第二章 第百六話 〜僕のこれから〜
「なんだか疲れた……でもみんなすごいな」
領主城を出て、カーブのある坂を下っている。
僕は成長というより、様々なひどい目に遭っているだけな気がするから、あまり実感がないんだよな……
できることは増えたけど、経験が足りないようなもどかしい感じ。
いや、経験していないことはないんだよな。何なら経験しすぎなくらいで。刺激も浴びるだけ浴びた――ということは、その『種類』なのか。
僕は中央広場に戻ってきた。すると、教会の前に四人が祈りを捧げていた。
四人が目を閉じ、お互いに大きめの輪になるように、中央に向かって右手をかざして祈っている。
しかし、教会の中じゃなくて、ここでやる意味は何だろう? と考えていたら、四人が同時に目を開き、一斉に唱えた。
「「「「『結界法術・盾』!」」」」
ヴン――!!!!
それぞれの目の前に光の盾が出現した。
(うそ……)
あまりの衝撃に膝から崩れ落ちそうになるのを必死に堪えた。さらに――
「『結界法術・三重盾』!」
ヴン――!!
セイクルはなんと光の盾を三枚同時に出した。
僕が寝て起きる間に、四人はとてつもない成長を遂げていた。
「すごい――」
僕が思わず声に出すと、四人はこちらに気づいた。
「あ! リベル! 帰ってきたんだ!」
「リベル! セイクルすごいんだよ! 結界法術を三枚同時に出せるようになったの」
「でも、僕らも全く出せなかったのに、できるようになったね」
「これで寝てても安心――」
「いや、どうだろうね……それより、四人ともすごいね」
「いや、一番すごいのはリベルでしょ」
「え……?」
「当たり前でしょ。私たちはリベルに少しでも追いつきたくて頑張っていたんだから」
「そうだよ。さらに私はセイクルが結界法術を使えるようになって、イメージが湧きやすくなったからできたのよ」
「僕もそう」
「ネネも――」
「そう……なんだ」
「チロもこの歳で使えるようになるのはすごいことなのに、それと同時にネネも使えるようになったから、一瞬で最年少記録を抜かれるという――」
「まあ僕は気にしないけどね」
「えっへん――」
「……」
そうか。僕はみんなに置いてかれたような気がしていたのか? しかも『スキル』なんて、どうも『魔法』に比べると不確定だと感じてしまっていたからか。
逆に確定しているものなんてない。砂上の楼閣や崩れ落ちる階段だとしても、先に進むしかない。トンネルの奥が行き止まりだったなら、引き返して別の道を探すんだ――
「そういえば、リベルは今何ができるの?」
チロに訊かれて、ふと我に返った。
「あ、ああ。一部だけ見せるね。危ないから、離れていて」
僕はそう言って広場の中央に立つ。他のみんなは教会の扉の前に並んだ。
「行くよ。『グラスプ』!」
ビュッ――!
僕は教会のマークへ光の縄を絡みつけ、巻き戻してみんなの眼前へと差し迫った。
「危ない――」
しかしさらに巻き戻すスピードを上げたので衝突はせず、ベクトルは空へと向かった。その一瞬、四人とも片目を開けていたので、僕も真似して片目を軽く閉じてみたけど、みんなは気づいたのかな?
そのままの勢いでマークに向かって垂直に駆け上がると、僕の体は空に浮かんだ。
この前は朝焼けだったけど、今回は夕焼けだ。海と反対側、山の方には鉱山や墓地が見える。そして、まだ行ったことのない陸地の向こう側も見えた。
〈僕は地上も含めて世界を体感したい〉
そうだ。僕にはまだ見てない景色がたくさんある。
そんなふうに中央広場を飛び回りながら感じたんだ。
(因みにこのあと『他の子どもが真似したらどうすんだ!』って市場の大人たちに怒られたけどね)




