第一章 第二十七話 〜変化の兆し〜
私は変わった。まだ変わってないけど、心持ちは変わったように思える。
リベルが教えてくれたことはまだあった。
「絵を描くことが下手な人は、描くことが下手ではない。ちゃんと対象を見ていないだけ」って。
例えば自分の手を描きたいとするならば、自分の手をしっかり見たことがないだけ。左手をピンと開いて指を全部くっつけた時に、人さし指と中指のどちらが長いかは仮に分かったとしても、その付け根の位置がどこにあるかは分かってない人が多い。小指は手前側にあるんだな、とか。興味ってプラスを増やすのも興味だけど、今まで足りていなかった、見落としてたことをマイナスとするならば、どこがマイナスなのかを発見することも興味なんじゃないかって。
リベルが言ったことわざで「目から鱗が落ちる」っていうものがあるらしい。私たちにとって鱗はあたり前だから気にしないけど、それも『興味』がなかったということか。仮に「目からまつ毛が取れる」と言い換えれば、あたり前だとしてもことわざとして分からなくもない。でも、あたり前のこともあたり前と気づけないから『興味』なんて絶対に湧くこともない。自分の鼻は自分で絶対に見えているはずなのに、無意識で気にしていないから気にすることはない。しょっちゅう見えていたらうっとうしいから見えないのが正解だけど、たまに考えてみるのはいいかも、と。
さらにこんなことも言っていた。「一番目、二番目、三番目の話をしたよね。もちろん、一番稼げるのは一番目、なんだけど、そうとは限らないこともある。一番目、二番目、三番目と、他の分野での一番目、二番目、三番目。その人達のお手伝いをできたらどうなる? それぞれのサポートに一割ずつ収入が入ってきて、各分野が五つとかになったら。それぞれの一番目よりも結果として、自分が一番稼げることにならない? スキュアルドやマリィ、エリィ、親方、テティカ……要はより多く『繋ぐ人』が一番稼げる、と。お金もそうかもしれないけど、信頼も稼げると思うんだ」
リベルとの会話はあまりにも衝撃が強すぎて、尾ビレで頭を殴られたようだった。しかも往復ビンタ。おそらく、考えが馴染むまで数日かかるだろう。
さて、じゃあどうしようか。ヒントはたくさんもらった。私は一番じゃなくていい。体も弱い。才能もない。でも、幸いなことに私は第一王女だ。生まれ持った立場があった。少しずつ、色んな人と話してみよう。私は『繋ぐ人』になろう。そして、この国をより一層、住みやすくするんだ!
ふいに、私は壁の方に向かってつぶやいた。
「お前もそう思う?」
彼はコクンと頷いた。それぞれの部屋には擬態をしている忍者タコがいるので、たまに話し相手になってもらう。因みに当番制だ。こういうのも気づいてない人は気づいてない場合があるということか。「彼」というのは、「彼女」だと産卵の関係で城には適さないので彼なのだ。私はおやつのカニをあげた。
ラティナと『スープ』した次の日、彼女は城の色んな人に話しかけていたらしい。みんな口を揃えて言っていた、「大丈夫?」と。その次のセリフも一緒だった、「何があったの?」
僕は答えた、「さあ?」と。
そして女王がすごいスピードで「リベルちゃん、ありがとうーー!!」とハグしてきたので、一目散に逃げた。
そのまま城の扉から出ようとしたら、二人の兵士が慌てた様子で飛んできた。門番が尋ねた。
「どうした? 何かあったか?」
槍を杖代わりにした兵士が答えた。
「蟹の巣穴に地下遺跡が発見されました!」




