記録05 ゆるキャラ殺人事件①
——『ゆるキャラ殺人事件』
アホみたいなタイトルやけど、「イマーシブな本格ミステリ」を売りにした、対NPC型のオフラインVRゲームや。
だーれもやっとらん。
レビューもほぼゼロ。話題にもなってへん。
もろ大爆死。
多分やけど、オレが一番やりこんどる。
……でな。
今そのゲームの中で、一時ポーズかけとる。
視界は真っ暗。体も動かへん。
ただ、思考は回っとる。だから説明できる。
ここで負ける。そう判断したから止めた。
ここまで1000ゲーム。勝ったり負けたりで、ちょうど勝率半々。
で、今が1001ゲーム目。
……今回は、なんか違う……あきらか異常。
ゴーグルが取れん、中断できん、ゲームが終わらん……抜けられん。
プレイするしかない。
負けるんは……絶対あかん。
確信が、ある。
……だから一回、全部出す。
あんたに共有する。
このゲーム、全部説明する。
そこから何か見えるかもしれん。
頼む。聞いてくれ。
そんで、助かる方法、一緒に考えてくれ!
まず舞台。閉鎖環境や。
孤島とか、キャンプ場とか、ホテルとか。
なんやかんやで外には出られん。
通信なんかも基本切られとる。
登場人物、NPCやねんけど、全部で12人。
ただ、役割と関係性が毎ゲーム変わる。
いわゆる「スター・システム」やな。
見た目はみんな、リアルな普通の人間や。
参加人数はシナリオによって多少減ることがある。
今回はオレも入れて9人や。
で、毎回そこで殺人が起きる。
オレはプレイヤーとして、その中に紛れ込む。
探偵役の助手やったり、ただのモブやったり、立ち回りミスったら被害者ポジに回される。
ここまでは普通や。
問題は犯人。
毎回、固定やねん。
クマのゆるキャラ。
名前は、ゆるサン。
見た目は完全に着ぐるみマスコット。
でっかい。丸い。にこにこしとる。
こいつが毎回、人を殺す。
着ぐるみマスコットの分際で、えっぐい殺し方しよんねん。
仕掛けは毎回変わる。
物理も使うし、心理も使うし、状況もいじる。
しかも回を重ねるごとに、明らかに精度が上がっとる。
理由は簡単。
こいつだけ、記憶を引き継いどる。
ゲームは毎回リセットされる。
人間関係も、証拠も、舞台も、全部リセットされる。
でもな、ゆるサンだけは、全部覚えとる。
学習すんねん、成功からも、失敗からも。
強くてニューゲームや。
で、オレも、もちろん覚えとる。
だから成立しとる。
犯人役は分かってるわけやからな。
分かった上で、どう証明するかが、このゲームの肝。
試して、失敗して、覚えて、また試す。
その繰り返しで、勝ったり、負けたり。
1000ゲームやって、なんとか五分まで持ってきた。
1000ゲーム目……その終わり際が、おかしかった。
あいつ、オレに言ったんよ。
『次で決めようね』って。
そういうメタな発言は、できひん仕様になっとる。
プレイヤーがするんもダメや。システムに弾かれる。無かったことになる。
仕様にないことが、起きた。
で、今回。
1001ゲーム目。
パターンが崩れとる。
最適行動しても、微妙にズレる。
こっちの選択に対して、あいつが先に対応してくる。
思考を読まれとるみたいな挙動が続く。
で、ゲームの流れに関係なく、あいつと目が合う。
視線を、感じる。
で、この状況や。
確定負けの一歩手前。
だから止めた。一時ポーズ。
もう何も見えん。
それ自体は仕様やから、どうしようもない。
時間止めて観察できたらプレイヤーが有利すぎるからな。
ただ、こうしてても、何も策が浮かばん。
もうどれくらい、こうしてるんかも分からん。
……なぁ頼む。
このゲーム、どうやったら勝てる?
もう少し、情報がほしいね。
記憶の時間を前に戻せば、映像も戻るはず。
それを見ながら、一緒に整理しよう。
何が起きて、どこで破綻して、
どう終わったか。
おおお終わってないで!?
勝手に終わらせんといて!?
頼むで?
逆転する方法、
生きのびる方法、
ここから出る方法、
死なずに終われる方法、
なんでもいいから、考えてな?
……な?




