第六話:機神の咆哮と、陶酔する勇者
アナトリア軍の先陣をきって、死の臭いを撒き散らす「死せる軍勢」の骸骨たちが道を切り開いた。
生者の理を無視して突き進む白骨の波が、魔王軍の第一陣へと激突する。
それを合図に、戦場は凄絶な乱戦へと突入した。
「ガハハハ! 虫ケラどもが、まとめて潰してやるわ!」
トロール族の戦士たちは、死を恐れぬ覚悟で戦場を蹂躙していた。
岩石を砕くような怪力任せの攻撃が魔王軍を次々と薙ぎ倒していくが、敵の軍勢は驚異的な生命力を見せていた。
頭を潰され、胴が千切れかけてもなお、昆虫のように蠢きながら反撃を繰り出してくる。
自分の犠牲を厭わず、一歩でも前へ、一刺しでも深く。
最適化された魔王軍の合理的かつ自虐的な攻撃に、屈強なトロール兵たちも次第に押し込まれ始めた。
「……第十二から第十五小隊、即座に投入! 前線を維持せよ!」
指揮官の号令と共に、アナトリアが誇るアンドロイド兵の軍団が戦線に投入された。
感情を排した機械の正確な射撃と防衛線が、崩れかけた前線を辛うじて持ちこたえさせていた。
陶酔の果て、戦場を駆ける
ユウサクとヴァレリアは、骸骨たちが切り開いた死の道を、四天王レアが待ち構える陣地めがけてひた走っていた。
周囲で肉が弾け、火花が散る地獄絵図の中、ヴァレリアはどこか恍惚とした表情を浮かべていた。
彼女は今、自分の中に作り上げた「美少女戦士にして覇者」という英雄像に、完全に陶酔し始めていたのだ。
ヴァレリア「ユウサク、離れずに付いてきなさい。……だが、覚悟はいいか? 私の背中を追うということは、死を隣り合わせに歩むということよ」
ユウサク「(いや、さっきからずっと隣を走ってるんだけど……)」
ヴァレリアは戦火に照らされながら、力強く剣を振るい、芝居がかった仕草で言葉を続けた。
ヴァレリア「いいか、死の覚悟を持った者だけが、真の勇者となれる。お前のような凡夫には、この輝きは眩しすぎるかもしれないがな……ふふっ、死なせてはあげないわよ、私のアシスタント!」
ユウサク「……あ、はい。頑張りますね」
自らの妄走と理想に酔いしれ、別次元の正義を振りかざし始めたヴァレリアに、かける言葉などユウサクには一つも見つからなかった。
別の戦場、羞恥の神雷
戦場を駆けるなか、おかしな現象が起きた。
ヴァレリアが走る道だけ、まるでモーゼの十戒のように敵が左右に避けていくのだ。
ユウサクは不思議な気持ちでヴァレリアの後を追い、ついに二人は四天王レアと対峙した。
ヴァレリア「力を貸してくれ……師匠!」
ヴァレリアは腰の聖剣に話しかける。
だが、剣――デュランダルはどこか気まずそうに「ああ……」とだけ返事をした。
レア「おまえ ゆうしゃか?」
レアは感情の読めない瞳でヴァレリアを見つめ、カタコトで問いかける。
レア「おとうさまの あいじんか? コウビは したのか?」
ヴァレリア「……な、なんのことだ!」
困惑しながらも、ヴァレリアは真っ向から聖剣を振り下ろす。
だが、レアはその剣筋を無造作に突き出した二の腕だけで受け止めた。
レア「ちょっと イジメル」
レアがそう呟いた瞬間、反対の手による手刀が空を裂いた。
その一閃はヴァレリアの鎧だけを精密に両断し、彼女の裸体を白日の下にさらけ出した。
後ろからその様子をまじまじと見ていたユウサクは、鼻の下がのびきっていた。
ヴァレリアは羞恥に震えながらも「構うものか!」と剣を繰り出す。
二撃目、三撃目。しかし、レアはそのすべてを腕だけで軽々と受け流していく。
次の瞬間、レアは背後の四枚羽を羽ばたかせ、ヴァレリアの背後を取った。
そして、ユウサクに見せつけるように、ヴァレリアの体を後ろから「もみもみ」とし始めたのだ。
ヴァレリア「や、やめろ……っ!」
ヴァレリアが叫ぶ。だが、レアの手は容赦なく彼女の「裂け目」へと伸びる。
ヴァレリア「あっ……あ、ぁ……っ!」
ヴァレリアの口から、抗いようのない熱い吐息が漏れ始める。
その無防備な姿を、ユウサクは凝視するしかなかった。
レアの細く冷たい指がヴァレリアの口内へ強引にねじ込まれる。
唾液を垂れ流しながら必死に抗うが、四天王の圧倒的な力の前に、口腔内はなすすべなく蹂躙されていく。
さらにレアの手は、ヴァレリアの胸の突起を無慈悲に弾きながら、下方の「裂け目」へと滑り落ちた。
「ああ……っ、あ……!」
もはや隠しきれない喘ぎが漏れ出す。
ヴァレリアは涙を流しながら「見るな」と拒絶の視線を送るが、ユウサクは釘付けだ。
本能的に生唾を飲み込む音が、戦場の喧騒を遠くに置き去りにする。
レアの指は容赦なく、粘り気のある音を立てて秘部の奥深くへと侵入していく。
ぴちゃ、ぴちゃという淫らな音が、ヴァレリアの勇者としての矜持を粉々に砕いていった。
「いっそ、殺せ……っ」
お決まりのセリフさえも震える喘ぎにかき消され、ヴァレリアの涙は止まらない。
おろおろし、ただ見つめることしかできないユウサク。
羞恥と絶望が臨界点を超えた、その時――『神雷』が、最悪の形で牙を剥いた。
ヴァレリア「はああああああああかっ!!!」
極限の羞恥の中で、奥の手『神雷』が発動する。
一瞬にしてヴァレリアの肉体は変質し、巨大なドラゴンへと姿を変えた。
理性を失ったドラゴンは、咆哮と共に大地を蹂躙し始める。
その様子を、いつの間にか上空へと退避していたレアが観察していた。
レア「あー おもしろかったのに」
レアはつまらなそうに呟くと、そのまま四枚羽を羽ばたかせ、戦場を去っていった。
後に残されたのは、暴走するドラゴンから必死に逃げ惑うユウサクだけだった。
ドラゴンと化したヴァレリアの暴れっぷりは凄まじく、アナトリアの誇る城や城壁を粉々に粉砕しながら、三日三晩、その破壊の嵐は止むことがなかった。




