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第一章 第三十六話 〜影兵士の真相〜

 ――ここはどこだ?

 見慣れない景色が広がる。円形の部屋だ。薄暗いが、ぼんやりと光を放っている。

 そもそも私は誰だ? 何も思い出せない。手元には槍がある。特殊な形をした槍だ。槍? 槍というのか、これは。体は動かすことはできる。しかし、移動しようとしてもできない。正確に言うと、移動が制限されている。この部屋からは出られない。何もできない。

 私は……何だ――

 

「スキュアルド、今、影兵士が喋らなかった――」

「クソが!!」

 スキュアルドが槍の石突きで、物言わぬ残骸を何度も粉砕する。まさかヒドロ虫は口まで利けるのか? にしても最悪の気分だ。

「落ち着け。それ以上はバッテリーも無駄になる」

 ブレブが彼の腕を掴んで制止した。

「……だが、お前の気持ちはよくわかる。姑息な真似をしやがって。今回は人魚の国だが、これが魚人の村で同じ目に遭うなら、俺らだってはらわたが煮えくり返っているはずだ」

 四人の魚人の戦士たちも怒りをあらわにしている。どれだけ死者を冒涜すれば気が済むんだ。

「……一人残らず殲滅してやる。絶対に許さん」

 でも今度は僕が、スキュアルドの肩を叩いた。

「――テティカと結婚するんだろ?」

「……え?」

「蟹を倒したら、って言ってたけど、準備を進めてたんじゃないの? 城下町の結婚式がどんなものかは知らないけど、一番の目標はそれじゃないか? もちろん、敵を殲滅するのは重要だ。でも、スキュアルド。君の人生の目的はテティカと結婚して幸せになることだ。敵に惑わされるな」

「リベル……そうだな。ごもっともだ。結婚式の方が重要だ」

「でしょ? そのためにはチャチャっと遺跡を片付けて、城下町に帰らないと」

「そうだぜスキュアルド。魚人の村ではあまり結婚式とかはねえが、兵士長様と第二王女様は特別だ。盛大に祝おうぜ!」

 ブレブがベシベシと彼の肩を叩いた。

「そうだよな、よし! とっととここを終わらせて、結婚式を挙げよう! 子供もできたしな」

 

「「……はああ!!?」」

 僕とブレブ、さらに三人衆までもが口をあんぐり開けている。

「お、お、お前! そういうことは先に言え!」「そうだよ! 女王には知らせるべきでしょ!」

「あ、言ってあるぜ。『私もおばあちゃんになるのね! ラティナ、テティカに続いて三人目の娘も産まれるし、いいこと尽くめだわ!』って喜んでいたぞ」

「む、娘!? 性別も決まっていたの?」

「ああ、女王の三人目の子は、この前、魔術で検査したら女の子だって言っていたぞ。テティカにまた妹ができるってわけだ」

 

ゴンゴン!

 

 僕とブレブはスキュアルドの頭を殴った。

「痛ってえな! 何すんだよ!」

「「早く言え!!」」

 

「――まあ、気持ちの区切りが一旦ついたところで、リベル、なんで影兵士がお前の名前を呼んだんだ? あいつら人魚じゃないんだろ?」

「俺の気持ちの区切りはついてないんだが」

 スキュアルドが不満げにぼやくのを無視して、僕は向き直った。

「真面目な話をしよう――スキュアルドにはとてもつらい話になるけどいい?」

「な、なんだよ、改まって」

「影兵士……ヒドロ虫は死体の脳を食ったんだ。そしてその構造を模倣した」

「……ああ!?」

「だから幼なじみの二人も、元仲間の兵士たちも、犠牲者と同じ顔をしていたんだ。ただ、色は変えられなかったから、黒いまま。しかも喋るだけじゃなく、趣味の悪いことにスキュアルドの名前を発した」

「……ふざけんなよ」

 スキュアルドの槍が折れそうなほど震えている。正直、僕自身も話していて猛烈な吐き気を催していた。

「おい、スキュアルド。とっとと先へ進むぞ。俺らも大暴れしたいところだが、バッテリーは節約しなきゃならないからな。死んでいった仲間のためにも、テティカとの結婚式のためにもな」

 

 僕らは拳を握りしめ、決意を胸に奥へと進んだ。

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