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第一章 第二十八話 〜王女の覚醒〜

「なんだって!?」

 辺りは騒然とした。あの死闘を繰り広げた場所に、そんなものが眠っていたとは。

「直ちに招集します。玉座の間へ」

 いつの間にか、ちょうどいい場所に女王がいた。

 未遂に終わった僕へのハグの慣性を利用して。

 

 城にいた僕やスキュアルド、テティカ、ラティナ、そして巣穴を調査していた兵士たちが招集された。

「あんなところに、そんなもんがあったのか?」

「スキュアルドが知らないんなら、誰も知らないはず」

「そりゃそうだ」

 スキュアルドが放ったフラグをテティカが素早く回収した。

「蟹が隠していたということでしょうか?」

「どうかな……遺跡だとしても、普通は気づくはず。突然現れるなんてこともないと思うけど」

 女王と僕が思案を巡らせる。

「遺跡の中には入ったのか?」

「いえ、蟹の巣穴で仲間の遺留物などを確認しようと思っていたら、何やら地下遺跡のようなものが見えまして。スキュアルド兵士長から『調査は慎重に行え、危ないと思ったらすぐに帰還せよ』と言われていたので……」

「それは英断だ。よく知らせてくれた。情報があるのとないのとでは、雲泥の差が出る」

 スキュアルドはいつの間にか「兵士長」というポジションに収まったらしい。その響きは実に頼もしいものだった。

「ただ、不可解なことがありまして」

「なんだ?」

「気のせいだと思いたいんですが、帰り際に振り返ると、仲間がいたように見えたんです」

「何!? 本当か!?」

「いえ、蟹の惨状は聞き及んでいます。生存者がいたとは思えません。ですが、我々のような鎧を着た黒っぽい兵士が数人、そこに立っていたように見えたんです」

「黒っぽい兵士?」

「しかもそれが……かつて苦楽を共にした、仲間の顔に見えたんです」

「何だと?」

「罠かもね」

 ラティナが静かに口を開いた。

「だってさっき彼が言った通り、生存者がいたとは思えないんでしょ? スキュアルド、あなたならわかるわよね?」

 スキュアルドは一瞬、ラティナの気迫に面食らったが、すぐに真剣な顔に戻った。

「ああ。あの状況で生きているはずがない」

「だとしたら、罠よ。誰かが私たちの仲間のフリをしている。言い換えれば……死者を冒涜している」

皆、辺りの水温が上がるのを感じた。もしそれが事実ならば、決して許されることではない。

「もちろん、あくまで仮説よ。確証はどこにもない。けれど、用心するに越したことはないと思うの」

 彼女はもはや、別人のようだった。おそらく自分の中で『覚悟』が決まったのだろう。

「仮に罠だとして、仲間のフリをした兵士が相手なら、当然戦闘も予想されるわ」

 本当に昨日までの第一王女だろうか? すでに女王の風格すら漂わせている。

 当の女王にふと目をやると、彼女はラティナをじっと見つめながら、両手で口元を隠し、小刻みに震えていた。

「準備に取りかかりましょう。リベル、今回もお願いできますか?」

僕は無言で頷いた。

 ふと見れば、マリィやエリィ、他の兵士たちまでもが、女王と同じように口元を押さえて震えている。ラティナがこんなふうに振る舞うことは、誰も想像できなかったのだろう。

「スキュアルド、テティカ。親方の元へ向かって詳細を伝えて。どんな敵が出るかは分からないけれど、確かな武器が必要よ。明日また、この場所で集合しましょう」

 

 第一王女が、真に覚醒した瞬間だった。

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