スキュアルド」

「終わったな、兵士長」

「……ああ」

 僕とブレブが彼の肩を叩く。想いは相当、複雑だっただろうに。

「さあ、戻ろう。テティカと結婚式挙げるんだろ?」

「そうだ。俺の奥さんと子供たちも参列させたいしな」

 なんてことを言いながら振り返った瞬間。

「ぐあっ!」

 シードが叫んだ。

「どうした!?」

「みんな、床付近に留まるな! 上に上がれ!」

 黒いモヤと透明なジェル状の液体が足元からせり上がってくる。よく見ると、壁からも同じものが大量に垂れ始めていた。

 僕は咄嗟に『アロー』を連射した。だが、放った矢はジェルの途中でピタリと止まり、ジュウと音を立てて溶け出した。

「何だ、これは……!?」

 あたりを見渡す。いつの間にか、僕たちが来た入口もあのジェルで完全に塞がれていた。これはもしや――。

「胃酸だ!」

「はあ!?」

「こいつは遺跡なんかじゃない! 光る壁とヒドロ虫の疑似餌でおびき出し、獲物を捕食する『アンコウ』だ!」

「何? この巨大な遺跡がアンコウ!? 生き物なのか、これは!」

「そうだ! 魚人の村にいた奴らも、こいつが作った疑似餌だったんだ! 目的は僕らを倒すことじゃない。最終的にここに連れてきて、食糧と『知能』を獲得するのが狙いだったんだ!」

 まくしたてる間にも、徐々に溶解液は容赦なく迫ってくる。

(前の時はアンコウも共生していた蟹も、おそらく小さかったに違いない。だから魚人の姿形だけ模倣して、戦闘に特化させていたんだ。今回の影兵士の脆さも、徐々に強くなる敵も、すべては僕らをハメるための試行錯誤だったってわけか……!)

「じゃあ、リベル! つまりはどうすんだ!」

 ブレブの怒号に、僕は思考をフル回転させて突破口を探す。

「上だ! 入口は塞がれたし、底は溶解液が溜まっていく。だが、重力がある限り、底の胃壁は溶解液に耐えるために分厚く出来ているはずだ。なら、狙うのは天井だ!」

 僕は天井の溶解液を『バイト』で強制的に削り取った。

「ギルバート、オニヒトデを二、三匹、あの天井の隙間にくっつけて!」

「分かった!」

 銃から射出されたオニヒトデが天井に吸着する。目論見通り、生体素材である天井の肉が、じわじわと溶け始めた。

「よし! この素材ならオニヒトデで溶かせる! ということは、この胃壁にも剛性はあるものの、柔軟性もあるはずだ!」

 オニヒトデは肉壁の奥へ深くめり込んでいく。サンゴを破壊するように。しかし、足元の溶解液もすでに無視できない量に達していた。

「フィンリー、オニヒトデを剥がして!」

 フィンリーが鋭い槍先でオニヒトデを弾き飛ばすと、そこには漬け魚の壺ほどの大きさの生々しい穴が開いていた。

「ブレブ! その穴にグローブを叩き込んで!」

「任せろぉ!」

 ブレブが左拳のユニットを最大起動し、肉の穴めがけて拳をぶち込んだ。

 

ボシュ!

 

 鈍い衝撃音が響き、穴の奥の組織が裂ける。さらにフィンリーが槍の乱れ突きを繰り出し、強引にその穴を広げていく。

「スキュアルド、トドメを頼む!」

「わかった!」

 兵士長が最後の超高熱ユニットを槍に装着し、広がった穴の奥深くへと突き刺した。眩しく点滅したのち、肉の内で爆発が巻き起こる。

 

ズドオオオン!!

 

 凄まじい衝撃と共に、直径七メートルほどの巨大な破孔が開いた。

 

ゴゴゴゴゴ!

 

「な、何だ!? 揺れが激しくなったぞ!」

「みんな、その開いた穴(肉壁の中)に飛び込んで! 胃壁をぶち抜かれてアンコウがのたうち回っているんだ!」

「溶解液がこの穴に流れ込んでくるんじゃないか!?」

「大丈夫、もしそうなったらアンコウ自身も胃の内側を溶かされて大ダメージだ。そこまで自傷行為はできないはず!」

 六人は滑り込むようにして肉壁の穴の中へと避難した。リベルの読み通り、アンコウが狂ったように暴れ回ると、溢れた溶解液が自らの傷口に触れるのか、より一層もがき苦しむ振動が伝わってくる。

「ここからは僕の出番だ!」

 『バイト』『スティング』『シザー』を絶え間なく繰り出し、外殻に向かって上へ上へと強引に掘り進める。アンコウは激痛で狂わんばかりに巨躯をよじらせている。

「そろそろ、出るぞ……!」

 手応えが変わった。最後の『バイト』で分厚い皮を食い破ると、激しい水流と共に、六人揃って海底へと脱出することに成功した。

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