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第一章 第二十九話 〜深淵の共生〜

 次の日、親方も加えて作戦会議を開いた。

「敵はどれくらいのものだと思う?」

「それは数?」

「とりあえず数だ。仲間の顔に見えたのならば、死者の数くらいはいるはずだ。もっとも、それ以上にいるかもしれないが」

 兵士長スキュアルドと僕が言葉を交わす。

「そもそも、遺跡というものも眉唾ものでしょう。そんなものが今まであったと思いますか?」

「いや、思わない。あまりに不自然だ。遺跡の(たぐい)は別の場所で以前から点在している。いきなり現れるなんておかしい」

 お次は第一王女と兵士長だ。

「親方、俺の武器はどうなってる?」

「お前さんの槍は改造したぞ。三叉槍が二叉槍になり、中央に超高熱ユニットを柄の延長として取り付けられるようにした。つまり前のものよりも少し長くなった。しかも今回はそれを三つ作った。要は三回分ということじゃ」

「そいつはすごいな。……欲を言えばもう少し欲しかったが」

「気持ちは分かるが、かさばる上に充填にえらい時間がかかるんじゃ。そっちの方が問題じゃ。ただ使い捨てを前提にした分、出力が跳ね上がっとる」

「そうか、そりゃあいい。推進器の方は?」

「使える。バッテリーの持ちも良くなった」

「それは頼もしいな」

 兵士長、親方、第二王女が確認した。

 

「ただ……これだけで足りると思うか?」

「槍が三回分として、単純計算で蟹が三匹分。合計で十匹出てきたらひとたまりもないよ」

「最悪のケースを考えるとそうでしょうけど、おそらく蟹はもういないと考えています。もしいたのならば、とっくに襲撃してきているはずです」

 ラティナの言う通りだ。僕らが戦った巨大蟹は一匹だけだった。仮に二匹いたとしたら、もっと大惨事になっていたはずだ。

「しかし、現実はそうならなかった。遺跡が罠だとしても、向こうから仕掛けてくるわけではない、ということになります」

「つまり、どういうことだ?」

「食糧が足りていたか、あるいはーー準備期間だったか。……はたまた、その両方か」

「……」

 ラティナの分析力は相当なものになっていた。僕としては代わりに話を回してくれる存在ができて非常に助かる。名司会者は、名支配者なのだ。

 

「ここでいう『食糧』とは?」

 僕はあえて、嫌な役を買って出た。

「……仲間の犠牲者たちのことでしょうね」

 皆、分かっていたことだが苦虫を噛み潰したような顔をした。しかし、僕も単に嫌な気分にさせるために言ったわけではない。

 ふと、ラティナがこちらを見た。

「もしかすると、蟹も囮だったということですか?」

 僕は続ける。

「囮というと少し違うかな。おそらく、蟹は陽動であり、殲滅担当であり、そして『食糧』を供給していた。即ち、何かと『共生』していたんじゃないかな」

 共生には三つの形がある。互いに利益がある『相利共生』。片方だけが利益を得る『片利共生』。そして、一方が害を被る『寄生』だ。

「現時点で共生だとして、それがどのような形をとっていたかは分からない。けれど、蟹ではなく、何か『他のモノ』が利益を得ていたのだとしたら?」

 あの仇敵ですら前座だとしたら? 一同に緊張が走る。

「前までは蟹がいたからマシだった、って言うのか?」

「僕もそう思いたくはないけど、ある意味ではそうかもしれない。そして、どうも匂うんだ。『黒っぽい兵士』っていうのが」

「どういうことだ?」

「以前、魚人の村でブレブたちと一緒に、敵の魚人たちと戦闘になったんだ。そいつらは目がおかしくて、死んだ後に黒いモヤになって消えた。だから何か関連がある気がして」

「ああ、そういえば言ってたな」

「あれは二年前のことだけど、実はその頃から『敵』がいて、手ぐすねを引いていたとしたら? もしそうであれば、人魚の国や魚人の村などを全て巻き込んだ、とてつもなく大掛かりな計画となる」

 玉座の間がしんと静まり返る。

「ただ、少なくとも回りくどいやり方をしているのは間違いない。さっきの説が全て繋がっていたとして、敵の魚人、二年の月日を経て巨大蟹、そして今度は遺跡と黒い兵士、と。でも、敵が満を持して攻めて来るのであれば、今ある戦力だけでは足りないかもしれない」

 

「ーー話は聞かせてもらったぜ」

 聞き覚えのある声が響いた。

「俺らも暴れさせてもらうぜ」

 そこには、かつて魚人の村で共に死線をくぐり抜けた四人の戦士がそこにいた。

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