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第二章 第百一話 〜港町のその後〜

 あれから私たちは大変だった。

 

 リベルを抱えたまま連れて行こうにも、重くて大変で運べない。そこにフィオ、チロ、ネネも駆けつけて、教会の私たちの部屋に運ぶことができた。

 そのあと、三人は「リベルを見張っていて。門のところまで誰かを呼びに行くから」と言い、慌てて走って行った。

 

 リベルは深い眠りに就いたまま全く起きない。頭をなでても、ほっぺをぷにぷにしても、鼻をつまんでも起きない……

 私は彼の寝顔をまじまじと見つめる。つい頭をなでたくなる。ダメよ! セイクル。さっきも咄嗟にしちゃったでしょ――

 

チュッ――

 

 また唇にキスしてしまった……いや! キスしてしまったじゃないでしょ! みんな大変な時に、こんなことしている場合じゃないのよ!

 

チュッ――

 

 今度は左のほっぺにキスしてしまった……ああもう、ダメなのは分かっているのに……

 

チュッ――

 

 いや、右のほっぺ……いや、何事もバランスが重要だからね。仕方ない。

 

チュッ――

 

 左右の次は、上にもしなきゃダメでしょ。ということでおでこ……じゃない! 何してんのよ私は! もう終わりにしなきゃ……

 

チュウウウウウウ――

 

 最後はやっぱり唇じゃなきゃね――

 

 

 

(三人で一緒に門のところに行って、事態を説明してきたからもう大丈夫。リベルとセイクルの待つ、教会に戻らなきゃ……)

 

ダダダダダ――

 

「セイクル! リベルの調子はどう? 大人たち呼んできたよ――って、二人とも寝てるね……」

 布団の上に寝るリベル。さらにその上に覆いかぶさるように、セイクルも寝ていた。

「僕たちもさすがに寝ようか……」

「ネネ、寝ないで頑張った――」

 チロとネネがあくびをする。

「そうだね。明日のことは、また明日考えよう。みんな、布団敷いて……」

 

 彼女はすうすうと幸せそうににやけながら寝ている。一方で彼の寝顔を見たが、なんでおでこのところが赤くなっているんだろう? まるで誰かに吸われたような……?

「むにゃむにゃ……もうお腹いっぱい……」

「一体何の夢をみているんだか……」

 それから私たちはセイクルをリベルから引っ剥がすと、みんなでいつものように布団を敷いて寝た――

 

 

 

――今朝リベルは深い眠りに就いたまま、全く起きなかった。

 あとから神父様から聞いた話だと、門壁の向こうの戦いでも、相当無茶をしたらしい。

『蟲』との戦いも加味すると、もし彼がいなかったのなら、町民は一人残らず皆殺しにされていたはずだ、って。だからそっとしておいてあげてください、と神父様は言っていた。

 

 復興の準備は神父様とギルド長、さらに学長を中心に、急ピッチで進められた。

 領主城の大広間にいた避難民は私たちと一部の人が生き残って、他の方々は死んでしまった。兵士たちと領主様も亡くなった。

 それ以外の場所に避難していた人たちは無事だったけど、哀しみと心のショックは計り知れないものだった。

 息子さんが現領主と同時に商業ギルドも背負うことになった。今回の災害は世代交代を考えていた矢先の出来事だったらしい。

 

 大量のモンスターが押し寄せたことで、木々が雪崩のようになぎ倒された。魔術でそこの一部を取り除いて、町は犠牲者のためのお墓と公園を作った。

『ベルグハーフェンスタンピード公園墓地』と名付けられたその場所には、前領主様だけでなく被害に遭った町民と坑夫たちが祀られた。この場所を忘れないために。

 

 私たちもお墓の儀式に参列した。指揮は神父様が執り行った。死者に対して祈る場合は右手のひらを左胸にそっと添える。延べ三百十五人の尊い犠牲がこの世を去った。

 一人、一人と踵を返す中、最後まで残ったのは銀髪の魔女の学長先生だった。彼女は聞こえてしまうくらいの大声で泣き出した。

 

「なんでバル坊が先に死ななきゃならないんだよ……!」

 

 降ってきた雨も彼女の声をかき消してくれはしなかった――

 

 

 期せずしてできてしまった領主城へと続くトンネルは、陥没しても困るので、補強工事と結界法術が施されることになった。もうないとは思いたいけど、いざという時に使えるように、とのことらしい。

 

 山のモンスターたちは全くいなくなった。ただ、ここは幸いなことに港町だ。山の幸は激減したが、海の幸がある。協力してなんでも乗り越えて行くしかない。町のみんなはそう思って毎日を生活しだした。

 

 そんな中、リベルが目を覚ましたのは眠ってから八日後のことだった。

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