表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/30

記録05 ゆるキャラ殺人事件②



「……つまり、犯人は——ゆるサン、お前や」




指差して、そう言うた。




部屋は静かやった。

全員の視線が、あいつに集まっとった。




ゆるサンは、少しだけ肩を落として、




「……そうだよ」




と言うた。




それから、ぽつぽつ喋り出す。




「ぼくは、あの子が好きだったんだ」


「でも、あの子は——」




内容は単純。




誰が誰を傷つけて、

それがどうして殺意になったか。




いつものや。




動機として成立しとる。

トリックも破綻してへん。




勝ちや。




スコアが出る。




視界いっぱいに、数字。




トリック解明率。

動機回収率。

生存者数。

経過時間。




その中に、勝敗も出とる。




500勝。500敗。




……ちょうど五分や。




「次のシナリオに進みますか?」




選択肢が出る。




YES / NO




ここまでは、いつも通りや。





——やのに。





スコアの向こうで、動くもんがあった。





ゆるサンや。





さっきまでうな垂れとったはずの身体が、





ゆっくり、起き上がる。





表示の裏で、こっちを見る。





笑っとる。





そのまま、口が動く。





「できれば、勝ち越したかったなあ」





聞こえる。





はっきり。





「……次で、決めようか?」





——は?





今の、なんや?





選択肢は、まだ出とる。





操作はしてない。





でも、





画面が、暗くなる。





勝手に。





ロードが始まる。





「ちょ、待て——」





入力、通らん。





そのまま、





切り替わる。






——1001。


バカでかテロップ。






目を開ける。





空気が違う。





風の音。





雨。





窓から見えるのは、海。





孤島。





ホテル。





最悪のステージや。





ここ、あいつの勝率が一番高い。





「……クソが」





周りを見る。





人がいる。





同じ顔ぶれ。





でも、関係が違う。





役割も違う。





リセットされとる。





いつも通りや。





ゆるサンを見る。





そこにおる。





今回の役を演じとる。





普通の登場人物として、振る舞っとる。





……話しかける。





「おい」





反応は、ない。





というか、





キャラのまま返してくる。





ランダム生成された、

シナリオに沿った受け答え。





メタな話、通らん。





弾かれる。






やのに。






視線を感じる。








見る。








目が合う。








にこにこしとる。








……でも、








……ちゃう。








笑い方が、違う。








——ええわ。




切り替える。




やることは同じや。




これまで通り、




最適行動を取る。




NPCの動き。


会話。


移動。


イベントの傾向。




全部、把握しとる。






進める。






順当に。






第1犠牲者が出る。






背後からの刺殺。






想定内。普通や。






NPCは無視。






オレは動く。






現場。






痕跡。






……ない。






おかしい。






この状況、何かは残るはずや。






……いや。






パターンとしてはある。






第2の殺人以降で出るやつや。






なら、まだええ。






切り替える。






ゆるサンを見る。






監視する。






同時に調査。






違和感はある。






でも、






証拠にはならん。






そのまま進む。






——悲鳴。






第2。






早い。






調べる。






……出えへん。






何も、全く。






……変やな。






こんなこと、ない。






無理やり、理由つける。






「外調べたい、手ぇ貸し」






ゆるサンを連れて調査する。






2人になる。






他に手がない。






まだ、大丈夫。






その時。






また悲鳴。






第3。






タイミングが、狂っとる。








……あかん。








こっからは、ルールが変わる。






3人出たら、






プレイヤーもターゲットになる。






狙われる側や。






「解散や」






即座に離れる。






これ以上一緒におるんは、リスクが高い。










現場。






第3の死体。






……酷い。






損傷が、異常や。






NPCがざわつく。






ゆるサンも、震えとる。






怯えた顔。






完全に、被害者側の演技。






……やのに。






見続ける。










ふと、






目が合う。










……なんやねん、その目。










笑っとるように見えた。













……なんか、スッカスカやな。

こんなんで何か分かるんか?




  確かに、うまく拾えてないね。

  ここがゲームの中だからかも。

  でも問題はないよ。




ほんまに??

これで分かるんか?


不安やねんけど。

説明しよか、ちゃんと?



というか、説明するわ。

解説パートや。



今回の参加人数はオレ含めて9人。

3人ヤられて、オレとゆるサンを除けば、残りは4人。

つまり、オレがヤられるか、他4人ヤられたら確定負け——そういう状況や。


シナリオ次第では全員狙われるわけやないんやけど……今回は違う。

ペースが異常や。

全員、る気やと仮定して動いた。


舞台は断崖絶壁の孤島に建つ、古い洋館ホテル。

部屋も階層も無駄に多くて、死角だらけや。

しかも、窓から屋根に出られる構造のせいで、仕掛け(トリック)がアホほど複雑になりよる。


その上、この暴風雨や。引きが悪い、終わっとる。

こういう時、屋根で証拠探したりするんにNPCのサポートが必須やねん。

このゲーム、滑って落ちて事故死とか普通にあるからな。


で、あいつや。

見た目は着ぐるみやけど、中身の運動神経は「クマ」そのもの。

パワーも、モコモコの手に隠したえっぐい爪も、全部クマ基準や。

雨の屋根も余裕やし、吹き抜け飛び降りて階層スキップとかもしよる。


もちろん、毎回パワーでゴリ押すわけやない。

初期の頃は「人間にこれは無理や」っていう消去法が、ゆるサンの犯行を裏付ける決め手になっとった。


けど、100ゲーム超えたあたりから、あいつは「仕掛け(アリバイ)」を使い始めた。

「自分は人間や」ってキャラ設定を徹底して、身体能力を封印しよるんや。


で、忘れた頃にこれや。

パワーを混ぜてきよる。


仕掛けでやったことを、あえてパワーに見せるような「こっすいハメ技」まで使いおる。

推理パートで読み違えたら、即詰みや。


……今回は、多分「クマ」の回や。

事件の頻度が、明らかに理屈を超えとる。


もちろん、全部仕掛け(ロジック)でやってる可能性もゼロやない。


どれもあり得る。決め手がない。


3人目の犠牲者が出た時点で、オレはまだ何一つ掴めてへん。

それだけは、嫌というほど分かっとった。




  じゃあ、続きいく?

  もう少し話す?




……あんた、ちゃんと考えながら聞いてる?


期待してるんやで?


頼むで?


な?



……まぁ、ほんでな。


探偵役のNPCがおんねん。


プレイヤーの同級生で、探偵の家系とかっていう設定の。

彼女役のNPCを連れてきたり、連れてこんかったり。


こいつは毎回、固定で参加する。

放っとくと、勝手に捜査や推理を進める。


オレが動かん場合、こいつが中間報告的な推理パートを開く。

ほぼ外れる、状況を悪くする。迷探偵さんや。


こいつに下手なこと言わさんように誘導すんのも、攻略に必要になる。

なんで、初期以降はただのお邪魔キャラでしかないんやけど、今回はやらせてみることにした。

(わら)にもすがるアレやな。



まぁ、そんくらい、行き詰まっとった。






  メモ。

  ログ欠損の原因は未確定。


  仮説:

  1. 対象世界が記録可能状態へ移行中。

  2. 対象本人の終端が、停止状態に固定されている。


  両要因の重複も考えられる。

  以降の取得精度をもって検証。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ