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第三章 第百二十話 〜大迷宮の諸事情〜

「そういえば、ロビニア。君に最初に言っておきたいことがある」

「え? 何……?」

 神妙な面持ちで話す語り出す僕に対して、彼も真顔になった――

 

「本格的に探索する前に……トイレ大丈夫?」

 ロビニアは顔を赤くした。

「と、とっぱじめから何言うのさ!」

「いや、重要だよ。もし何か走ったり跳んだりしなきゃならない時に、おしっこがパンパンだったらどうする? ウンチが漏れそうだったらどうなる? 大変なことになるでしょ」

「う……確かにそれはそう」

「だから、最初に確認しておこうと思って。どう?」

「実は……ちょっとおしっこしたい……さっきめちゃくちゃ怖い目に遭ったし」

「……ゴメン。じゃあ、まず光の縄――『グラスプ』って名前だけど、ロビニアの胴体に巻きつけておくね」

「え!? なんで!?」

「僕はちょっと離れたところに後ろを向いて立っているから、何かあったらすぐに呼んで。その瞬間、急いで引っ張るから」

「え……ただ単に後ろを向いて離れていたらダメなの?」

「ダメでしょ。いきなり敵が襲ってきたり、何か降ってきたり、床が抜けたり、転移させられたりしたらどうするの?」

「う……確かに……だったらさ、こういうのはどう……?」

「え……?」

 

 

「ロビニア、これでいい?」

「大丈夫だよ。今しゃがむから――」

 

 僕は床などを確認したのち、彼の胴体を『グラスプ』で巻いて、また片マントで頭をグルグル巻きにした。僕は立っていて、彼は屈んでいる。周囲や上は見えるが、足元は見えない。確かに賢いやり方だ――たぶん。

 

シャアアア――

 

 音が聞こえてくる。おそらく、攫われてから長い間、用も足せなかっただろう。可哀想に。

 

「終わったよ。リベルは?」

「ああ……自分のことを考えてなかった。そんなにしたくもないけど、一応しておこうか。ロビニア、僕の背中におんぶしてね――」

「え……うわあ!」


ガシッ!

 

 彼は僕の背中の左側にくっついた。普段はカバンも斜めがけにしているが、今回は右肩だけにかけている。

 彼の胴体は光の縄で巻かれたままだ。そしてさらに僕の左肩の片マントで彼の左臀部、股間から右腹部、また自分の左肩の留め具と固定した。

 

「どう? キツくない?」

「大丈夫……しかも思ったよりラクだ。リベルは大変じゃないの?」

「いや全く。体鍛えているから。それより見ないでね、見てもいいけど――」

「うわっ……!」

 

 僕は立ちながら用を足す。おそらく彼は左に顔を背けているのだろう。僕は気にならないが、互いの用を足す様子を見るのを好ましく思わない人だっているだろうし。

 

「よし。終わったよ。僕も綺麗にしなきゃ。『コンフォート』!」

「え? なにそれ? うわわ!」

「……え?」

 僕はいつも通り全身を衣服矢装備ごとキレイにしたつもりだった。ところが――

「なんか、ボクもちょっとだけ体とかが爽やかになった気がするんだけど……」

「……へ!? ウソ!? そんなことある!? ちょっともっかいやるよ、『コンフォート』!」

 僕は一度やったから何も変わらない。けど彼は――

「……またちょっとだけ爽やかになった気がする……なんか、ベタベタしていた肌が、少しサラサラしたような……」

「……」

 もしや『グラスプ』と片マントでがんじがらめにしたことによってロビニアも僕の一部と見なされたのか!? しかし、それは限定的で、ちょっとずつしかキレイにならない――けれども、何度も『スキル』をかけることで徐々に清潔になっていくのか……!?

 

 その後、僕は『コンフォート』を何度もかけた。すると、大体十回ほど行うと、水浴びをしてちゃんと乾かしたぐらいにキレイになるということか分かった。地味だがすごいことだぞ、これ。

 そしてすっかり自分の体も服も清潔になって、ロビニアはご機嫌だ。

 

「キミ、すごいんだね……」

 僕自身も『コンフォート』がまさかここまでだとは思っていなかった――

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