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第一章 第三十八話 〜網と拳のパーティ〜

「毎度毎度、頭に来るなあ!」

 ブレブが激昂している。

「スキュアルド、気にしたらダメだ」

 僕は兵士長を案じる。

「ああ、俺は大丈夫だ……」

 発言とは裏腹に参っている。正直、もう僕も我慢の限界だ。

 次の部屋に出た。また鎧をまとった影兵士たちがいる。今度も三十人ほどだろうか。

「……?」

「何だ? ありゃ」

 様子がおかしい。上下左右に散らばって群れをなすのならばわかる。ただ今回は、向いている方向もバラバラ、角度もバラバラだ。垂直から三十度傾いているやつもいれば、百三十度傾いているやつもいる。しかし、目線はこちらにある。異様な光景に息を呑む。

「スキュアルド、人魚の隊列にあんな組み方があるの?」

「いや、ない。普通はある程度連係を組むもんだ。そうでなければそもそも行動が取りにくい」

 あらゆる意味でバラバラということは、襲って来る位置も向きも行動もバラバラということだ。まだ、部屋の中でわざわざ待ち構えてくれていただけでもありがたいくらいに。

「じゃあ、ある程度行動が制限できればいいんだな?」

 そう言うと、ギルバートは銃から四回分、カプセルを連射した。すると中から網が広がる。影兵士たちは絡め取られ、もたついている。

「お前の武器は優秀だな」

「ブレブ、油断するな、トドメを刺せ!」

「はいよ!」

 僕らはブレブを先頭に攻撃を仕掛ける。次の瞬間、槍が一斉に彼に襲いかかった。

「危ない!」

「食らうか!」

 ブレブは推進器改を使い、華麗にサイドステップした。また次の槍が側面から狙う。しかし、それもバックステップで避けてしまった。

「……すごい。僕も『スウィム』ではあの動きはできないのに。みんなは使いこなせそう?」

 スキュアルドたちが首を横に振る。どうやらムリらしい。

「相当鬱憤が溜まっていたからなあ、派手にやらせてもらうぜ!」

 影兵士たちは槍だけでなく、今度は自分の手の指も槍のように伸ばして突き刺しにかかった。だが、かすりもしない。ブレブはこんなに強かったのか? それとも推進器改が優れているのか?

「ブレブ、酔わないの?」

「大丈夫だ! 我慢している!」

 やっぱり吐きそうにはなるんだ。思わず「ゲロの第一人者」を振り返る。

「こっち見んな!」

 

「アツい夜の始まりだぜ!」

 

ボコォ! バキィ! ドカァ!

 

 ブレブは生き生きと影兵士たちの顔をグローブで殴る。爆発してないところを見ると、超高熱ではなさそうだ。因みに、今は昼過ぎである。

 僕らも残りを片付ける。ところどころで「スキュアルド」という声が出かかるが、無視して速攻で決着をつけた。

「しかし、このテティカ嬢ちゃんが作った推進器改、いい仕事するな」

「だとしても、普通は伸びる槍を躱せないよ」

 僕も精進しよう。したとしてもどうにもならないかもしれないけど。

「しかし、あいつら、どんどん進化してないか?」

 確かに、戦法もそうだし、攻撃方法もそうだ。指が伸びるなんて考えもしなかった。

「……もしかしたら僕たちのやりとりを学習して、伝播しているのかもしれない」

「なんだって?」

「最初は伸びるヒドロ虫だった。次は装甲など防御力に特化した影兵士だった。次はさらに手を変えてくるかもしれない」

 僕らはしばし考えこんだ。

 

「そういえば、巨大蟹の時の犠牲者の数は何人だっけ?」

「九十三人だ」

「ということは、影兵士が全て犠牲者を元にして作られているとしたら、残りは二十一人だね。内訳はどんな感じ?」

「俺の幼なじみの調査隊が二人、続いて第一次討伐隊が十人。そして、第二次討伐隊八十人。最後に元兵士長――つまり、叔父貴、国王だ」

「――スキュアルドは、その九十三人と別にいたんだよね?」

「そうだ。俺は、叔父貴の副官――といっても、補佐だった。速さを活かして、伝令を受け取れるようにな。だから、五人ごとの小隊とも別だった」

「今のところ、全員知った顔?」

「ああ」

「犠牲になった順番も、この遺跡に出てきた順番と一致する?」

「そうだな」

「ということは、影兵士の最後の一人は――」

「――叔父貴の可能性が高いということか」

 

 ――ぐあっ……頭が痛い。何だ? この槍は伸びるのか? 鎧が必要なのか? 鎧とは何だ? 何だ、お前たち、見覚えがあるぞ。共に戦ってくれるのか? 敵が来る? 殲滅しろ? 敵の名前は……「スキュアルド」――

 

「フッフッフ、ハッハッハ! 面白い! どんな敵が来ようと、この精鋭部隊と共に蹴散らしてくれようぞ。この『国王ソルレオン』の名にかけて!」

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