ルナティック=リバース 第三十七話 〜海底の暗殺者〜
今度もまた、円形の広めの部屋に出た。しかし、影兵士の数が増えている。三十体はいる。
「城の兵士は五人一組の体制なんだ。つまり、ここには六小隊いる計算になる。……まあ、生きていた時の話だけどな」
スキュアルドが苦々しく説明する。すると影兵士たちが、いっせいにその名を呼び出した。
「スキュアルド……スキュアルド……スキュアルド……」
僕もさすがに頭にきた。
「うるさい、黙れ! 『アロー』!!」
ドドドドーー
また手応えがないかと思った瞬間。
ガンガンガンガン!!
「なっ! 鎧と鱗でガードされた!?」
「嘘だろ? ヒドロ虫ってやつじゃなかったのかよ!」
影兵士たちは不敵な笑みを浮かべている。そして、ジリジリと間合いを詰めてきた。
「クソっ、俺のグローブで接近戦を挑むしかねえか」
「みんな、僕が『バイト』で噛み潰す。効くかどうかは分からないけど」
僕らが作戦を練りながら敵を待ち構えていると。
ズドンズドンズドン!!
「……え?」
隊列の後方にいた影兵士が、次々と崩れ落ちていく。
「なんだ!?」
瞬く間に十体は倒された。困惑する影兵士たち。すると、床に動く「影」が見えた。
ザクザクザクッ!
影兵士はその動く影を、槍で次々に串刺しにした。そこから、どろりと血が溢れ出す。
「ん? まさか、シードがやられたのか!?」
ブレブがハッとした。シードは擬態と隠密行動の名手だ。しかし、もうやられてしまったのか――と思った瞬間。
ズドンズドンズドン!!
また五体やっつけた。すごすぎる。
「ふう、あいつ、生きていたか。良かったぜ。てっきり死んだかと思った――って、シードが俺の隣にいる!!」
真横にいたブレブが一番驚いている。あれ、でもこのシード、なんだか形が変だ。
ズドンズドンズドン!!
なんてことを思っている間に、また五体を仕留めてしまった。よく観察すると、鎧の隙間から槍を正確に差し込んでいる。
先ほどまでの影兵士と違い、装甲や鱗による防御力を獲得したせいで、流動性や柔軟性が制限されているんだ。それならば、高熱ユニットを使わずとも物理的な槍でかなりのダメージを与えられる。
ザクザクザクッ!!
影兵士が闇雲に床の「シードらしき影」を無数に突き刺す。また何箇所か、血のようなものが出ている。しかし。
ズドンズドンズドン!!
今度は敵の首のあたりに穴が開く。いつの間にか天井に移って仕留めたんだ。
さらに五体が斃れ、残りは五体。影兵士たちはもうどうしていいか分からず、円陣を組んで固まった。
僕が見惚れていると、不意に声が聞こえた。
「リベル、影兵士の顔めがけて『アロー』を撃ってくれ。くれぐれも狙うのは顔だ。あと、念のために麻痺はさせないでくれ」
僕は思わず「ビクッ」となったが、言われた通り『アロー』を連射する。影兵士たちは防戦一方になり、完全に身動きが取れなくなった。
ズドンズドンズドン!!
こうなると、もうシードの独壇場だ。結局、彼はほぼ一人で敵を殲滅してしまった。
「お前ら、強すぎないか? 俺の出番がないだろう」
ブレブが腕組みしながら苦笑する。
「たまたまだ」
姿を現したシードが喋った。僕が尋ねる。
「今度は本物?」
「そうだ。偽物に見えていたのは、ギルバートが開発した膨らむデコイだ。網と布を組み合わせ、擬態の魔術を付与してある。俺自身に比べて精度は低いが、囮としては十分だったな。ついでに血袋も仕込んでおいた。親方とも最終調整してな」
「一言言っておいてくれよ!」
ブレブが文句を垂れる。
「よく言うだろ。敵を騙すには、まず味方からってな」
「でも、『アロー』で連射した時はちょっと怖かったよ」
「……俺も怖かった」
シードが少しだけ肩をすくめた。もっと練習して精度を高めよう。
「そう言えば、さすがにもう喋らねえな、偽兵士」
「ああ、そうだな。最初はまた俺の名を呼んでいたが、もう観念したらしい。トドメを刺して、次に行こうぜ」
各々が何度もトドメを刺していく。そして、僕が最後の影兵士を確認した瞬間。そいつの口が、微かに動いた。
「スキュアルド……助けてくれ……」
僕は完膚なきまで、その敵を粉微塵にした。




