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『カオスノイズ:東京拠点化計画~拠点を東京に移し、自分を殺せる勇者の育成に励むことにしました~』  作者: 猫寿司
第八章 ダイアモンドはただの石

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第九話:狂乱の聖域と、呪いの正体

ユウサクが手渡された器を飲み干したのを確認すると、マカロニ自身も水筒からその液体を一気に煽った。


マカロニ「……ぷはぁっ! これです、これこそが一族の魂の味……!」


 マカロニによれば、これは里の習慣であり、幼少期から摂取し続けている「栄養剤」のようなものだという。だが、その直後から二人の様子は明らかに常軌を逸し始めた。


 ユウサクとマカロニ。二人の瞳はギラギラとした「ランラン」とした輝きを放ち、口角は不気味につり上がり、意味不明なうすら笑いを浮かべている。


ユウサク「……ひ、ひひ。なんだか……負ける気がしないぞぉ……」

マカロニ「いきますよぉ……ユウサクさん。うふ、うふふふふ!!」


 刹那、二人は重力を無視したような爆発的な勢いで、神社の奥へと続く長い石段を駆け上がり始めた。その速度はもはや忍者の域を超え、四足歩行に近い野性的な動きで、残像を残しながら頂上を目指していく。


龍の出現と、デスボイスの祝詞


 石段を登り切った先、社の奥から巨大な霊気が噴き出した。

 霧を切り裂いて姿を現したのは、蛇のように長い胴体を持つ、荘厳な東洋の『龍』であった。その鱗は翡翠ひすいのように輝き、神々しい威厳を放っている。


龍「何奴だ……不遜にも聖域を汚す不法侵入者……」


 龍が威厳をもって言葉を紡ごうとした瞬間、巫女姿のマカロニが、喉が潰れるような『デスボイス』で祝詞をあげ始めた。それはもはや神聖な祈りではなく、怨念と興奮が入り混じった絶叫であった。


マカロニ「――オオォォォォ!! けがれし血をき! うつろなるそららえぇぇ!! 顕現せよ深淵ッ!! み殺せ、龍をッ!! 絶っ、絶ぉぉぉぉぉ対に、呪いを解けぇぇぇぇッ!!」


 その絶叫を合図に、ユウサクが咆哮を上げながら龍へと飛びかかった。


狂乱の乱闘


ユウサク「ああああああああッ!! 呪い! 呪いを解けぇぇぇ!!」


 ユウサクは龍の長い首にしがみつくと、あろうことかその硬い頭を「ガリッ」と力任せにかじりついた。


龍「な、何をするんだ貴様、いきなり!? 痛い! 離せ、この無礼者が!!」


 神聖な龍が困惑と怒りで身を捩るが、ユウサクは止まらない。彼はマカロニから預かっていた『爆発札』を束の間の隙に龍の体へ貼り付け、絶叫と共に指を鳴らした。


ユウサク「くらえ! 爆発札ぅぅぅ!!」


 ――ドォォォォン!!


 至近距離で爆発が起きる。当然、貼り付けたユウサク自身も爆風に巻き込まれ、真っ黒になりながら地面をごろごろと転がった。


龍「だから何用じゃと言っておる!! 話を聞けぇッ!!」


 激怒する龍。しかし、ユウサクはすぐさま跳ね起きると、今度は龍の尻尾の方へ走り寄り、再びその身を噛みついた。さらに、マカロニまでもが四足歩行で龍の頭上へ飛び乗り、その喉元に全力でかじりつく。


マカロニ「あぐぅぅぅ!! 呪い、返せぇぇぇ!!」


 一人は尻尾に、一人は頭に。血走った目で龍を食いちぎろうとする二人の姿は、まさに『地獄絵図』そのものであった。


終焉の眠りと、真実の瓶


 少し離れた場所で、ネネとヴァレリアは、このあまりにも知性を欠いた凄惨な光景を、あぜんとして眺めていた。


ヴァレリア「……あれ、本当にユウサクか? 龍を噛んでいるぞ……」

ネネ「……もう見てられないわ。マカロニもマカロニよ。何なのよ、あの異様なテンションは」


 血だらけになりながら、ランランとした目でマカロニから「追い飲み物」を受け取ろうとするユウサクを見て、ネネは限界を感じた。彼女は静かに杖を掲げ、強力な睡眠魔法の詠唱を開始する。


ネネ「……五感を閉ざし、狂乱を眠りに沈めよ。『安息の深淵アビス・スリープ』」


 一瞬にして、ユウサクとマカロニは白目を剥いてその場に沈没した。

 ようやく解放された龍は、噛み傷だらけのボロボロな姿で、ネネに向かって感謝の言葉を述べた。


龍「助かった……恩に着る。一体なんだ、あの野蛮な者たちは……」


ネネ「ごめんなさいね。……それで、ここの一族にかけられた『短命の呪い』についてなんだけど。あんたがやってるの?」


 龍は信じられないものを見るような目でネネを見返した。


龍「短命の呪い? そんなもの、我は知らぬし、興味もない。そもそも我にはそんな呪術を行使する権能はないぞ」


ネネ「……え?」


 首を傾げるネネたちに、龍は呆れ果てたように、マカロニが落とした小さな空き瓶を長い尻尾の先で指し示した。


龍「……それだ。原因は、その小瓶の中身だ」


ネネ「……この『秘薬』が?」


龍「それは強力すぎる強壮剤……いや、神経を焼き切る毒に近いものだ。子供の頃からあんなものを常用していれば、二十五歳まで生きるのが関の山だろう。……自業自得の、自家中毒よ」


 一族を救うための儀式も、神への供物も。すべては「秘薬」という名の、悲劇的な勘違いだった。

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