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第一章 第三十一話 〜出陣の前夜祭〜

「これで戦闘の準備は万全でしょうか?」

「まあ、巨大蟹の時に比べれば、格段に装備は充実したな」

「では明日、蟹の巣穴の遺跡に向かってください。スキュアルドが言ったように、くれぐれも無理はしないで。それと、皆さんには晩餐を用意しております。会場へお越しください」

 

 会場に着くと、色とりどりの食事が用意されていた。もちろん、テティカのクローシュに入って。

 ラティナが一同に向かって音頭を取った。

「皆さん、今日はシェフたちが腕によりをかけて作った料理を用意しました。どうぞ心ゆくまでお楽しみください。遺跡での戦闘の勝利と、皆さんの無事を願います」


「ブレブ、この漬け魚はどう?」

「いや、これも美味いんだが……食堂のおばちゃんのやつが一番だな。微妙に味つけが違うんだ」

 僕とブレブは、懐かしい村の食堂を思い出す。

 

「美味っ! これ、何だ?」

 スキュアルドが声を上げた。

「薄い箱の内側を二枚の熱い板で挟んで、魚やエビを串刺しにして中央の位置を保持し、蒸し焼きにした料理。魔力レンジがお蔵入りになったから、私と親方で専用の器具を作った」

「……すげえな。にしても美味えな」

「喜んでもらえて良かった」


 スキュアルドとテティカの話を盗み聞きした僕とブレブは、急いでその料理を口に運んだ。

「「美味っ!!」」

 工房チームは二人とも凄すぎる。電子レンジが海底だと塩素が発生するからダメと見るやいなや、ライデンフロスト効果を使いつつ、串で具材がこびりつくのを防いで蒸し焼きにするなんて、普通は考えもしない。料理クルーもさぞかし狂喜乱舞したことだろう。

 

「フィンリーの武器はこう、シードの装備はこう、ギルバートの装備はこうなっとる」

 親方から三人衆は、念入りにレクチャーを受けていた。遺跡で何が起きるか分からない以上、この確認が命を分ける。

 

 女王とラティナ、側近のマリィ、エリィは、対照的に静かに食事を取っていた。

「しかし、あのラティナ嬢ちゃんがここまで変わるとはな」

「いえ、変わらせてくれたのは皆さんと……主にリベルのおかげです」

「いや、僕は何もしていないよ」

「他の連中も驚いたんじゃないか、なあ?」

 ブレブの問いに、全員が頷いた。

「ただ――嬢ちゃん、ひとつ気になったんだが」

「何でしょう?」

「そろそろ疲れたんじゃねえか?」

「……」

「この場はヒレを伸ばしてもいいんじゃねえか。せっかくの食事の場なんだしよ」

「……ぷはあ。一旦、そうさせてもらうわね」

 さすがブレブだ。次期村長は、人の機微によく気づくらしい。

「たぶん、無理とまではいかないが、まだ慣れてないんだろ? 仕方ねえぜ」

「……私、上手くやれてたと思ったのに」

「違うぞ。上手くはやれていたし、堂に入っていた。ただ、急に変わったとなると、本人は良くても身内は内心オロオロするもんさ。心配だったんだろうな」

 身内の方々が、温かい笑顔で頷いた。

「……そっか」

「まあ、それが嬢ちゃんの選んだ道なら、時間をかけていけばきっといい女王になるさ」

「いや、私はまだそんな……体だって小さいし」

「そうかあ? 体の大きさじゃない、器の大きさだろ。もう片鱗は見えてるんじゃないか?」

 ブレブはチラリと女王を見ると、深く頷いた。

「……!」

「ほら、みんな分かってるもんだぜ」

 ラティナは両手で顔を覆い、肩を震わせた。

「そのためには、まず目の前の問題を片付けなきゃならないな。なあに、俺たちに任せておけ。こっちには『小さき勇者』、リベルがいるんだしな。頼りにしてるぜ!」

 

 僕は、デザートのウニを盛大に吹き出した。

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